渋谷文化プロジェクト

渋谷をもっと楽しく!働く人、学ぶ人、遊ぶ人のための情報サイト

渋谷のストリートに突如出現した家具!?
Street Furniture@渋谷音楽祭2016
〜「シブヤのまちづくり」を自分事として楽しむ方法

『ドラえもん』の単行本5巻に、「こうつうきせいタイマー(交通規制タイマー)」なるものが登場するのをご存知だろうか?

「路上でローラースケートをしたい」のび太に対して、ドラえもんが出したのが「道に車が入らないようにしてくれる道具」だ。その道具で車の流れを止め、ジャイアンは路上に絵を描き、スネ夫はラジコンカーを走らせ、しずかちゃんは椅子を出し「一度道の真ん中でひなたぼっこしながら、本を読んでみたかったの」と読書にいそしむ、というお話。

そんなことできたらいいな、と考えたことがある人もいるのではないだろうか。
そんなシーンが10月23日(日)に、渋谷で実現されていた。

「渋谷音楽祭」のプログラムの一つ「Street Furniture(ストリートファニチャー)@渋谷音楽祭2016」。「渋谷の道玄坂で音楽を楽しむための家具」というテーマのもと、建築家やデザイナーさんたちがイメージして作品を製作するという企画だ。
ジャズが流れる道玄坂。そこにユニークな椅子に座り音楽を楽しんだり、寛いだりする子供や大人たちの姿が…。 こういったものについては直感的に「面白い!」とは思うのですが、もともとアートに疎い私。どう解釈したらいいのか、どうやって楽しめばいいものなのか、実際に作った人たちに聞いてみた。

■ストリートファニチャー01「空が覗けるベンチ」設営準備をしている間も子どもが興味津々。

まずは幅広の縁側に人工芝の座面があり、中心にミラーを貼ってあるこの作品。まるで緑の公園の真ん中に湖があり人々がその周りで寛いでいるような家具だ。中を覗きこむと合わせ鏡になっていて、ずーっと地球の反対側のリオデジャネイロまで続いていきそうに見えるのが楽しい。

クリエーターの製作意図としては「家具はふつう家の中にあるもの。でも今回は外だからこそと考えて、変わりゆく空模様が楽しめる家具にした」とのこと。そういえば私自身、渋谷では人波に流されて歩くことが多いが、ゆっくり渋谷の空を見ることはあまりないなぁと気づかされた。

■ストリートファニチャー02「カラーコーンのテーブル」 さらにその横にあったのは、カラーコーンに段ボールをちょこっと折ったものを乗っけた簡易テーブル!! そのダンボールにご飯が印刷されているので、コーンの先っぽが出ると「日の丸弁当」のようだ。他にもいろいろなバージョンがあって、普段は邪魔者扱いされがちなカラーコーンが素敵な存在感を出していた。

■ストリートファニチャー03「座れる地図模型」
こちらは渋谷の地形を切り取って表現したオブジェ。それぞれSHIBUYA109などの「渋谷をつくっている印象を持っている建物」の場所に植物が置かれ、これから開発されるところは人工芝が敷かれている。クリエーターいわく、人工芝の部分に今後どのように渋谷が変わりえるのかというメッセージを込めているそうだ。この椅子は見るからにオブジェなので、眺めていたら「座っていい」と。なんと椅子だそう。
展示物だと思っていたものに座る、しかも街に、という二重の背徳感が感じられる椅子だった。(手前右側にある高い建物が渋谷ヒカリエ)

■ストリートファニチャー04「“椅子性”を見出す家具」いろんな家具があるなーと思いながら見ていると、ふと目についたのが漫画やキャスター付きの荷台など、普段路上でよく見かけるもの。「え、これも作品?!」と戸惑う私に、クリエーターは「人はどこから座る場所として認識するのかという実験」とのこと。確かに道に直接座るのは抵抗があるが、雑誌をお尻の下に敷くとなんだか平気だったりする。私の感覚としては、地面は普段足で踏まれていてなんだか汚そうだけど、普段踏まれていないものがあれば良いということかなぁと。
観察していると、子どもたちに人気なのは「台車」、大人たちには「ビールケース」だった。(子どもは何もなくても平気で座りこみそうだけど)。通常は「○○しないでください」と書かれる注意書きであるが、「ご自由にお座りください」と逆にポジティブなメッセージが書かれていたのが印象的だった。

誰が仕掛けているのか?

こういうのって誰がどういう目的でやっているのか気になってくる。
取り組んでいるのは「市民から始まる、渋谷らしい新しいまちづくりプログラム」を推進する、任意団体「Shibuya Hack Project(渋谷ハックプロジェクト)」。「渋谷の街全体を盛り上げる」プラットフォームの構築を目指す同団体は、渋谷を拠点にする企業や行政、NPO,商店街とともに、渋谷が持っているモノ・空間・エリアを活用しながら、クリエイティブなパイロットプロジェクトを継続的に仕掛けているのだそうだ。今回のStreet Furnitureもその活動の1つなのだとか。

「まちづくり」というと行政や大企業がやる取り組みで、自分とは遠い距離のある言葉に感じる人も多いもの。でもまちづくりに対して、個人の思いがうまく反映されると、もっと個人が住みよい街、暮らしやすい街、居心地のいい街になっていくのだろうなと感じた。もともと渋谷には、渋谷に関わりたいという意思を持つ人や、専門性の高い人、クリエイティブな個人がたくさん集まっている。そして渋谷はこれだけ多様性のある街であることからも分かるように、新しい取り組みを許容する寛容性を持っている街。意欲的なクリエーター達の活動が、渋谷という場所で、「まちづくり」とうまく連動し始める実例を見た気がして、これからの渋谷が楽しみになった。

sachi

アラフォー。渋谷区内に勤務の2児の母。 趣味は写真を観たり、撮ったりすること。

オススメ記事