人工知能で「昔の渋谷」がカラー写真で再現!
今春、早稲田大学理工学術院の石川博教授、飯塚里志研究院助教、シモセラ・エドガー研究院助教らの研究グループは、AI(人工知能)技術を応用し、「白黒写真を自動で色づけする手法」を確立したと発表。ウェブニュースなどでは画期的な技術として大きな話題を集めた。
大量の白黒・カラー画像の組から、色付けの手掛かりとなる特徴を「ディープラーニング」と呼ばれる人工知能の学習機能を利用して、白黒画像をカラー画像に変換するという技術。屋外か野外か、昼か夜かなど大域特徴から、砂か葉か水かなど局所特徴までどう色づけするのが適当かをAIが推測し、その状況に合った自然な色づけを自動で行うそうだ。
専門的な説明は、下記を御確認ください。
〇早稲田大学ニュース記事:こちら
〇詳しい研究結果:こちら
※また同研究によるカラー変換のソースコードは、GitHubで一般公開されている。
ソースコード: https://github.com/satoshiiizuka/siggraph2016_colorization
一般公開されているソースコードを利用すれば、誰でも白黒写真をカラー写真に変換できるのは、とても素晴らしい。とはいえ、プログラミングの知識がなくてはどうにもならない。そこでウェブ検索で、どこぞの誰かがこのソースコードを活用したジェネレーターを作ってくれてはいないかと調べてみたところ、@mecabさんがウェブサイト上で一般公開しているのを発見。操作は実に簡単で、変換したい白黒写真をブラウザ上にアップロードすると、一旦グレースケールに変換後にカラー画像が表示。サイズが大きくなければ、瞬時にカラー化してくれるという簡易サービスとなっている。面白いように彩色加工できるので、ぜひ試してみてほしい。
公開ソースコードを活用したウェブサービス(@mecab)
http://colorize.dev.kaisou.misosi.ru/
そもそも写真は1827年、フランス人発明家ジョゼフ・ニセフォール・ニエプス氏により発明。当時は日中の日光のもと、約8時間もの露出が必要とされたというから、写真撮影は大仕事だった。その後、1935年に米コダック社が映画用にカラーフィルムを発表。さらに日本の一般家庭にカラー写真が普及したのは、大阪万博後の1970年ごろ。各家庭に残るアルバムを見れば、おそらく昭和40年代前半ごろまで、白黒写真が大部分を占めていることに気付くだろう。こうした過去の白黒写真を、最新技術により簡単に色づけ(カラー)変換できたとしたら、一体どうであろう。特に若い人たちにとって、セピア色に染まった白黒写真は、まるで映画や物語の世界と同じ。きっと歴史的な瞬間やよく知る街の風景であっても、身に迫るリアリティーが感じられないというのが正直なところだろう。もし最新技術により、色づけ(カラー化)されたのならば、100年前、半世紀前の風景や出来事であっても、もっと身近に実感することが出来るのではないだろうか。
そこで、渋谷文化プロジェクトの姉妹サイトである「渋谷フォトミュージアム」の写真データベースの中から、昔の古い渋谷の写真をいくつかピックアップし、同ウェブサービスを使って彩色加工を試みてみたいと思う。
■カラー写真 → グレースケール変換
まずはカラー変換のクオリティを確認するために、カラー写真で撮影した「ハチ公像」を一度グレースケールにして、その再現性を確かめてみよう。
■グレースケ−ル → カラー変換
台座やハチ公の胴体部分がやや緑がかっているものの、非常に高いカラー再現性を持っていることがよく分かる。
■昔の渋谷の写真をカラーに再現してみよう!
改良工事が進む東横線渋谷駅のホームの風景(1961年8月)元画像:白黒写真
変換後:白黒を自動で色づけした写真
渋谷東映竣工(1953年11月28日)元画像:白黒写真
カラー変換画像
開業当時の東横百貨店と東横線渋谷駅(1934年11月)元画像:白黒写真
カラー変換画像
玉電 渋谷駅ホーム(1965年)元画像:白黒写真
カラー変換画像
ラッシュアワーの渋谷駅ホーム(昭和40年代)元画像:白黒写真
カラー変換写真
昔の写真の再現は「ハチ公像」のカラー写真と比べると、やや見劣りがする。白黒写真の解像度やグレースケールの濃淡度などによっても、おそらく再現性に大きく影響を与えるのだろう。「色鮮やかなカラー写真に生まれ変わる」とまでは言い切れないが、フラットな印象の白黒写真に立体感が加わり、より像が浮かび上がってくるように感じるのは確か。当時の街並みや、人びとの生活感がより身近に感じられるから不思議だ。ぜひ家の中で眠っている昔の白黒写真を探して、カラー写真に変換してみてはいかがだろう。
編集部・フジイタカシ
渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。