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江戸っ子たちが夢見た世界〜幕末の天才絵師、国芳と国貞の浮世絵350枚が一堂に〜

左)歌川国貞「大当狂言ノ内 八百屋お七」五代目岩井半四郎 文化11,12 (1814,15)年
William Sturgis Bigelow Collection, 11.15096 Photograph © 2015 Museum of Fine Arts, Boston
右)歌川国芳「国芳もやう正札附現金男 野晒悟助」弘化 2(1845)年頃
William Sturgis Bigelow Collection, 11.28900 Photograph © 2015 Museum of Fine Arts, Boston

江戸っ子たちが夢見た浮世絵の世界を、対照的な作風で人気を博した2人の天才絵師・国芳と国貞の作品を通して伝える企画展「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞」が3月19日より、Bunkamuraザ・ミュージアムでスタートした。 国芳と国貞は、ともに歌川派・初代歌川豊国に師事した兄弟弟子にあたる。兄弟子・国貞は、1786年に材木屋の息子として誕生。15、16歳の頃に豊国と門下となり、豊国が得意とした役者似顔の手法を受け継いで、早くから役者絵において才能を開花させた。また、町人文化を反映した身近で人間的な感情にあふれた美人画も多く残し、1844年には豊国を襲名。師の名声と技術を受け継いで、幕末の浮世絵界を牽引した。

一方の国芳は1797年に染物屋の息子として生まれ15歳で豊国の門下へ。国貞とは対照的に豊国との関係は思わしくなかったといい、貧窮の時代を経て30歳を過ぎたころに転機が訪れた。中国の豪傑たちの物語「水滸伝」より、大胆な構図と精緻かつ力強い描写で登場人物たちを描き上げたシリーズ「通俗水滸伝豪傑百八人之一個」(1827年)が大流行したのをきっかけに、「武者絵の国芳」と賞賛された。以降は任侠の衣装にネコの寄せ絵で描いたドクロをあしらったり、錦絵の定型である大判用紙を連ねて一つの大きな画面としたり、落書きの筆致を模して役者の特徴をデフォルメした似絵を描いたり、ユーモアと着想の豊かさ、デザイン力で浮世絵の枠に留まらない魅力的な作品を多数発表した。

14,000枚を超えるボストン美術館の国芳、国貞の浮世絵コレクションの中から、名作を厳選して紹介する同展。これらは明治初期に来日したアメリカ人、ウィリアム・ビゲローらによって収集された作品群で、その膨大な点数ゆえに近年までほとんど一般公開されてこなかったという。そのため保存状態がよく、まるで摺りたてのような鮮やかさが特徴。会場では170件(約350枚)の国芳国貞作品を紹介。ボストン美術館から両作者のこれだけの作品数を出展するのは、1876年の開館以来初めてとなる。
歌川国貞「踊形容楽屋之図 踊形容新開入之図」安政 3(1856)年 William Sturgis Bigelow Collection, 11.28578-80 & 11.28581-3 Photograph © 2015 Museum of Fine Arts, Boston

展示するのは、寄せ絵で描いたドクロが見どころの「国芳もやう正札附現金男 野晒悟助」(国芳)、歌舞伎役者たちを描く大首絵シリーズより、背景の雲母摺なども当時のままに保存された「大当狂言ノ内 八百屋お七」(国貞)、役者たちの姿や特徴を落書き風にギリギリまで崩して描き、今日では日本の漫画の原点とも評される「荷宝蔵壁のむだ書」(国芳)、楽屋に集う役者たちの舞台裏を概観できる「踊形容楽屋図 踊形容新開入之図」(国貞)など。
歌川国芳「荷宝蔵壁のむだ書」(黄腰壁) 弘化 5(1848)年頃 William Sturgis Bigelow Collection, 11.27004 Photograph © 2015 Museum of Fine Arts, Boston

テレビやグラビア雑誌がない江戸時代、浮世絵は歌舞伎スターのプロマイドであり最新のエンターテイメントやファッションを伝える重要なメディアだったという。国芳が描く物語のヒーローに憧れ、国貞が描いた歌舞伎役者に思いを寄せた江戸の人々たち。コンサートでお気に入りのアイドルに熱狂するように、最新の流行に身を包む雑誌のモデルに憧れるように、江戸のポップカルチャー・浮世絵の世界を追体験してみたい。

「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞」
 〇開催:
 2016年3月19日(土)〜6月5日(日)
 ※会期中無休
 〇開館:
 10:00〜19:00(入館は18:30まで)
 金・土曜は21時まで(入館は20:30まで)
 〇会場:
 Bunkamuraザ・ミュージアム
 渋谷区道玄坂2-24-1
 〇料金:
 一般1500円 他
 〇公式:
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/16_kuniyoshi/

編集部・横田

1980年生まれ、神奈川県在住。大学進学を期に上京して以来渋谷はカルチャーの聖地です。現在は渋谷文化プロジェクト編集部に所属しながら、介護士として働くニ足のわらじ生活です。

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