初心者でも楽しめる「渋谷らくご」って何?
東京の寄席と言えば、新宿末広亭、浅草演芸ホール、池袋演芸場、上野鈴本演芸場がメジャーですが、なんと、渋谷にも寄席があるってご存知ですか?昨年11月にオープンしたユーロライブで、毎月第二金曜日から5日間、本格的な落語を堪能することができるのです。その名も「渋谷らくご」、略して「シブラク」。
シブラクとは、サンキュータツオさんキュレーターのもと、才気あふれる二つ目と若手真打が、持ち時間ひとり30分で芸を披露する場です。どうやら噂によると、落語初心者も気軽に楽しめるらしい。今日は、ほぼ落語初心者の筆者(30代女)が、その6月公演をちょっと覗いてきたので、その様子をお伝えしましょう。
お邪魔したのは、6月13日(土)17:00〜19:00の回。「創作らくごネタおろし会 しゃべっちゃいなよ」と題されたその回は、林家木久扇師匠の弟子であり、笑点Jr.メンバーでもある真打、林家彦いち(はやしやひこいち)さんプレゼンツの完全ネタおろし会。ネタおろしというのは、古典落語ではなく、すべてが創作でかつ完全なる新作。それゆえに、演じる側もドキドキで、見る側はハラハラ…。独特な雰囲気が会場を包みます。普通、ネタおろしというのはこじんまりと行われるものであり、ユーロライブのように178席もあるような中規模会場で行われることはほとんどないそうです。そういった意味でも、シブラクの目玉の一つと言えるでしょう。
この日は5人の噺家さんが完成したばかりの新作を披露しました。トップバッターは、笑福亭羽光(しょうふくていうこう)「前座卒業式」。落語家は前座→二つ目→真打と昇進するのですが、その一番下っ端である前座に、もし、卒業式というのがあったとしたら…というお話。次は、鈴々舎馬るこ(れいれいしゃまるこ)「博士の異常な執着」。博士がタイムマシーンを開発したのですが、どうやらこの博士、ちょっと変態だった!? 3番手は古今亭志ん八(ここんていしんぱち)「寄席避難訓練」。寄席の間にある一人のお客が暴走し、なんと噺家を人質に取ってしまう…。4番手は立川志ら乃(たてかわしらの)「そばーん」。そば芸(?)が上手な男が現れて江戸でその芸が大ブームに。そして、そばとうどんの一騎打ちが始まる…!? トリを務めるのは回のプレゼンターでもある林家彦いち師匠。もし、日本が鎖国したまま2015年になったら、電脳世界はどうなってるの…? タイトルは「未来世紀江戸」。
ヒリヒリした緊張感の中、演じる側も見る側も、ドーパミンでまくりの2時間。全くのネタおろし、かつ筆者自身も落語初心者で正直楽しめるのか不安でしたが、思い切り笑わせてもらいました。どの演目もそれぞれ素晴らしく甲乙つけがたいのですが、立川志ら乃師匠は、師匠の小さんや談志が憑依したような動きで、これが芸というものか、としみじみと感じました。
シブラクに行って驚いたのは、その客層。一般的に寄席と言えば年配の方、そして男性が多いのに比べて、シブラクの客層は、全体的に若く、女性率が高い。ユーロライブさんによると、20代から30代の若者が多く、平日は特に仕事帰りの会社員や女子大生、OLさんがいらっしゃるそうです。渋谷ならではと言えるのかもしれませんね。
次回、7月のシブラクは7月10日(金)から14日(火)に開催されるそうです。ここに出演する落語家は30名。たとえば、こんな魅力的な落語家さんが出演されます。
左)立川志ら乃(たてかわしらの)/立川志らく師匠の弟子であり、立川談志師匠の孫弟子では初の真打となる実力派。アイドルが好きで、漫画が好き。ハロプロメンバーとともにライブイベント「女子落語」も行っている。
右)立川こしら(たてかわこしら)/弟弟子の立川志ら乃と共に真打昇進。一度として同じマクラを話したことがない。金髪、長髪、茶髪、白髪と髪型を変える異端の落語家。
左)春風亭昇々(しゅんぷうていしょうしょう)/春風亭昇太師匠の弟子であり、二つ目。身体全体で落語を演じ、そのエネルギッシュさと目力で強烈な印象を与える落語家。一度味わったらクセになるかも。
右)神田松之丞(かんだまつのじょう)/シブラク唯一の講談師。講談界でいま最も注目されているひとりで、迫力ある高座で、人をぐいぐいと引き込んでゆく。二つ目ながらにして、5月のシブラクでトリを飾った。
左)瀧川鯉八(たきがわこいはち)/瀧川鯉昇師匠の弟子であり、二つ目。ほとんどの高座で新作落語を行う。「俺ほめ」「ぷかぷか」「わきまえる男」などタイトルを聞いただけでも面白そうな独特の世界を描く。
右)立川吉笑(たてかわきっしょう)/立川談笑師匠の一番弟子であり、1年半という異例の早さで二つ目に昇進した才能あふれる30歳。ロジックで笑わせる技術に長けた、唯一無二の存在。
「林家彦いちプレゼンツ創作落語ネタおろし会 しゃべっちゃいなよ」は隔月に開催されるため、残念ながら7月はお休みですが、年内は8月、10月、12月に開催。12月には総まとめとして新作大賞の発表なども計画しているそうなのでこちらも楽しみです。
他にも、3〜4人の噺家にひとり30分たっぷりと語ってもらう「渋谷らくご」、二人の噺家が30分ずつ語る「ふたりらくご」などが毎月開催されています。なお、「渋谷らくご」のトリには、隅田川馬石(すみだがわばせき)、林家彦いち(はやしやひこいち)、桂春蝶(かつらしゅんちょう)、立川生志(たてかわしょうし)、春風亭一之輔(しゅんぷうていいちのすけ)、入船亭扇辰(いりふねていせんたつ)、橘家圓太郎(たちばなやえんたろう)等といった師匠が華を添えます。必ず、最後は師匠が回を収めてくれるなら、ハズレは無いはず!ぜひ、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
渋谷らくご
〇開催:毎月第二金曜日から5日間
〇時間:
金・月・火 18:00〜19:00, 20:00〜22:00
土・日 14:00〜16:00, 17:00〜19:00
〇会場:ユーロライブ /渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F
〇料金:大人2,500円ほか
〇公式:http://eurolive.jp/shiburaku/
○twitter:@shiburaku
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*堀越謙三さん(ユーロスペース/ユーロライブ代表)インタビュー記事(2014/12/25)
http://www.shibuyabunka.com/keyperson/?id=124
代官山ひまわり
代官山を拠点に活動するNPO法人「代官山ひまわり」。所属するママさんライターが渋谷情報をお届けします。