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オリンピックに向け、都内で広がる「シェアサイクリング」

渋谷や原宿、表参道、代官山、青山など、広域渋谷圏内で働く人びとの中には、自転車で通勤する「ツーキニスト」が結構目立つ。メッセンジャーバッグをたすき掛けにして、颯爽と街を走り抜けていく姿はとてもカッコいい。二酸化炭素を排出せず、環境負荷の低い「エコな交通手段」として注目される自転車であるが、渋谷圏内で支持される理由はもっと他にありそうだ。
その大きな理由は、アパレルや飲食店、クリエイティブ、IT系企業が集積している土地柄、服装や通勤手段に寛容な会社が多いことや、また就業時間が不規則でも終電時間、朝のラッシュを気にせずに通勤できること。さらに見逃せないのが、もう1点。全体的に家賃が高めの渋谷周辺で住居物件を探す場合、最寄駅まで徒歩20分以上かかるエリアなら、相場よりも家賃がだいぶ下がり、自転車通勤のメリットが十分に得られる点も大きい。たとえば、渋谷から3〜5キロメートル圏内にある三軒茶屋や下北沢、幡ヶ谷、祐天寺あたりなら、片道30分以内で自転車通勤ができる範囲内といえるだろう。
自転車通勤に便利な渋谷駅から半径3km以内のエリア。

渋滞緩和&エコの観点から、世界中で広がる「シェアサイクリング」
また自転車需要の高まりと共に、注目を浴びているのが「シェアサイクリング」というサービスだ。シェアサイクリングというのは、複数ある無人のサイクルポートの中の好きな場所で自転車を借り、好きな場所で乗り捨て(返却が)できる自由度の高いレンタルサイクルのこと。世界では2007年のパリでの成功を皮切りに、2012年のオリンピックでロンドンに導入、また2013年からニューヨークでも取り組みが始まり、観光主要都市の新たな交通インフラとして高い期待が寄せられている。
渋谷パルコにあるシェアサイクルポート。

では、国内ではどうか? 渋谷周辺で積極的にサービスを展開しているのが、シェアサイクリング「COGICOGI(コギコギ)」(本社:渋谷区神宮前6丁目)という会社だ。ソニー出身の経験豊富なエンジニアチームと、経営共創基盤やリクルート出身の若手メンバーで構成されるスタートアップ企業。東日本震災時に交通インフラとして「自転車」の必要性を受けて、2011年4月に設立したという。現在、渋谷圏内の11カ所のサイクルポート(下記、マップを参照)を中心に、港区、目黒区、墨田区、台東区の計30カ所でサービスを行っている。
「cogicogi(コギコギ)」は、広域渋谷圏内に11カ所、六本木、赤坂まで含めると14カ所のサイクルポートを展開する(2015年6月現在)。

利用方法は「月額会員」と「1日会員」の2通り。頻繁に使う「月額会員」の場合、月額会費は2,000円で、1回1時間以内の利用であれば何回でも利用可能。仮に長時間続けて使用する場合は、1時間毎に100円の延長料金がかかるが、サイクルポート間の移動のみに小刻みに使えば、会費以外の超過料金がかかる心配はない。たとえば、渋谷から代官山、代官山から表参道まで移動する場合、渋谷駅からほど近い「渋谷グランベルホテル」のサイクルポートからシェアサイクルを借り、「ロゴロード代官山」のポートで一旦返却。その後、所用を終えて、今度は「代官山T-SITE」でシェアサイクルに乗り、一気に表参道の「AntennaWIRED CAFE」のポートまで移動するなんてことも、会費のみで可能となる。渋谷圏内を頻繁に移動する人なら、交通費や駐輪代を気にせずに自転車を乗り回せるのは、うれしい。また、OLやサラリーマンなら、短いランチタイムを効率的に移動する手段として活用するのもいいだろう。
左)「渋谷グランベルホテル」前のポート  右)「代官山ログロード」前のポート
スマホの専用アプリ「COGICOGI SMART!」を操作すれば、その場で決済から自転車の貸出・返却ができる仕組み。 手続きが終了すると、驚くことに自動で「カシャ」とロックが開錠される。

1時間以内という制約がある「月額会員」に対して、観光やイベントでの利用に便利な「1日会員」は、1日乗り放題で1,500円で追加料金も一切発生なし。渋谷や原宿、表参道、代官山は、各駅と駅間の細い路地などにも小規模の個性派ショップが並ぶ「路面の街」。電車やバスでの移動ではどうしても見過ごしてしまうショップも、小回りのきく自転車なら、思わぬ発見のある散策が楽しめる。カップルで渋谷の街を自転車デートするのもいい。
>シェアサイクルCOGICOGI(コギコギ)

オリンピックに向け、都内でも実証実験が始まる
こうしたシェアサイクリングの動きは、渋谷だけではない。昨年秋から、江東区、千代田区、港区でも実証実験がスタート。NTTドコモの「おサイフケータイ」と連携し、自転車の操作パネルにサイフケータイ対応のケータイやスマホをかざすだけで、その場ですぐに貸出・返却ができる仕組みを導入するなど、手続きの煩わしさが一切ないのも素晴らしい。
六本木ヒルズ前のポート。座席後部にICカードやおサイフケータイをかざすパネルがある。料金は「1回会員」の場合、100円/30分間で、「月額会員」の場合、基本料金1,000円で、1回30分間以内の利用であれば何回でも利用可能(但し、30分間を超えた場合、超過料金がかかる)。
>港区自転車シェアリング

2020年の東京オリンピックでは、各会場と会場をつなぐ「交通インフラ」として自転車が担う役割は大きい。その頃には、多言語対応のナビゲーションや観光ガイド機能などを持つ、自転車とITが融合する「スマートバイク」が渋谷の街を颯爽と走り抜けているかもしれない。

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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