渋谷を舞台にした映画その1
「太陽を盗んだ男」
渋谷は映画のロケ地として、しばしば使われる場所です。私が大好きな映画「太陽を盗んだ男」も渋谷を舞台にしたカルト映画の名作の1つ。この作品は1979年の制作であるため、リアルタイムで劇場で見たわけではありませんが、どういうわけか、何の因果か分かりませんが数年前にレンタルショップでたまたま手にしたものです。
あらすじは、平々凡々の日常生活に飽き飽きしていた中学校の物理学教師(沢田研二)が東海村の原子力発電所からプルトニウムを盗み出し、自宅のアパートで原子力爆弾を手作りする(海を泳いで原発に侵入できるほど、セキュリティはそんなに甘くないと思いますが、これが映画です)。そして作った原爆の爆破予告を盾に、警察、日本政府へ脅迫行為を働きます。とはいえ、作ったまでは良いものの、一体どんなことを要求すれば良いのか中学教師は悩みます。そこでテレビで見ていたプロ野球中継の延長要求や、はたまたミック・ジャガーのドラック所持で公演が中止となっていたローリングストーンズの日本公演の実現など、やや幼稚とも思える要求を繰り返します。何をするにも無気力であった沢田研二扮する中学教師が、刑事役の菅原文太と丁々発止のやりとりを繰り広げ、また原爆づくりの過程で被爆した自覚症状との恐怖の中で、次第に自分が生きている実感を得ていく・・・という奇想天外なストーリー。
当時31歳の沢田研二さんの演技もすばらしく、現在のアイドルとは質の違いを感じます。一見、単なるテロリストやアキバ系になってしまっても仕方のない役どころを、沢田研二の好演で時に乱暴に、時に弱々しく、時にセクシーに魅力的な主人公像を作り上げています。また見逃せないのが池上季実子扮するラジオDJの不思議キャラぶり。一体この人は何を考えているのか?と見ている人の頭を混乱させるあたりが、この映画のカルト性を一層強め、ストーリー展開に厚みを持たせています。
国会議事堂での撮影、都内でのカーアクション、さらには渋谷の街を使った大規模なロケは、現在の映画では考えられないほどのスケール感。特に東急東横店に原爆を持ったまま立てこもり、屋上遊園地から5億円を渋谷にばら撒くように指示し、渋谷の街がパニックになるシーンは一体どのように撮影したのだろう・・・と驚くばかり。但し、渋谷の東急だと思っていたのが、次のシーンでは突然、日本橋の旧・東急百貨店に変わっていたり・・・、ちょっと無理がある点も否めませんが、まあー大目に見ますか。とにかく当時としてはセンセーショナルなテーマであったことはもちろん、ハリウッドにも負けないエンターテイメント性の高い、見て損のないお薦め作品です。星5つです★★★★★
編集部・フジイタカシ
渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。