イヌ展開催〜埴輪犬からハチ公まで、人とイヌの営みを概観
埴輪犬からハチ公像まで、犬をモチーフにした作品約90点を一堂に集めた「いぬ・犬・イヌ」が現在、渋谷区立松濤美術館で開催されている。
昨年実施したネコ展が好評だったことを受けて、ネコと並ぶ人気を集める愛玩動物・イヌにフォーカスした今回。日本において、ネコは平安・鎌倉時代には可愛がられていたと記録されるが、イヌの記録は更に古い。縄文時代から狩りに欠かせない猟犬として人間の営みに仲間入りしていたようで、以降、狩猟の獲物などを守る番犬として、武芸鍛錬のための犬追物の的として、室内外でのペットとして、現在までさまざまな形で人々の生活に馴染んできた。
左) 【特別出品】畠中光亨「花と犬」2015年 個人蔵
中上) 狩野芳崖「毛利鏻姫像」江戸時代 下関市立美術館蔵
中下) 波多野等有「洋犬図屏風」江戸時代 滋賀県琵琶湖文化館蔵
右上)【特別出品】中島千波「春爛漫のボンボンとアンジェロ」2015年 個人蔵
右下) 奈良県荒蒔古墳出土「犬形埴輪」古墳時代 天理市教育委員会 蔵
会場ではイヌを象った埴輪や根付、イヌが描かれた絵巻物や洋画などを並べながら、日本でのイヌのいる生活を概観。繊細な濃淡の墨色で表現した仔犬の柔らかな毛並みや、頭をうずめた眠犬のくるりと丸っこいフォルム、長い手足を揃えた洋犬の優美な座り姿など、表情や動きが伝える犬種の特徴など、イヌ好きには細部までが味わい深い作品がずらりと並ぶ。
(※美術館の許可を得て撮影をしています。)
また、渋谷名物「忠犬ハチ公」にまつわる高さ9.4センチの試作ハチ公像の姿も。これは終戦の前日に供出された安藤照作・ハチ公像の試作品で、現在駅前に設置されているハチ公は、照の子・安藤士が再建したもの。ハチ公の飼い主だった上野博士は松濤に居を構えていたため、渋谷駅前から松濤美術館までの上り坂は、ハチ公にとっての散歩コースの一つだったのではないか、と想像するのも楽しい。
庭で子どもたちと戯れ、座敷の奥で美人の膝に抱かれ、駅前で主人の帰りを待ち続け…。時代や生活環境がどんなに変わろうとも、人の営みに合わせて独自の進化を遂げてきた動物、「イヌ」。約90点のさまざまなイヌの姿から「人間の最も古くからの友」の魅力に目尻を下げつつ迫ってみては?
「いぬ・犬・イヌ」
〇開催: 2015年4月7日(火)〜5月24日(日) ※会期中一部展示入れ替えあり
〇時間:10:00〜18:00
※入館は17時30分まで。金曜は19時(入館は18時30分)まで、 月曜定休。
※5月4日は開館、5月7日(木)は休館。
〇会場:渋谷区立松濤美術館 渋谷区松濤2-14-14/TEL.03-3465-9421
〇料金:一般1,000円ほか
※愛犬の写真を持参すると、入館料が2割引になる「ポチ割」も実施。
但し、写真は館内に飾られるため返却不可。
〇公式:http://www.shoto-museum.jp/05_exhibition/index.html#A005
編集部・横田
1980年生まれ、神奈川県在住。大学進学を期に上京して以来渋谷はカルチャーの聖地です。現在は渋谷文化プロジェクト編集部に所属しながら、介護士として働くニ足のわらじ生活です。