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ヒップホップ界の伝説映画「ワイルド・スタイル」の凄さについて

ヒップホップカルチャーが世界に広まるきっかけとなった伝説的映画「ワイルド・スタイル」(1983年/監督:チャーリー・エーハン)が4月9日まで、シネマライズでリバイバル上映中だ。

舞台となったのは、現在ではヒップホップカルチャー誕生の地として人気を集めるニューヨーク、サウス・ブロンクス地区。このエリアでは1970年代頃、人種差別などを理由に白人が郊外へと脱出した歴史がある。それを受けてエリア内では大家たちが所有権を放棄した建築物が廃墟化し、政府も対策を講じなかったことで不法占拠やマフィアによる麻薬密売行為などが横行していった。


街の荒廃は、同作が生まれた1980年代初頭にも続いていた。作中にはニューヨークであることを疑うほど荒んだ街並みが続き、女性が一人で移動するシーンは危なっかしくて冷や汗が出た。廃墟、犯罪、ドラッグ…そんな殺伐と乾いた都市の風景の中で目を引いたのが、建物の壁や電車の車体を彩ったグラフィティの数々だった。加えて深夜のクラブシーン。クラブ内は若者たちの熱狂に溢れ、DJのビートに乗せてMCが早口でラップを披露。そのリズムに合わせて床ではB-BOYが激しいブレイクダンスを展開する…。それらの表現は「ケンカ」ではないが、ケンカ同様に自分の力の大きさを示すための「バトル」だった。


グラフィティ/DJプレイ/ラップ/ブレイクダンスの4大要素から成り立つ「ヒップホップカルチャー」は、貧困地区に暮らす黒人の若者たちの自己表現のスタイルとして、同時多発的に生まれ、複合的に組み合わさりながらそれぞれの進化を遂げていったとされる。同作では、それまでニューヨークの一部でしか知られていなかった各ジャンルの表現者たちが独自に進化させてきた技術を鮮烈に披露。出演するのは、グラフィティ・ライターのリー・ジョージ・キュノネス、ヒップホップ・シーンのパイオニアであるファブ・ファイブ・フレディ、DJグランドマスター・フラッシュ、ラッパー「ダブル・トラブル」、ブレイクダンスの「ロック・ステディ・クルー」などなど。



パブリック・エネミーズやビースティ・ボーイズなど、数多くのアーティストが作品に影響を受けたことを公言していおり、ヒップホップ好きには「外せない」一本だという同作。しかしスクリーンで繰り広げられる表現の数々は、ヒップホップを知らない者にもビシビシと伝わる魅力が満載。イギリスで1970年代後半に勃興したパンクムーブメント「ニューウェーブ」、フランスで1950年代に生まれた映画運動「ヌーベルバーグ」、日本で1960年代に台頭した前衛演劇の隆盛など、どんな場所であれカルチャーであれ、黎明期を担う人々は共通して輝いているのだ。これを機にヒップホップに目覚めるのも楽しいが、そうでなくとも魅了される一本だろう。

『ワイルド・スタイル』
〇期間:〜2015年4月9日(木)
〇劇場: シネマライズ  宇田川町13-17 /ライズビル
〇時間:19:20〜21:00
〇料金:当日一般1800円 ほか

〇期間:2015年4月11日(土)〜
〇劇場: アップリンク   宇田川町37-18トツネビル2F
〇料金:当日一般1800円 ほか
〇公式:http://www.uplink.co.jp/wildstyle/

<関連企画>
『ワイルド・スタイル』上映+HIPHOP講座
「Back to 1983 in TOKYO-あの年、東京で何が起きたのか‐」
ゲスト:葛井克亮、荏開津 広、ばるぼら

〇開催:2015 年4 月15 日(水)
〇時間:19:15 開場 /19:30上映 ※上映終了後トークショー
〇劇場: アップリンク /宇田川町37-18トツネビル
〇出演:
葛井克亮/Kaz KUZUI
荏開津 広(執筆/DJ/京都精華大学非常勤講師)
ばるぼら(ネットワーカー)
〇料金:水曜サービスデー1,100円
〇詳細・予約​:http://www.uplink.co.jp/event/2015/36717

画像:(C)New York Beat Films LLC

編集部・横田

1980年生まれ、神奈川県在住。大学進学を期に上京して以来渋谷はカルチャーの聖地です。現在は渋谷文化プロジェクト編集部に所属しながら、介護士として働くニ足のわらじ生活です。

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