「帽子おじさん」、80歳記念で個展〜アウトサイダー・アートを体感?〜
NADiff Galleryでは3月21日から、自作オブジェを頭にかぶって繁華街を練り歩くパフォーマー・宮間英次郎さんの個展が始まった。
昨年傘寿を迎えた宮間さんは、1934年生まれの三重県伊勢出身。1960年頃から日雇い労働者として大阪や東京など日本のドヤ街を点々として、1993年頃に横浜寿町に拠点を定着。独自のスタイルで街を歩くパフォーマンスは、還暦目前の1994年からスタートしたものだという。
ドラえもん、ひこにゃん、ETなど、様々なキャラクターの人形がひしめき合う自作帽子を頭上に掲げ、花柄のエプロンや色付きメガネなどを組み合わせたミステリアスな装いで活動する宮間さん。帽子や衣装には「地球」「格差」「自然」などをキーワードとした独自の手書きメッセージが添えられることも多く、主に週末、中華街や上野など東京界隈の繁華街を巡る。
そんな宮間さんの活動は、独自の世界観を放出する人物の探求に取り組む「畸人研究会」や、名も無き人々の生きざまや創作活動を取材する都築響一さんらによって度々記事として紹介。話題が広がるにつれて自作帽子のサイズも巨大化していった。2008年にはスイスの「アール・ブリュット・コレクション」で行われた展覧会に出品。現在では日本のアウトサイダー・アーティストを代表する人物の一人に位置付けられる。
今回の展示は「畸人研究30号 特集:宮間英次郎さん傘寿記念」に合わせたもの。会場には、カラーコーンを土台にキティちゃんから地球のオブジェまでがぎっしりとレイアウトされた新作など、10点の帽子作品が並ぶ。中には来場者が着用可能な帽子もあり、宮間さんの顔の部分を切り取った顔ハメパネルなどと合わせて、写真撮影も可能だ。
アウトサイダー・アートというと、伝統的な美術教育を受けていない子どもや知的障がい者などが、特に発表するあてもないまま独自に続けている制作行為やその作品を指すことが多い。そんな中で60歳頃から始まった宮間さんの制作活動は、「自分のふがいなさにむしゃくしゃして奈抜(=きばつ、原文ママ)な方向に向かっていった」といった手書きメッセージなど、一般的な常識を持つ私たちからも、なんだか理解できたり共感できたりする部分が時折顔を出すのが面白い。着用可能な帽子や撮影用パネルなども、見に来た人たちに楽しんで行ってもらいたいというもてなしの精神を感じさせる。
アウトサイダー・アートを、一般人・常識人の理解の範囲を超えた特別なものから、だれでも楽しめ共感できるものへ。同展が伝える宮間さんの世界観を通して、自分自身の中に閉じ込めてあるアウトサイドな部分を見つめ直してみてはどうだろうか?
会期中、NADiff A/P/A/R/T1階では「畸人研究30号 特集:宮間英次郎さん傘寿記念」のほかミニコミ「畸人研究」バックナンバーや、都築さん著作などの関連書籍も扱う。4月11日には畸人研究学会によるトークイベントも実施(16:30〜、入場料1,000円、要予約)。
頭上ビックバン!
帽子おじさん宮間英次郎 80歳記念大展覧会
○期間:2015年3月21日(土)〜4月24日(金)
○時間:12:00〜20:00 ※月曜定休(月曜が祝日の場合は翌日)
○会場:NADiff Gallery
東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 地下1階
03-3446-4977
○料金:無料
○公式:http://www.nadiff.com/gallery/miyamaeijiro.html
編集部・横田
1980年生まれ、神奈川県在住。大学進学を期に上京して以来渋谷はカルチャーの聖地です。現在は渋谷文化プロジェクト編集部に所属しながら、介護士として働くニ足のわらじ生活です。