渋谷文化プロジェクト

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2007年上半期
映画アクセスランキング発表!

早いもので、今年もあっと言う間に半年が過ぎました。そこで本日は2007年1月1日〜6月30日の上半期に、当渋谷文化プロジェクトにアクセスが多かった映画作品のPV(ぺージビュー)ランキングを発表したいと思います。

堂々のアクセスランキング映画のナンバーワンは「善き人のためのソナタ」(監督・脚本:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク)。本作品は、旧東ドイツの秘密警察「シュタージュ」による監視社会の恐ろしさを描いたもの。自分が信じていた家族、友人が、実はシュタージュへ自分自身の監視役であった・・・、 1989年のベルリンの壁崩壊以降、明るみとなった衝撃的な真実からヒントを得て、弱冠33歳のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督がドイツ人自身が見て見ぬふりをし、タブー視してきた暗部を鋭く切った問題作です。文化通信速報によれば、渋谷・シネマライズでは2月10日から10週のロングランを行い、動員3万4792人、興収5029万6600円。以前、シネマライズの頼社長に聞いた話では、1作品の動員数3万人を成功の目安としているとのことですから、それを考えれば本作品は大ヒットと言って間違いはないでしょう。また公開途中で第79回アカデミー最優秀外国語映画賞を受賞したことも、興行に大きく貢献した要因と言えます。

上位20位のアクセスランキングは、以下の通りです。

1位:善き人のためのソナタ(監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク)
2位: ドリームガールズ(監督:ビル・コンドン)
3位:ダーウィンの悪夢(監督:フーベルト・ザウパー)
4位:スパイダーマン3(監督:サム・ライミ)
5位:ホリデイ(監督:ナンシー・メイヤーズ)
6位:ナイト ミュージアム(監督: ショーン・レヴィ)
7位:ロストロポーヴィチ 人生の祭典(監督:アレクサンドル・ソクーロフ)
8位:バベル(監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ)
9位:硫黄島からの手紙(監督:クリント・イーストウッド)
10位:マリー・アントワネット(監督:ソフィア・コッポラ)
11位:恋愛睡眠のすすめ(監督:ミシェル・ゴンドリー)
12位:パフューム−ある人殺しの物語−(監督・脚本:トム・ティクヴァ)
13位:アンフェア the movie(監督:小林義則)
14位:ブラックブック (監督 ポール・バーホーベン)
15位:さくらん (監督:蜷川実花)
16位:東京タワー オカンとボクと、時々、オトン (監督:松岡錠司)
17位:ペダル ピストバイク・ムーブメント in NY (監督:ピーター・サザーランド)
18位:パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド(監督:ゴア・ヴァービンスキー)
19位:デスノート the Last name(監督:金子修介)
20位:カインの末裔 (監督:奥秀太郎)

2位は、こちらもアカデミー賞2部門を受賞した「ドリームガールズ」。3人組の女性コーラスグループが夢見るショーービジネス界のサクセスストーリーを描きながらも、その裏に潜む汚く、ドロドロした確執や裏切りを浮き彫りにする人間ドラマ。特に本作品で見逃せないのが、主演・ビヨンセの存在感を上回る、助演・ジェニファー・ハドソンの大迫力の歌唱力と演技力。映画初出演でオスカーを手に入れた彼女こそが、本物のドリームガールと言えるかもしれません。同様にハリウッド作品では4位に「スパイダーマン3」、5位にキャメロン・ディアス、ケイト・ウィンスレット主演のロマンティック・コメディ「 ホリデイ」、6位にコメディアンのベン・スティラーが自然史博物館を舞台に繰り広げる爆笑コメディ「ナイト ミュージアム」が上位にランクインしました。

次にミニシアター上映ながら、上位に追随したのが3位の社会派ドキュメンタリー「ダーウィンの悪夢」。アフリカのヴィクトリア湖に放流された巨大魚ナイルパーチがもたらす富、その一方でナイルパーチが引き起こす自然破壊、さらに貧困、エイズで苦しむ子供たちがいるという現実。このナイルパーチが日本のスーパーマーケットでも売られているという事実を知った時に、私たちはどのような行動をとるべきなのか?自然保護のためナイルパーチを食べないのは簡単なことですが、それではアフリカはどうなるのか?この映画を見て、現実を知り、そして何もできない自分に腹が立った方もきっと多いのではないでしょうか。決して抜けることのできない負のスパイラルの恐ろしさを強く感じます。当ウェブサイトの「BUNKA×PERSON」でも昨年末に本作を記事掲載をしていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

同様にミニシアターのドキュメンタリーとして、上位にランクインしたのが鬼才アレクサンドル・ソクーロフ監督の「ロストロポーヴィチ 人生の祭典」。ソクーロフといえば、ヒトラーを主人公にした映画「モレク神」、レーニンを主役とした「牡牛座」、昭和天皇を主役とした「太陽」を映画化するなど、ある意味、タブーを恐れるない監督と言えます。今回の「ロストロポーヴィチ 人生の祭典」は、今までの作品と打って変わり、ロシアを代表する世界的なチェリスト、ロストロポーヴィチの80年の人生を振り返る心温まるドキュメンタリー。日本を代表する指揮者 ・小澤征爾が師と仰ぐほどの才能はもちろんのこと、オペラ歌手である妻・ヴィシネフスカヤとの夫婦愛を丁寧に描いた作品で、東京ではイメージフォーラムのみの単館上映にも関わらず高い支持を得ました。

上半期の映画ランキングを振り返るとハリウッドの大作映画が目立ったものの、その中でも、「善人のためのソナタ」「ダーウィンの悪夢」といったミニシアター系の映画が善戦しました。マイケル・ムーア監督の「ボウリング・フォー・コロンバイン」以降だと思いますが、ここ最近の傾向としてタブーを直視し、私たちに問題提起を投げかける歴史もの、社会派作品に注目が集まっています。また終戦から60年が過ぎ、ベルリン崩壊から20年近くを経た今日、ドイツ・ナチスの暗部を描いた「善人のためのソナタ」「ブラックブック」や、太平洋戦争末期の日本軍と米軍の死闘を描いた「硫黄島からの手紙」などの公開が増えているのも、時代が真実を知ることを求めているからかもしれません。平和、環境を語るにも、私たち自身が何も知らなければ話になりませんものね。

さて、皆さんはベスト20にランクインした作品のうち、何本くらい劇場で観ましたか? 忙しくて、見逃したという方は、ぜひレンタルでご覧になってはいかがでしょうか。

写真(上):「善き人のためのソナタ」 2006年/ドイツ/138分/配給:アルバトロスフィルム
写真(下):「ダーウィンの悪夢」 2004年/フランス、オーストリー、ベルギー/112分/配給:ビターズ・エンド

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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