渋谷文化プロジェクト

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今さらながら、
独断と偏見で「2010年の渋谷」を振り返る

明けましておめでとうございます。
本年も渋谷文化プロジェクトをよろしくお願い申し上げます。

新年を迎えて1週間、いまさらながら2010年の渋谷を振り返ってみたいと思います。本当はまとめるつもりはなかったのですが、やっぱり今後に向けての備忘録として残して置こうかなと。ただ独断と偏見のため、かなり偏りのある私的ニュースランキングですので、「えー」という声を漏らす方もいらっしゃると思いますが、どうかご容赦ください。

<独断と偏見で選ぶ!2010年、渋谷ニュースランキング>
1位:「センター街の景色が変わった!?」
2位:「HMV閉店からの、復活!?」
3位:「9年ぶりにプラネタリウム復活」
4位:「『ミニシアター』の相次ぐ閉館と『ライブハウス』の勃興」
5位:「ナイキパーク改め宮下公園」
6位:「ワールドカップで大騒ぎのスクランブル交差点」
7位:「前代未聞!地下鉄ファッションショー」
8位:「『ファミコンシティ』『しぶやぎ』など、一風変わったお店が続々」
9位:「『サンデーイシュー』『ディクショナリー』など新カルチャー施設が誕生」
10位:「『渋谷ヒカリエ』の名称決定」>


1位:「センター街の景色が変わった!?」
2位:「HMV閉店からの、復活!?」

堂々のトップは「センター街の景色が変わった!?」、続いて「HMV閉店からの、復活!?」。2010年の渋谷で最も動きが激しかったのは「渋谷センター街入り口」付近だったのではないだろうか。いま何が強くて、何が弱いのか、「日本経済の縮図」ともいえるこのエリアは、まさに弱肉強食のサバイバル地帯だ。昨年2月18日にセンター街の「顔」の一つであった「さくらや渋谷店」が閉店、6月にはその並びに店舗を構えていた「渋谷HMV」が8月いっぱいの営業終了を発表した。一時は「TSUTAYA」を展開するCCCがHMVジャパンの全事業取得に向けて検討を進めてきたものの、最終合意に至らず交渉は決裂。惜しまれつつ「渋谷HMV」は20年の歴史に幕を閉じることに・・・。併せてスクランブル交差点から見えたHMVの看板もすっかり消えてしまった。
(左:センター街の顔「さくらや」閉店  右:HMVはFOREVER21へ)

秋風が舞う季節になってもシャッターが下りたままの状態が続き、センター街入り口付近はすっかりと活気を失ってしまったかのように見えたが、11月11日に「さくらや」跡地に「洋服の青山」が旗艦店をオープン。これに端を発したのか、先月12月23日にはHMV跡地に米ロサンゼルス発のファストファッションブランド「FOREVER21(フォーエバー21) 渋谷店」のオープンが続き、しばらく不況風の煽りで暗さが目立った「センター街」にようやく一筋の光明が見え始めた。さらに昨年末にはHMVジャパンを買収したローソンが2011年中に「渋谷にHMVを復活させる」考えを明らかとするなど、今年はエンターテイメントを強化するローソンの一挙手一投足から目が離せなくなりそう。
(「HMV」の看板も「F21」へ入れ替わった)

3位:「9年ぶりにプラネタリウム復活」
「復活劇」といえば、11月21日にオープンした「コスモプラネタリウム渋谷」を忘れてはならない。かつて渋谷のシンボルといえば、東急文化会館の最上階にあった「五島プラネタリウム」を懐かしく思い起こす人もきっと多いだろう。1957年に開業した五島プラネタリウムは戦後、娯楽の少ない中で最新鋭の高価な機器を備えた本格的なプラネタリウム施設として人気を博した。東急文化会館の解体に伴い、2001年3月にプラネタリウムは惜しまれつつ閉館。それから9年余りの歳月を経て、昨年、桜丘町にオープンした「渋谷区総合文化 センター大和田」内に「コスモプラネタリウム渋谷」としてプラネタリウム施設が復活を遂げた。現在、同所では打ち上げから帰還までをCGで描いた映画「HAYABUSA-BACK TO THE EARTH-帰還バージョン」を上映し、連日多くの人でにぎわっている。かつて、五島プラネタリウムで天文、宇宙に夢を抱いた子どもたちが、親世代となり、子連れでここを訪れる姿も多いという。新たな渋谷の新名所として期待したい。
(左:文化の殿堂であった「東急文化会館」 右:昨年オープンした「総合文化センター大和田」)

4位:「『ミニシアター』の相次ぐ閉館と『ライブハウス』の勃興」
「映画の街=渋谷」と呼ばれるほど、渋谷には多数の映画館が点在する。ところが一昨年ごろから、映画館、中でもミニシアターが次々に閉館を余儀なくされている。まず、2009年1月30日に松竹直営の映画館「渋谷ピカデリー」が営業を終了したのを皮切りに、10月にシネカノンが運営していた「ヒューマントラストシネマ文化村通り」が閉館。続いて2010年1月にハチ公前交差点に面したQ-FRONTビル7Fにあった「シネフロント」、6月にスペイン坂にあったシネマライズ地下2階の「ライズX(エックス)」、9月に円山町のミニシアター・コンプレックス「Q-AXビル」の「渋谷シアターTSUTAYA」、11月末で道玄坂の「シネマ・アンジェリカ」が休館。さらに今月末に「恵比寿ガーデンシネマ」、2月中にはプライム6Fの「シネセゾン渋谷」の閉館もほぼ決定しており、わずか2年余りの間に8館11スクリーンが姿を消すことになった。戦後、渋谷の文化を担ってきた映画産業の衰退は、何とも言えず寂しいかぎり。
(左:2月に閉館する「シネセゾン渋谷」、右:昨年、休館した「シネマアンジェリカ)

では映画興行収入そのものは過去最高を記録する中で、なぜミニシアターの経営ばかりが苦戦を強いられるのか?その理由を専門家は「若者のアート系映画離れ」と分析する向きも強いが、実際のところは定かではない。DVDレンタルまでのサイクルの短縮化やネット配信の普及のほか、エンターテイメントの多様化などひと昔前とは映画の取り巻く環境は大きく様変わりしている。さらに世の中が不況で暗い話題ばかりが目に付く中で、せめて映画ぐらいは「笑えるもの」「明るくなれるもの」と、知らず知らずのうちに小難しい「アート系」「社会系」作品よりも、単純な「娯楽系」作品を求めようとする潜在意識が少なからず働いているのかもしれない。

じゃあ、映画が駄目ならすべてのエンターテイメントが全滅かといえば、ここのところ渋谷に増えたな〜と感じるのが「ライブハウス」の存在だ。映画館「渋谷ピカデリー」の跡に2010年3月に劇場スタイルのライブハウス「SHIBUYA ENTERTAINMENT THEATER PLEASURE PLEASURE(プレジャープレジャー)」(森永乳業がネーミングライツを取得し、現在は「Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE」)、同月に同館5Fにミュージックレストラン「SPACE SHOWER TV THE DINER(スペースシャワーTV ザ・ダイナー」がオープン。続いて7月、東急ハンズ渋谷店向かいの雑居ビル3Fにライブハウス「Shibuya Milkyway(ミルキーウェイ)」、9月に同ビル1Fにチェルシーホテル系列の「スターラウンジ」、11月にスペイン坂の映画館「ライズX(エックス)」の跡にスペースシャワーネットワーク運営のライブハウス「WWW(ダブリュダブリュダブリュー)」が立て続けにオープンするなど、衰退するミニシアターを尻目にライブハウスのオープンラッシュが止まられない。
(左:ミュージックレストラン「SPACE SHOWER TV THE DINER」 右:クリムトの絵が栄えるライブハウス「スターラウンジ」)

なんでミニシアターが駄目で、ライブハウスは続々と増えるのか?こうした背景には配給料・人件費・設備等の維持費のほか、たとえ人が呼べない作品であっても一定期間の上映を続けなければならない映画館に対して、ライブハウスでは毎日出演バンドが入れ替わること、またチケットノルマ、チケット収入をバンド側と店側が折半する仕組みが確立しているなど、儲けられずとも映画に比べて経営リスクが少ない業態と言えるかもしれない。さらに昨今の不況でテナントが決まらない空きビルが増える中で、かつては騒音や客層からビルオーナーから嫌われていた「ライブハウス」の入居に寛容になりつつあることも理由の一つとなっているようだ。地方から「渋谷」を目指すアマチュア、インディーズバンドの数も少なくなく、小規模なハコの需要はまだまだありそう。

5位:「ナイキパーク改め宮下公園」
次に5位は「宮下公園」の騒動。当初、2010年5月にオープンが予定されていた「宮下NIKEパーク」。路上生活者支援者らで組織する反対派が「誰もが自由に使えるはずである公園が商業スペースに変質してしまう」などの理由から建設中止を求める声が強まり、スケジュールを大幅に見直しせざる得ない形となった。業を煮やした区は9月15日に公園を部分閉鎖、24日には行政代執行を実施し全面封鎖を強行。反対派のにらみ合いが激しさを増す中で、ついにナイキ・ジャパンは「宮下NIKEパーク」への名称変更を撤回し「渋谷区立宮下公園」を存続することを発表した。現在は一旦、反対派の動きは沈静化しているものの、4月下旬にオープンを予定する新生「渋谷区宮下公園」のお披露目を前に一波乱起こりそうな気配がする。
(左:かつての宮下公園入り口付近 右:行政代執行に基づき全面封鎖へ)

6位:「ワールドカップで大騒ぎのスクランブル交差点」
昨年、日本人に感動を与えた一番のニュースといえば「岡田ジャパンの南アフリカW杯ベスト16入り」だろう。で、なぜか分からないが、2002年の日韓大会以来、その喜びを発散する場として「渋谷スクランブル交差点」に群衆が押し寄せる。またそれを警察官やマスコミが待ち構え、まさに交差点はスクランブル(ごちゃ混ぜ状態)と化す。もはや4年に一度の風物詩とも言える。スクランブル交差点は、「渋谷」の地名である「谷」の中でも最も低い谷底部分。ジャパンブルーに身を包んだ人びとの大波が渦を巻く姿は、上流から下流に向けて川が流れる様子と全く一緒。かつて現在の渋谷駅周辺は、大雨や台風の影響で渋谷川の氾濫に見舞われたという。まさにワールドカップの騒ぎは、暗渠となった渋谷川がたまにその存在をアピールするため、引き起こしている悪戯のようにも思えてならない。
(左:デンマーク戦に勝って盛り上がる風景 右:スクランブル交差点)

7位:「前代未聞!地下鉄ファッションショー」
昨年3月13日深夜、アーバン・エキスポ「shibuya1000」の目玉企画として、東京メトロ副都心線渋谷駅の線路をランウェイに見立てたファッションショーが開催された。会場は2012年度に東急東横線との相互直通運転を開始する東京メトロ副都心線渋谷駅の線路上で、終電運行終了から始発電車出発までの数時間を利用。関係者が口を揃えて「二度と出来ないだろう」という前代未聞のイベントは、鉄道各社、国土交通省の許可など、様々な困難を乗り越えて実現させたもの。今後、「伝説のファッションイベント」として長く語り継がれることだろう。
(当日のファッションショーの模様はこちらをご覧ください。)

8位:「『ファミコンシティ』『しぶやぎ』など一風変わったお店が続々」
お洒落なカフェの集積地である渋谷。カフェといえば、センスの良いBGM、コーヒー片手に読書にふけるそんな姿をつい想像してしまう。ところが昨年ごろから、一風変わったカフェが続々と登場している。昨年3月、東急ハンズ近くにTV Game Cafe BAR「ファミコンシティ」がオープン。全29席の店内にはテレビモニター10台、懐かしのファミコンからPS3やWiiなどの最新機種までのハードとソフトを取り揃え、お酒を飲みながら友だちと一緒にTVゲームが楽しめる。カラオケ代わる2次会の場としても人気を博しているという。また究極の癒しカフェとして話題を呼んだのが、桜丘町にある「桜丘カフェ」。昨年5月からさくらとショコラという2頭の子ヤギを飼い始め、ツイッターなどソーシャルメディアを中心に話題となった。1日2回、さくら&ショコラを散歩に連れていくそうなので、桜丘町でバッタリ、子ヤギに出くわすことも・・・。そのほか、ウルトラマンの怪獣専門のアクターとして活躍していた人物がオープンした特撮バー「怪獣屋」(道玄坂)や、映像制作会社「ヤリタイピクチャーズ」、活弁映画監督の山田広野さんらがオープンしたカフェバー「喫茶スマイル」(宇田川町)、懐かしの歌謡曲が楽しめる「昭和歌謡曲BARバールニーチャ」(松濤)など、一癖も二癖もありそうな個性派カフェやバーが増殖している。
(左:ファミコンシティ 右:「桜丘カフェ」のアイドル、さくら&チョコラ)

9位:「『サンデーイシュー』など新カルチャー施設が誕生」
昨年7月、神南にギャラリー展示やイベントなどを中心に展開する新カルチャー拠点「ディクショナリー倶楽部 ART SCHOOL」がオープン。運営はT-SHIRTS AS MEDIAや、フリーペーパー「DICTIONARY」の発行で知られるクラブキング。もともと東京都水道局の出張所であったという古い施設をリノベーションした施設で、代表・桑原茂一さんいわく「地方の忘れられた保養所」――まさにこの表現がぴったりな民宿や田舎の小学校をおもわせる佇まいだ。代々木第一体育館の向かい、岸記念体育館、桑沢デザイン研究所に隣接する渋谷のど真ん中であるにも関わらず、虫の音が響き、草が生い茂り、まるで都会の喧騒とは無縁の世界がそこには広がっている。現在、脳科学者・茂木健一郎さんを学校長に招き、大人が遊んで学べる学校「ART SCHOOL(アートスクール)」を展開中。リリー・フランキーさん、ヒロ杉山さん、近田春夫さんなどDICTIONARYと縁のあるクリエーターやアーティストらが講師となって、普通の学校では学べないユニークな授業を開講し話題を呼んでいる。同施設は今年いっぱいの期限付き物件につき、興味のある方はお早めに。
(左:第一教室 右:「ディクショナリー倶楽部」入り口)

同じく7月、宮下公園近くにギャラリースペースとラウンジバーの複合空間「SUNDAY ISSUE(サンデー イシュー)」がオープンした。ペパボ創始者の家入一真さんが率いるパーティカンパニーが運営。一番の特徴は、アートスペース、ラウンジバー、ブックコーナーの3つの機能が持つ点。さらに同スペースの隣にパーティカンパニー本社や、シェアオフィスも併設するなど、クローズされた空間ではなく、人とのコミュニケーションが円滑に行われるリアルソーシャルスペースとして大注目。また「ディクショナリー倶楽部」と共通するのは、どちらも真新しい新築物件ではなく、築30年、40年を超えるような古い物件を上手にリノベーションしている点。建物に染みついた汚れや傷の一つ一つも味わいとし、長年、様々な人びとがそこを訪れ、残してきた空気や温度のようなものが優しく出迎えてくれる感覚を得る。「大人の隠れ家」「秘密基地」というショルダーコピーの似合う2つの新カルチャー拠点の誕生は、渋谷をより魅力的なものにしてくれた。
(左:サンデーイシュー内のブックコーナー 右:ギャラリーコーナー)

10位:「『渋谷ヒカリエ』の名称決定」
昨年4月、渋谷駅東口、東急文化会館跡地で建設が進んでいる「渋谷新文化街区プロジェクト」の施設名称が「渋谷ヒカリエ」に決定した。「渋谷から未来を照らし、世の中を変える光になる」という意志を込めた名称は、かつての「東急文化会館」が戦後の日本人に夢を与える場であったように、先行きの見えない日本の将来に「希望の光」を灯す存在を目指すもの。2012年春のオープンを予定し、この春には約182.5メートル、地上34階の最高点までに達する見込みだそう。また2012年の竣工以降、東横線と副都心線の相互直通運転の開始、代官山〜渋谷の地下鉄化、そして渋谷駅全体の再開発がいよいよ本格化する。 マヤ暦によれば2012年に一つの区切りを迎え、全人類が滅亡するんじゃないかと噂されているが、渋谷にとっても2012年は「未来」に向けた大きな転換年といえる。
(左:完成予想図 右:現在、建設が進む「渋谷ヒカリエ」)

2010年の渋谷の話題を振り返りつつ、今後の渋谷の動向についても少し触れてみました。HMVの閉店→復活、宮下ナイキパーク(現、渋谷区立宮下公園)のオープンの遅れなど、誰もが予想だに出来ない事態が次々に起こるのが「渋谷」らしいところ。さて来年の今ごろ、渋谷は一体どう変わっているのか。できれば、明るい話題で盛り上がっていることを期待したいもの。合掌

<参考記事>
「ゆく渋谷ゼロ年代、くる渋谷10年代」(2009年12月29日掲載)

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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