★菊地成孔コンサート★
第二夜「夜の虹の作り方」
菊地成孔さんのBnkamuraオーチャードホール第二夜。ダブ・セクステットwithUA。
前日のペペ・トルメント・アスカラールとは全く異なりフリージャズ。いきなり演奏が始まり、後半のUAさんが登場まで全くMCもナシ。演奏が始まり進むにつれ、夜の帳(とばり)に包まれていくように、ステージや会場がどんどんと暗くなっていく様に感じます。しかし実際には明るさは変わっている訳ではなく、 楽曲によって暗闇まで漸近線を描く様な錯覚に陥ります。不思議な体験です。
UAさんは「雨女」。菊地さんは「晴れ(ハレ)男」。
この日の東京は昼間から冷たい雨で、その事について終始MCは展開されました。
そしてUAさんの『Over The Raibow』が唄われ、明らかにホールの外は雨が上がって、ステージに虹がかかるのが見えた様でした。。。
今回の菊地さんがこのコンサートについて、始まる前に言及された事は二つ。マイケル・ジャクソンやマース・カニングハム、ピナ・バウシェという20世紀を代表するダンサーたちが亡くなり、構造社会学者レヴィ・ストロースが亡くなり、、、、20世紀自体とそれに寄り添って来た私たち自身への鎮魂の様なもの だったのでしょうか。
そしてリーマンショック、黒人大統領誕生と世の中が大きく変わろうとしている現在を騒ぎの好きな鉄火場を愛する江戸人と重ね合わしても居りました。
最近たまたま井上ひさし原作の『京伝店の煙草入れ』を読みました。
江戸の戯曲作家の山東京伝は。若い天才花火師の幸吉の三尺花火(江戸の夜を昼に換えてしまう「日輪」)を隅田川の川開きに揚げる計画に加担する。そのうちにお上からそれほどの花火であったなら、江戸城を狙う輩にその技術を盗まれやしないかと睨まれることになり、花火の中止どころか幸吉は江戸追放を命じられてしまう。
「一瞬だけお天道さま(太陽)を夜の江戸に揚げてみたい、、、お天道さまに勝ってみたい。」
若い頃、折檻で凍傷になってしまいビッコの幸吉の足。一瞬の夜を昼に換えたいという幸吉の思いは、黙って辛抱する他なかった寒い夜への仕返し。
この菊地成孔コンサート第二夜は、そんな江戸人の見栄やプライドをしてたった一瞬だけ江戸の夜を焦がす花火師の生き方に重なる。
確かにオーチャードホールにはそのとき虹がかかった。
画像1枚目=菊地さん。
画像2枚目=篠原ともえちゃんと鈴木杏ちゃん。
ヴィヴィアン佐藤(非建築家)
非建築家、アーティスト、ドラァククイーン、イラストレーター、文筆家、パーティイスト、、、と様々な顔を持つ。独自の哲学と美意識で東京を乗りこなす。その分裂的・断片的言動は東京では整合性を獲得している。。。なんちゃって。