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今週末のオススメカルチャー
イベント情報(8/7)

粘土で造るクレイアニメや、1コマ毎に撮影するストップモーション・アニメーションの世界では、チェコのイジー・トルンカ、ヤン・シュヴァンクマイエル、さらにロシアのユーリ・ノルシュテインなどが日本でよく知られている。セル画でアニメーションを作るのに比べて膨大な時間と予算が掛かることから、利潤を求める資本主義国ではなかなか作りづらい手法であったと言えるかもしれない。とはいえ、ソ連やチェコスロバキアの崩壊は、多くの人びとに自由や権利を与えるとともに、アニメーション作家たちの職を奪うという事態も招いた。社会主義時代にはあった厳しい検閲はなくなり、折角、好きに自由な作品が作れる時代が訪れたものの、一方でアニメ制作を支援してくれる環境そのものも消えてしまったのだ。さらに厳しい検閲があったからこそ、それを如何に誤魔化しながら政治批判を作品へ隠し入れるかなど、反体制精神が優れた作品づくりに大きな影響を与えていたことは否めない。2005年、チェコアニメの巨匠、ヤン・シュヴァンクマイエルが制作した長編映画「ルナシー」の冒頭で、シュヴァンクマイエル自身が登場して「芸術は死んで商業主義的なものが生き残る・・・」と観客に語りかけるシーンは大変印象深い。ルナシーは精神病院を舞台に「自由」と「抑制」とは何かを巧みに描いた作品であるが、その根底には「資本主義」と「共産主義」がいずれも完璧ではないことをメッセージとして伝えている、と私はそう捉えている。

こうした資金不足の状況の中で、チェコアニメ界の重鎮の一人であるイジー・バルタ氏の24年ぶりとなる新作長編アニメ「屋根裏のポムネンカ」が、8月1日から渋谷・ユーロスペースで公開されている。登場するのは屋根裏に捨てられ、人間から忘れられた人形やぬいぐるみたち。毎日、歌って笑って楽しく暮らす彼らのもとに、突如、悪の親玉が現れ、人気者の女の子人形・ポムネンカが連れ去られる。残った仲間たちは、彼女を助けるために力を集めて旅に出る・・・という愛と冒険のファンタジー(詳しくは、先週、ヴィヴィアンさんがレビューを書いていますので、そちらをご覧下さい)。

またCGアニメが全盛のこの時代、あえて手描きの温かみや、素朴さにこだわる日本の若手作家も出始めている。今年の春、アカデミー賞の短編アニメーション賞を『つみきのいえ』で獲得した加藤久仁生監督がその一人だ。『つみきのいえ』では、地球温暖化という環境問題を背景に、海面上昇に伴って積み木のように上へ上へと家を建て増した老人が、水に沈んだ家の中で大切な家族との思い出を回想するという心温まるストーリー。わずか12分4秒の短編ながら、1枚1枚鉛筆で手描きしたという作品は、制作に約1年近くの歳月が掛かったという。この制作を支えたのは、彼が所属するTV-CMや映画『踊る大捜査線THE MOVIE』『ALWAYS 三丁目の夕日』などを手掛けた映像制作会社「ROBOT」内にある、社内ユニット「アニメーションスタジオ CAGE」。膨大な制作期間と制作費の掛かるアニメづくりはフリーではなかなか難しいもの。広告等の商業作品の仕事に携わりながら、一方で作家性の強い創作活動ができる環境や場が必要とされていることがよく分かる。今週土曜日(8/8〜)から、東京都写真美術館では加藤久仁生監督らが所属する、「アニメーションスタジオ CAGE」による20の短編アニメーションの特集上映を開始する。「屋根裏のポムネンカ」(上映:ユーロスペース)とともに、この機会に作家性の強いアニメーションの世界に触れ、感性を大いに刺激してみてはいかがだろうか。

そのほか、週末のオススメイベントやカルチャー情報は下記をご覧下さい。

<カルチャー>
◎【アート】環境展 「絶景」
場所:トーキョーワンダーサイト・渋谷
日時: 〜2009年11月8日 料金:入場無料
メモ:「ゴミ=御美」。アートを通して、ゴミ問題を考えるキッカケにしたい

◎【アート】ジョルジュ・ビゴー展 -碧眼の浮世絵師が斬る明治-
場所:東京都写真美術館
日時:〜2009年8月23日
料金:一般 800円/学生 700円/中高生・65歳以上 600円
メモ:シニカルな風刺画で知られる、フランス人画家・ビゴーが見た文明開化の日本とは・・・

◎【映画】『つみきのいえ』とアニメーションスタジオCAGEの世界
場所:東京都写真美術館
日時:2009年8月8日〜8月21日
料金:学生・シニア(60歳以上)1,000円/中学・高校生800円/小学生以下無料
メモ:8/8に舞台挨拶,8/15に加藤監督ら4人のトークショーも開催予定

◎【映画】未来の食卓
場所:UPLINK X
日時:2009年8月8日〜
料金:一般1800円/大学生・高校生 1500円/中学生・小人・シニア 1000円
メモ:フランス南部のある村では給食をオーガニックにする試みに挑戦!未来の食卓の在り方とは・・・

◎【映画】花と兵隊
場所:シアター・イメージフォーラム
日時:2009年8月8日〜
料金:一般1800円/ 大1500円/ 高・中・小・シニア1000円
メモ:日本に還らなかった未帰還兵たちのドキュメンタリー。30歳の若き監督は何を感じたのか・・・。

◎【映画】山形スクリーム
場所:ヒューマントラストシネマ文化村通り
日時:2009年8月1日〜
料金:一般1800円/ 学生1500円/シニア1000円
メモ:竹中流ギャグの暴走が止まらない、B級ホラーコメディー。人間、本当に怖いと笑うというし・・・。

◎【映画】バーダー・マインホフ 理想の果てに
場所:シネマライズ
日時:2009年7月25日〜
料金:一般1800円/大1000円(平日)1500円(土日)/高・中・小・シニア1000円 
メモ:「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」同様、集団ヒステリーの恐怖を思い知る。

◎【映画】意志の勝利
場所:シアターN 渋谷
日時:〜2009年8月28日
料金:一般1800円/ 大1500円 /高・中・小・シニア1000円
メモ:「理想」と「狂気」が常に隣合わせにあることを、「意志の勝利」「バーダー・マインホフ」は伝える。

◎【映画】KIKOE
場所:ユーロスペース
日時:〜8月14日
料金:一般1700円/大・専1400円/シニア1200円/高800円/中学生以下500円
メモ:シュヴァンクマイエル、足立正生、ジョナス・メカス、ヤマタカEYEなど名を見ただけでそそられる。

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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