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☆ヴィヴィアン佐藤オススメ映画
『マン・オン・ワイヤー』☆

★WTCの数奇な運命、もしくはWTCの初恋の物語★
NYのWTC(跡地)は20世紀近代の重要な舞台だった。もしくは21世紀はそこから(跡地)始まったといっても過言ではない。ツインタワーという構造上、それ自身鏡に映った鏡像にも喩えられ、ボーイング社製の767ジャンボが衝突し崩落するという結末は、同時代的に深い世界共通なトラウマとなった。そのツインタワーが出来上がった1974年に、北塔と南塔にワイヤーを張りそこを渡った男がいた。フィリップ・プティ。フランス人。世界中さまざまな「場所」を歩いてきた男の最終目的であるWTCの綱渡りのドキュメンタリーである。
つねに不許可で実行するという彼の姿勢は、あたかもテロそのもの。
飛ぶことを目的に発明された飛行機は、いつの間にか「旅客」や「運搬」という目的に取って代わられた(ボーイング社はリトルボーイを搭載したB29エノラ・ゲイを生産)。現在飛行機に乗る者はまるで飛んでいない様な錯覚に陥る。一方で近代建築は特定の場所を持たず、まるでそこには存在しない様な姿で、しかし象徴性は持ち続けている存在となった。
そしてプティはどこかへ行くために歩くわけではなく、歩くこと自体を目的として存在している男だ。
WTCが崩れ落ちる映像はこの100年もっとも有名なものとなった。しかしこの映画は「9・11」事件には全く触れることはなく、WTCがマンハッタンという母体で受胎し成長していく姿を丁寧に映していく。
画面左側にはWTCが建設されていく姿を。画面右側にはプティの子供時代から綱渡り師になっていく姿を映し出す。昨今の典型的な結婚式の演出である。「9・11」の事件が、アメリカ型近代技術であるジャンボ機と超高層ビルの不幸な「出会い・心中」だとすると、この映画に描かれた1974年の綱渡り事件は理想的な「マリアージュ」である。このドキュメンタリーはWTCというもうひとりの主人公の数奇な運命と、WTCの初恋の物語である。
マン・オン・ワイヤー

開催場所:渋谷シアタ−Nにて
開催日時:2009年7月11日〜2009年7月31日
11:00/13:00/15:00/17:00/19:00

ヴィヴィアン佐藤(非建築家)

非建築家、アーティスト、ドラァククイーン、イラストレーター、文筆家、パーティイスト、、、と様々な顔を持つ。独自の哲学と美意識で東京を乗りこなす。その分裂的・断片的言動は東京では整合性を獲得している。。。なんちゃって。

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