今週末のオススメカルチャー
イベント情報(6/12)
ここ最近、渋谷のミニシアターではドキュメンタリー映画が好調だ。中でも昨年、渋谷・イメージフォーラムで異例のロングランヒットを記録した映画「いのちの食べかた」は、知られざる食の生産工場の現実を描いた作品として大きな話題となった。本作の特徴はナレーション、音楽、テロップが一切ないこと。牛、鶏や豚が生産工場を介して、私たちの食卓に上るまでの旅を、無機質なベルトコンベアーの作業のようにただ淡々と映し出す作品であった。そこには起承転結が明確なストーリーや構成は存在しない。大量消費に荷担する私たちが、その光景を目の当たりにしたときに何を感じるか否かは各々に委ねられる。こうした「ナレーションなし、音楽なし、テロップなし」という手法は、決して容易ではない。私たちが日ごろ目にすることの多いテレビでは、分かり易さを追求するため、対象者の映像では見えない心の機微をナレーションで代弁することが多々ある。が、しかし、それは本当に対象者の心の内なのだろうか。または、それは作家のメッセージを含んだ作為的なものではないだろうか。作家が撮影対象に巻き込まれないよう、客観的にその事象を捉えるためには、ときにナレーションの存在がかえって邪魔になることが多いように感じる。
今週末、渋谷・シアター・イメージフォーラムで公開を予定するドキュメンタリー映画「精神」も、一切のナレーション、BGM、テロップを排除した作品のひとつだ。監督は、日本の選挙運動の様子を滑稽に捉えた映画「選挙」で知られる想田和弘さん。今回の作品「精神」では、精神病患者たちの姿をナレーションなし、BGMなし、テロップなしに加えて、さらにモザイクなしで赤裸々に紹介するという挑戦に挑んでいる。顔が見えないから偏見が生まれる、モザイクを外すことで一人の人間として、彼らの本来の姿を浮き彫りとする。ドキュメンタリーの第一人者として知られるアメリカ人のフレデリック・ワイズマン監督は、1969年にマスチューセッツ州ブリッジウォーター精神病院刑務所の矯正院の日々の様子を克明に描いた作品「チチカット・フォーリーズ」を発表。さらにフランス人のニコラ・フィリベール監督も、1996年に精神科クリニックを題材にした作品「すべての些細な事柄」を発表するなど、巨匠と呼ばれるドキュメンタリー作家たちが必ず一度は挑む「精神病患者」というテーマ。さて想田監督は、このタブーにどのように向き合ったのか。カメラを通して、対象者を観察する想田さんの目線に注目したい。
そのほか、週末のオススメイベントやカルチャー情報は下記をご覧下さい。
<イベント>
◎第2回バングラデシュフェスティバル2009
場所:代々木公園ケヤキ並木・イベント広場
日時:2009年6月13日〜6月14日(13日 10:00〜20:00、14日 10:00〜18:30)
料金:入場無料
主催:バングラデシュフェスティバル実行委員会
メモ:香辛料の利いたスパイシーなバングラデシュカレーは食べる価値有り!
<カルチャー>
◎【展覧会】新収蔵資料展ー昭和レトロの道具たちー
場所:白根記念渋谷区郷土博物館・文学館
日時:2009年6月13日〜7月12日9:00〜17:00
料金:一般100円、小中学生50円
メモ:年号が「平成」に変わり、はや20年以上かぁ。年とるなぁ〜。
◎【アート】奇想の王国 だまし絵展
場所:Bunkamura ザ・ミュージアム
日時:2009年6月13日〜8月16日10:00〜19:00
料金:一般 1400円、大学・高校生1000円、中学・小学生700円
メモ:近代ヨーロッパ作品から浮世絵、さらに本城直季さんの写真など現代のだまし絵も勢揃いする
◎【映画】レスラー
場所:シネマライズ
日時:2009年6月13日〜
料金:一般1800円、大1000円(月〜金)1500円(土日、祝日)、高・中・小・シニア1000円
メモ:あのミックーロークが復活、ボクシングの次はプロレスに挑戦だ! 男の生き様が胸を打つ
◎【映画】精神
場所:シアター・イメージフォーラム
日時:2009年6月13日〜
料金:一般1800円、 大1500円、 高・中・小・シニア1000円
メモ:真実に優るものはなし。いかなる虚構も、今を生きる人間の姿には敵わない。
◎【映画】斜陽
場所:渋谷シアターTSUTAYA
日時:2009年6月13日〜
料金:一般1800円、大・高1500円、小・中・シニア1000円
メモ:音楽は、今年2月に当サイトで取材した黒色すみれさんが担当しています。
◎【映画】サガンー悲しみよ こんにちはー
場所:Bunkamura ル・シネマ
日時:2009年6月6日〜
料金:一般1800円、 学生1500円、 シニア1000円
メモ:若くして名声を得たスターの波乱万丈な人生。華やかさの影に見え隠れする孤独さに息を呑む
編集部・フジイタカシ
渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。