『明日、君がいない』を鑑賞しました。
「KEY PERSON」にインタビュー記事がアップしたばかりの李鳳宇さん(シネカノン代表・映画プロデューサー)の運営するアミューズCQNで、今、『明日、君がいない』という映画が公開されています。昨日、それを観て来ました。
「カンヌ国際映画祭で絶賛」という表現には目新しさを感じなくても、それが映画に関する知識が皆無の19歳が撮った作品と聞けば、話は別でしょう。その監督の名はムラーリ・K・タルリでオーストラリア出身。親友の自殺にショックを受けて、自らも自殺未遂をするほど精神的に追い詰められたものの、この作品を撮ることで最悪の状況を乗り越えようとしたといいます。
あらすじは、映画紹介ページを見ていただきたいのですが、この作品が一貫して描くテーマは「自殺」。映画の冒頭、高校の校舎内で誰かが自殺をすることが暗示されます。その後すぐに、時計の針はその日の朝に巻き戻され、いずれも深い悩みを抱えながら平凡で退屈な日常を生き抜こうとする6人の高校生の一日が心情の告白を交えて描かれます。どうやら、このなかの誰かが自殺をするのだろうと分かるのですが、それは一体誰なのか。そして、なぜ自殺に踏み切るのか。そのサスペンス的な要素に引き込まれ、スクリーンから目を離せませんでした。
©2006 2:37 PTY
しかし、物語は、単純には終わりません。クライマックスには巧みな手法によって、「自殺とはどういうことであるか」が観客に対して強烈に提示されます。その時に観客にもたらされる感覚は、自分の周囲の誰かが自殺をした時に受けるものと、おそらく非常に似ているでしょう。この監督は、観客を映画の“傍観者”で終わらせずに、登場人物の輪の中に引き入れようと試み、見事にそれを成功させています。
サイト内の「HOT RANKING」では、『バベル』『ナイト ミュージアム』などが人気ですが、『明日、君がいない』も強力に推したい一作。低予算でも、気持ちやアイデアしだいでは、大作を凌駕する作品を撮ることができるという見本のような映画です。GW中に是非ご覧ください!
※GW中の渋谷の映画情報はこちらご参考ください⇒ 「渋谷(4.28)で映画」特集
編集部・Nino
1975年川崎生まれ。音楽と映画とお酒とスイーツを愛するインドア派の男です。