PFFグランプリ発表!
現在、渋谷東急にて、「ぴあ」の主催するインディペンデント映画祭「ぴあフィルムフェスティバル」が開催されている。昨日25日は、19日から連日上映されてきた「PFFの入選作品」15作の中から入賞作品を発表する表彰式が行われた。見事グランプリを受賞したのは、『無防備』を監督した市井昌秀さん。
『無防備』は、コンピュータ制御されたプラスチック部品の工場で働く「律子」が主人公の作品。欠陥品を選り分けるのが彼女の仕事だが、律子は本当の「欠陥品」は自分自身だと考えていて、人間生活の生々しさと、工場の無機質な雰囲気と、それを取り巻く瑞々しい田園風景のコントラストが鮮やかな作品だ。
また『無防備』は、グランプリの他にも「GyaO賞」「技術賞」を獲得した。ちなみに市井さんは、2006年『隼』でも「技術賞」「観客賞」「準グランプリ」を獲得している。「2つ目」となった今回の技術賞だが、市井さんは2006年のトロフィーを、「カメラを担当した関くんに贈りました」とコメントした。でも今回の『無防備』の撮影が始まる前に、関さんは「これを持っていると調子に乗るから」ともらったトロフィーを捨てたそうだ。市井さんは「だからまたこれを関くんに贈りたい」と言葉を詰まらせた。そして、グランプリを受賞した際には、市井さんがマイクの前に立ったときに、会場の奥で赤ん坊の泣き声が。
実はこの映画には実際の「出産」シーンが登場する。そもそも『無防備』を撮ろうと思ったのは、市井さんの奥さんの妊娠がきっかけだったそう。「妊娠中の妻の背中を見て、逞しさを覚えた」市井さんは、「女性の力強さ、逞しさ、繊細さ、しなやかさ、怖さ」をフィルムに収めようと『無防備』の制作に取りかかった。つまり、さっき泣いた赤ん坊は、映画で生まれた市井さん自身の子供。タイミングが良い。
最終審査員の方々のコメントによると今回の審査では、誰にグランプリを贈るかについて、「全員バラバラの意見だった」とのこと。今回のPFFには、それだけ実力派が出揃った。グランプリに輝いた市井さん、準グランプリの岨手(そで)由貴子さん、その他全16人の入選監督たち一人一人の表情を見ていると、改めてPFFという賞が、自主映画作家たちにとってどれほど意味のある賞なのかを感じた表彰式だった。
編集部・横田
1980年生まれ、神奈川県在住。大学進学を期に上京して以来渋谷はカルチャーの聖地です。現在は渋谷文化プロジェクト編集部に所属しながら、介護士として働くニ足のわらじ生活です。