鳥重「いただきます」
先日、のんべえ横町にある「鳥重」という焼き鳥屋さんに行ってきました。行ってきました、というより、連れて行ってもらいました、と言った方が近い。常連の友達が予約を入れてくれて、「9時半に渋谷集合!」というかけ声に、しっぽを振ってついていった、というのが正確です。鳥重は、渋谷の中でも異彩を放つのんべえ横町で、私が生まれるずっと前から営業を続けているお店。4畳半ほどの小さなスペースにL字型のカウンターがあり、多い日は一度に12人ものお客さんがそこに肩を並べます。
お店は「お母さん」と呼ばれる店長さんが、たった1人で切り盛りされています。いくら小さなお店だからといって、常に満席の状態のお店で一晩立ちっぱなしで接客をするのは本当に大変なことです。だから、よりたくさんのお客さんが、よりいい状態で焼き鳥を食べられるように、鳥重にはたくさんのルールがあります。
予約の時間は絶対に守ること。
席は譲り合って座ること。
自分でテーブルを拭くこと。
料理は一度に注文すること。
お酒は飲み過ぎないこと。
などなど。
料理を出す順番も、ペースも、全てお母さんが決定。
つまりとてもアクが強いお店で、自分の好きなように注文して、ゆっくり飲みたいって人におすすめできるお店ではありません。
写真1
焼き鳥。食べかけですみません。つい。
写真2
鳥のお刺身。レバーとささみです。
臭みは全くありません。
写真3
赤ワイン。飲みかけですみません。
飲みかけじゃない状態を、是非お店で確かめてみてください。
でも、知らない人と身を寄せながら、新鮮で大降りの焼き鳥をみんなで一緒にほおばる食事には、他のお店で感じたことのない味わいがあります。店長さんはみんなの様子を眺めながら、「飲み過ぎですよ」と注意したり、お客さんの結婚の相談に乗っていて熱くなりすぎて涙ぐんだり。彼女は、もうとっくに退職しててもおかしくないような年齢で、本当にちいさな体で、毎日店に立っています。殺生した鶏には、「いただきます」のお祈りを捧げて店を開けると言います。人生の先輩として、かっこいいと思っています。
おなかが減ってきました。
編集部・横田
1980年生まれ、神奈川県在住。大学進学を期に上京して以来渋谷はカルチャーの聖地です。現在は渋谷文化プロジェクト編集部に所属しながら、介護士として働くニ足のわらじ生活です。