渋谷ジャムセッションVol.11
流しの写真屋 渡辺克己1965-2005 写真展
2月9日から4月20日まで、渋谷区神宮前の『ワタリウム美術館』で、「流しの写真屋 渡辺克己 1965-2005 写真展」が開催されている。
渡辺克己は、1960年代から“流しのカメラマン”として、夜の新宿に蠢く人々を活写し続けた写真家だ。その被写体には、ヌード嬢・ヤクザ・演歌師・ゲイボーイと、一癖あるいわくありげな異形の者たちがズラリと顔を揃えている。
彼は2006年、多くの仕事を残したまま65歳で永眠した。今回行われた展覧会は、渡辺克己が残した膨大な作品群が集まった、大回顧展である。
ワタリウム美術館の広い館内は、生前渡辺が残したモノクロームの紙焼きプリントで埋め尽くされた(写真1.2.3)。
1枚1枚の写真から、新宿に生きた人々の息づかいと体臭が伝わってくる。そして、人物の背後にさりげなく写り込んだ当時の街並が、わずか数十年前の新宿はこんなにも素朴で温もりのある街であったことを思い出させてくれる。
館内には遺品であるカメラ機材も展示された(写真4.5)。使い込まれてロゴが剥げ落ちたコンタックス、これには私も同業者の端くれとしてグッときた。
生前のインタビューが流れるモニター(写真6)。ここで語られるエピソードが、フリーのカメラマンとして志を持って生きることの、喜びと困難を伝えて実に面白い。
死ぬまで新宿にこだわり抜いた写真家・渡辺克己。個人的には、ここ数年の間に開催された数多くの写真展の中でのベストと言い切りたい。
<インフォメーション>
流しの写真屋 渡辺克己 1965-2005 写真展
ワタリウム美術館
東京都渋谷区神宮前3-7-6 tel 03-3402-3001
2008年2月9日ー4月20日 月曜日・休館
開館時間 11時より19時まで(毎週水曜日は21時まで延長)
入館料 大人1000円、学生(25歳以下)800円
会期中何度でも入場できるパスポート制チケット
高橋慎一(フォトグラファー)
98年よりフリーランス・フォトグラファーとして独立。現在、雑誌・書籍・CDジャケットなどで活躍中。また、ライターとして音楽関係、海外紀行、ドキュメント記事等を雑誌や書籍で精力的に執筆。