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休館中のBunkamuraで、アーティスト・西野達さん、evalaさんのインスタレーション作品展示

春恒例の「渋谷ファッションウイーク2024」が開幕し、休館中の渋谷・Bunkamuraで3月16日、アーティスト・西野達さんらのインスタレーション作品の一般公開が始まった。

▲解体工事中の旧東急本店。既に仮囲い上部に百貨店の面影はない

55年にわたり営業を続けてきた東急百貨店本店が2023年1月31日、閉店。その跡地には「Shibuya Upper West Project(渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト)」とし、2027年度の完成を目指して、高級ホテルなどから成る地上36階の複合施設が誕生することが決まっている。さらに隣接するBunkamuraも同時期に長期休館し、大規模改修工事を経て、2027年度中に営業を再開する見込みとなっている。

▲旧東急本店の再開発工事に伴い、オーチャードホールを除き長期休館中のBunkamura。今回、期間限定でインスタレーション作品展示の会場となる

今回の作品展示は、渋谷ファッションウイーク2024の開催に合わせて、休館中のBunkamuraを期間限定で利用した特別なプログラム。「ドゥ マゴ パリ」があった地下1階に広がる「吹き抜けスペース」で現在、アーティスト・西野達さんが手がけた大型のインスタレーション作品を上部から吊り下げて展示している。

▲2023年11月、ハチ公生誕100年を記念し1日限定で設置されたアーティスト・西野達さんが手掛けたアート作品「ハチ公の部屋」

西野さんといえば、シンガポールのマーライオン像を丸ごと部屋に取り入れた作品「マーライオンホテル」や、昨年11月に発表した忠犬ハチ公像をベッドルームに鎮座させた作品「ハチ公の部屋」などで知られる、国内外で活躍するアーティストの一人。

▲アーティスト・西野達さんの新作「ミラーボールファニチャー」。Bunkamura地下1階の吹き抜けスペースで、作品を吊り下げて展示している。

今回の新作のタイトルは「ミラーボールファニチャー」。一見、キラキラ輝く「人工衛星」のような形状にも見える。が、実際は1989年の開業以来、音楽や演劇、アートなど、日本の文化をけん引してきたBunkamuraで長年使用されてきた家具や備品などを素材とし、小さい鏡のタイルで表面を加工しミラーボールとして再構成した作品となる。

▲作品について説明をする西野さん

作品づくりについて、西野さんは次のように説明を加えた。

「35年間、Bunkamuraで使われてきた控室のロッカーやドゥ マゴの椅子。横向きのイーゼルは美術館などでポスターを立てていたもの、一番上の譜面台はオーチャードホールで使っていたもの……。長年、ここで使ってきた家具や什器に鏡を貼って、光で反射させていて、それを『文化(カルチャー)の光』と呼んでいる。作品そのものはそれほど大きくはないが、その文化の光が反射して、吹き抜けの隅々、ありとあらゆるところまで照らす」と、Bunkamuraの歴史を作品と拡散する光に込めたという。

逆さの椅子はドゥ マゴで長年使われてきたもの。

美術館などでポスター等を掲示してきたイーゼル(横向き)。

最上部にはオーチャードホールで使われてきた譜面台が立つ。

時折、吹く風で作品がミラーボールにように回転しキラキラと光を放つ。
吹き抜けから上昇する光は、Bunkamuraから天空へと舞い上がり、未来へと続くカルチャーの種子として世界へ拡散されていく。

 

▲休館と同時に閉鎖されたBunkamura Studioの入口

もう1カ所、Bunkamuraスタジオでもサウンドアーティスト evala(エバラ)さんのサウンドインスタレーション「Sprout(スプラウト)」が展示されている。Bunkamuraのレコーディングスタジオは一般的にあまり知られていないが、音楽業界ではアーティストたちが憧れるスタジオの一つ。90年代、2000年代のヒットチャートを賑わせた誰もが知る曲の数々が、ここでレコーディングされてきたのだという。残念ながら、休館と同時にスタジオは閉鎖されたが、今回、その跡地を使ったインスタレーションが行われている。

▲スタジオ内に無数のケーブル、小型スピーカーが床を覆う。中央に座るもは、同作品を手がけたサウンドアーティスト・evalaさん

作品を手がけたevalaさんは、次のように語った。

「スプラウトとは『発芽』という意味。機材などがすべて撤去されたスタジオ内に、音の精霊がやってきて、つたが生え出したり、草花が生え出したり、そこに新しい価値や息吹きみたいなものが生まれる、それを音で表現した作品。立体音響の作品なので、立ち止まり、目をつぶると、音が移動したり、体に音がまとわりついたり、自分の体の中で音がしたり…、刻々と音が変化していく。その音の変化を、じっくりと体験してほしい」

▲100円均一で大量購入したという小型スピーカー

スタジオ内には100均で購入した大量の小さなスピーカーが並び、無数のケーブルが木の根のように床を這っている。バチバチ、ブーといった電子的なノイズを集めて加工したというサウンドは、まるで自然の中に身を置いているかのような、水や風に近い音に聞こえるから不思議だ。人が動くことでケーブルに乗ってくる様々なノイズさえも、インスタレーション作品の中の音楽の一つとして捉えているようだ。

▲スタジオ内で目をつぶり、じっとその場で佇むと、体に音がまとわりつくような不思議な感覚を得ることができる

かつて、多くの名だたるアーティストたちが足跡を残し、歴史を刻んだ音楽スタジオ。既にその役割を終えた跡地で、かつての栄光を偲ぶとともに新たな音の芽吹きを感じてみてはいかがだろうか。

現在、長期休館中のBunkamuraで特別展示されている2つのインスタレーション。これらの作品は、同施設がこれまで果たしてきた役割に敬意を払い、かつ歴史的な価値を再評価するものと言えるだろう。

会期は3月24日まで。

渋谷ファッションウイーク2024春 INSTALLATION II
〇日時:2024年3月16日(土)〜24日(日)13:00〜20:00
※最終日は18:00まで
〇会場:Bunkamura 地下1階

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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