設置15年、岡本太郎の「明日の神話」大規模改修 改修費確保のためクラファンも
渋谷マークシティ2階の連絡通路内で一般公開される岡本太郎の巨大壁画「明日の神話」の大規模改修が2023年10月10日から始まる。その改修に向けて現在、壁面の補強や汚れの除去、再補彩、コーティングなどの改修費確保のためクラウドファンディングを行っている。
そもそも、岡本太郎の「明日の神話」とはどんな作品なのだろうか?
芸術家・岡本太郎(1911〜19969年)が生涯に残した絵画の中で最も大きな作品。1954年3月1日、米・水爆実験で被爆したマグロ漁船「第五福竜丸」をテーマとし、原爆がさく裂する瞬間を描いている。制作されたのは1968年〜1969年ごろ,メキシコに建設予定だった新築ホテルのロビーに飾るために描かれたが、依頼主の経営状態の悪化により、ホテルは未完成のまま人手に渡ってしまう。その後、壁画の所在が不明であったが、30年以上を経た2003年9月にメキシコ郊外の資材置き場で無惨な姿で発見される。故・岡本敏子さんを中心に「明日の神話」再生プロジェクトが発足し、2005年7月〜1年間にわたって修復作業が行われた。2006年から汐留や東京都現代美術館での特別公開後、恒久設置先に「渋谷区」が決定。2008年11月17日より、渋谷マークシティの連絡通路内で一般公開が始まった。
2008年から渋谷駅の連絡通路で一般公開され、今年でちょうど15年目を迎える。でもなぜ、1日30万人以上が往来し、ゴミやホコリが舞う駅に芸術作品をわざわざ展示しなければいけないのだろうか。そう疑問に思う人もきっと多いかもしれません。岡本太郎は生前から常々、「芸術は大衆のもの」という言葉を何度も口にし、芸術は暮らしの中でこそ活かさなければならないと考えていた。つまり、美術館やガラスケースの中で展示するのではなく、美術の敷居を上げず、誰もが目に触れられるパブリックスペースに作品を展示してこそ、真の芸術だと。こうした岡本太郎の意志や姿勢は、自身の作品をほとんど売らなかったことからも知られ、誰かに所有されることで一般公開が出来なくなることを懸念していたという。太郎が手掛けたパブリックアートは現在、全国70か所以上の場所に140点以上あると言われている。
渋谷駅の連絡通路は人通りの多さ、鉄道往来による振動、夏場の高温多湿など、アートの展示場所としては最悪の場所と言わざるを得ません。その一方で、通勤や通学など、1日30万人の人々が往来する日常的なスぺースだからこそ、太郎が望む最良の場所とも言えるのだ。こうした太郎の意志を反映する形で、同所での公開以降、NPO法人「明日の神話保全継承機構」を中心に渋谷の企業や商店街、区民、岡本太郎ファンなど、ボランティアの手によって清掃活動や補修などを行い、忠犬ハチ公像と同じく、渋谷のシンボルとなった同作品の維持・継承に努めている。
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さて設置から15年目を迎えた今、壁画の痛みは想定以上に進行していることが分かった。そこで、貴重な芸術作品を次世代に継承していくためには、抜本的なメンテナンスが必要であると判断し、2023年10月から複数年をかけて大規模な改修・修復を行うことが決まった。
初年度となる今年は、第一弾として10月10日から約40日間をかけて、右から4枚の亀裂・剥落・変色などの傷みを修復し、さらに壁画裏の環境改善等の作業も同時に進める 。作業は足場を掛けて行い、年に数枚ずつ右から順次仕上げていく予定だという。
今回の大規模改修にあたり、NPO法人「明日の神話保全継承機構」では改修費確保とともに、渋谷のシンボルである同作品の継承・維持に賛同し、同プロジェクトに多くの人々に参画してもらいたいという気持ちから、クラウドファンディングをスタートしている。
ちなみにクラウドファンディングのリターンは、『明日の神話』部分レプリカ(約 182cm × 91cm)、壁画裏面の銘板に名前を掲載、メンバーシップカードなど、金額に合わせて様々な返礼品が用意されている。2023年9月25日現在、支援総額は約1012万円(支援数532人)を数え、目標金額1800万円の56%に達している。期限は11月30日まで。
区民のみならず、「渋谷の街」が好きな人や、太郎さんを敬愛する人びとは、ぜひ参加してみてはいかがだろうか。最低金額5000円(学生限定3000円)から支援が可能だ。
「明日の神話」改修プロジェクト概要
〇主催 :特定非営利活動法人 明日の神話保全継承機構
〇特別協力:公益財団法人 岡本太郎記念現代芸術振興財団
〇後援 :渋谷区
〇作業 :
(1) 汚れと付着物の除去、亀裂・剥落等の補修、保護剤の塗布など
(2) 換気設備の強化等による背面空間の環境改善
〇公式 :https://taro-okamoto.or.jp/news/asunoshinwa/
クラウドファンディング概要
〇期間 : 2023年9月22日(金)〜11月30日(木)
〇寄付金額: 3,000円〜10,000,000円
〇返礼品 :
「壁守」メンバーシップカード、
書籍『明日の神話1967-2023』特装版、
『明日の神話』レプリカ各種など
〇サイト :
https://camp-fire.jp/projects/view/700661?utm_campaign=cp_po_share_c_msg_mypage_projects_show
Editorial department · Fuji Itakashi
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