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「渋谷区ふれあい植物センター」リニューアルオープン カフェ併設の「農と食の発信拠点」へ

設備の老朽化による大規模工事に伴い、2021年12月から長期休館中だった「渋谷区ふれあい植物センター」(渋谷区東2丁目25−37)が2023年7月29日、リニューアルオープンした。

「育てて食べる」をコンセプトとし「農と食の発信拠点」目指す新たな植物園とは、どんな施設なのだろうか?

もともとの「ふれあい植物センター」とは?

2005(平成17)年、渋谷清掃工場の電気を使う還元施設として開園。地上4階建ての施設で、1〜2階は清掃工場の余熱を利用した温室の吹き抜け。熱帯植物を中心に約500種類の植物を育てていた。ホタル観賞会などイベントや企画展示にも力を入れ、「日本一小さな植物園」として区民に親しまれてきた。開園から16年、設備等の老朽化が進むなか、大規模なリニューアル工事に伴い、2021年12月28日をもって長期休館に入った。

約1年半の長期休館を経て、7月29日にリニューアルオープンした「ふれあい植物センター」。従来の植物園は、ごみ処理の余熱を利用した温室の中で、国内ではあまり見ることのできない珍しい熱帯の植物などを中心に育てていた。が、新たに生まれ変わった同センターでは、単なる観葉としての植物ではなく「育てて食べる」コミュニティ型植物園とし、農と食にまつわる知識や技術が学べ、体験できる場にしていくという。

ふれあい植物センターを運営するのは?

同施設は、渋谷区から運営受託する特定非営利活動法人アーバンファーマーズクラブが運営する。同クラブの代表で、ふれあい植物センターの園長は以前、渋谷文化でもインタビュー取材をしたことがある小倉崇さん。
▲渋谷の野菜作りの活動などに取り組む小倉崇園長
2015年に道玄坂のライブハウス「O-EAST」屋上に畑を開設し、書籍「渋谷の農家」を出版。その後、「URBAN FARMERS CLUB(アーバンファーマーズクラブ)」の活動を始動し、渋谷川沿いに大型プランターを設置し、様々な野菜づくりや、ホップを育て渋谷産のクラフトビールづくりにチャレンジするなど、ユニークな取り組みを行っている。

●小倉崇さんインタビュー(2017年1月31日記事)
https://www.shibuyabunka.com/keyperson/?id=144

では4階建ての同施設の各フロアの構成を具体的に見ていこう

ます、入口カウンターで入場した後、一番初めに目にするのは映像が投影されるサイネージ。小倉園長が同センターが担う役割や育てている植物などを映像を通じ紹介してくれる。

同サイネージの右側に進むと、ライム、ゆず、レモンなどの柑橘類、マンゴーやパイナップル、グアバやココヤシ、バナナなどの南国のフルーツを中心に栽培する1階フロアが広がる。

▲ゆず、ミラクルフルーツ、ライムなどの植栽。▲ライムの実▲赤々としたミラクルフルーツ▲グアバの実

リニューアル以前と同じく、施設の奥は天井高で外光がまぶしい開放感あふれる温室となっている。

また施設周囲には、ラベンダーやミント、レモンバーブなど、ハーブを育てるガーデンなどがある。

▲円形のテーブル。その上には「佐藤錦」が植えられている。あと数年もすれば、ここにサクランボの実がつくことだろう。

さらに先ほどの入口を左側に進むと、植物育成用ライト(紫色LED)に照らされた「水耕栽培用の室内型菜園」をガラス越しに見ることができる。
室内栽培で不足する光量と波長をLEDで補い、光合成をコントロールし促進し植物を成長させている。ちょっと怪しい雰囲気を醸し出しているが、天候や病気などに左右されないテクロノジーを活用した「未来の野菜工場」といえ、農や食の新しい取り組みも体感できる。
▲虫食いのないきれいなチンゲン菜が育っている

同水耕栽培では、サニーレタス、ルッコラ、小松菜、チンゲン菜など葉物野菜を中心に育てている。

園内全体がテラコッタのような優しい風合いでデザインされている。1階フロアの中央には、大きなキノコのような形の物体がある。下のほうを見ると、小さな穴が空いているのが分かる。どんなスペースなのか?

穴の中を覗いてみると、反対側まで小径がつながっている。大人が四つん這いになってようやく入れるくらいの大きさだ(無理して入ると、出られなくなるのでご注意を)。この穴を見つけた子どもたちは、きっと大はしゃぎで出入りを何度も繰り返すに違いない。遊び心に富んだ仕掛けだ。

2階フロアには「カフェスペース」がある。水耕栽培で育てた葉物野菜を使ったサラダや、ピザ、ドリンクなどを提供し、実際に食べて楽しめる場となっている。
またカフェカウンターでは、収穫したハーブを水出しした「ハーブウォーター」を無料で提供している。その時々でレモンバーブ、ミント、ローズマリーなどハーブの種類は変わるものの、自然の香り、清涼感あふれる冷たいハーブウォーターが楽しめる。
▲無料で提供している「ハーブウォーター」

現在、同カフェはランチ終了後の15時で営業を終了しているが、9月からは夜9時ごろまで営業を続け、ディナーが楽しめるようになるという。

同じく2階には、展示企画やイベントなどを行う「ライブラリー」「イベントルーム」がある。
▲2階のライブラリースペース。現在、企画展「牧野富太郎と渋谷の植物」(2023年8月31日まで)が開催中

オープンから夏休み中の8月31日までは、企画展「牧野富太郎と渋谷の植物」が開催されている。現在、NHK朝ドラで放映中の「らんまん」のモデルで、「日本の植物分類学の父」とも呼ばれている牧野富太郎博士。実は渋谷とも非常にゆかりが深い。牧野博士は 駒場にある東大植物学教室で助手をしており、現在の渋谷区桜丘町や神泉駅周辺を転々としながら暮らしていたという。
▲「らんまん」劇中でも植物標本を制作するシーンが度々あるが、牧野博士の繊細な配置や手仕事を直に感じることができる。今回の企画展では牧野博士が渋谷で採取した植物標本などの展示が行われている。牧野博士が自ら作った標本がどんなものだったのか、ぜひこの機会に足を運んで見てほしい。

3階フロアはギャラリースペース。講演会やトークイベント、上映会などに利用可能な多目的スペースとなっている。イベントなどがないときは、休憩スペースとしても使える。

4階フロアは、屋上ファームへの出入口。屋上ファームではお茶やホップなどの栽培、またミツバチの養蜂も行っている。イベント時などを除き、通常一般開放はしていない。

▲今後、収穫時期には同屋上スペースで「収穫祭」などもきっと行われることだろう。

ざっと各フロアの構成を見てきたが、今後同施設では一緒に植物を育てていくコミュニティメンバーを募集するほか、家庭菜園講座や生ごみを堆肥化するコンポスト講座など、循環を実践するワークショップやイベントなどを随時行っていくという。

「アーバンファーミング」という言葉の通り、ビルの屋上やベランダ、空き地の利用など、都会のなかでどう「農」と関わっていくのか。決して田舎暮らしをせずとも、都会の暮らしの中で野菜を育て、植物や自然の恵みや豊かさを実感するヒントが、ここで得られるかもしれません。夏休み期間中にお子さんと一緒にのぞいてみてはいかがだろうか。自由研究のテーマも見つかるかもしれません。

入場料は100円。開館時間は10時から18時(17時半までに入場)。月曜日は定休。

愛撫廠中心
〇住所:渋谷区東2-25-37
〇電話:03-5468-1384
〇時間:10時〜18時(入園受付17時30分まで)
〇料金:100円、年間フリーパスあり、未就学児、60歳以上の方は無料
〇休園:月曜日、年末年始(12月29日〜1月3日)
〇公式:https://sbgf.jp/

編輯部 - Fujiitakashi

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