ヴェンダース作品で役所さんが最優秀男優賞 今後「渋谷の公共トイレ」に注目が集まる!?
仏・カンヌ映画祭で現地時間5月27日、コンペティション部門に出品された作品「PERFECT DAYS」(原題)に出演した俳優・役所広司さんが最優秀男優賞を受賞した。2004年、是枝裕和監督の作品「誰も知らない」に出演した俳優・柳楽優弥さん以来、19年ぶり2人目の快挙となる。
さて、「PERFECT DAYS」のメガフォンを取ったのは、『パリ、テキサス』(1984)、『ベルリン・天使の詩』(1987)、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(1999)などの作品で、世界的に知られるヴィム・ヴェンダース監督だ。小津安二郎監督を敬愛し、日本好きとして知られる。かつて映画祭のために訪れた東京の街で、小津映画の風景を求めて16mmのカメラを回しながら、1本のシネ・エッセイ「東京画」(1984年)を制作している。パチンコや竹の子族など当時の東京の風景をヴェンダース監督独自の視点で切り取り、日本への愛情が詰まった作品として知られる。
今回カンヌに出品された最新作も「東京画」同様、舞台は東京だ。東京・渋谷で公共トイレの清掃員として働く平山(役所広司)は、淡々と過ぎていく日々に満足している。同じように見える毎日だが、彼にとっては常に新鮮な小さな歓びに満ちている。昔から聴き続けている音楽、休日のたびに買う古本、小さなフィルムのカメラで撮影する木々など……。あるとき彼は、思いがけない再会をする。それが彼の過去にどんな意味を持つのか――。清掃員の平山という男の日々の小さな揺らぎを丁寧に紡ぎながら、ストーリーは静かに進行していく。
共演は、平山のもとに突然訪れる姪役に新人の中野有紗さん。その母、平山の妹に麻生祐未さん。平山と奇妙なつながりをもつホームレスにダンサーの田中泯さん。同僚の清掃員に柄本時生さん。平山が休日に訪れる居酒屋のママに石川さゆりさん。その元夫に三浦友和さんなど、錚々たる面々がキャストに名を連ねる。
ロケ―ションは、渋谷区と日本財団が進めるプロジェクト「THE TOKYO TOILET」 で設置された「渋谷の公共トイレ」。同プロジェクトは「暗い・汚い・臭い・怖い」というイメージを払拭させるため、建築家の隈研吾さん、伊東豊雄さん、クリエイティブディレクターの佐藤可士和さん、インダストリアルデザイナーのマーク・ニューソンさんなど世界で活躍するクリエイターを起用し、性別、年齢、障害を問わず、快適に使用できる公共トイレへと改修を進めてきた。
<関連リンク> プロジェクト「THE TOKYO TOILET」
2018年10月に始まった同プロジェクトはコロナ禍を挟み、当初よりも計画が遅れたものの、2023年3月までに計17カ所全てを設置し完結している。
コロナ禍が終息しつつある現在、日本には大変多くの外国人観光客が訪れている。その旅行者たちの多くが驚く日本文化の一つが、「多機能トイレ」だ。ある意味、トイレは日本が世界に誇る「おもてなし」文化の象徴とも言える。
今回のヴェンダース最新作は、プロジェクト「THE TOKYO TOILET」を世界にアピールする絶好の機会となる。今後、国内外で配給が増えていけば、マップ片手に「渋谷の公共トイレ」巡りをする外国人観光客がきっと増えていくことだろう。
国内での配給や公開は今のところ未発表であるが、上映が待ち遠しい。
『PERFECT DAYS』(原題)
上映時間:124分 / 製作:日本 / 日本配給:未定/© 2023 MASTER MIND Ltd.
〇キャスト:
役所広司、柄本時生、中野有紗
アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり
田中泯、三浦友和、他
〇監督:ヴィム・ヴェンダース
〇脚本:ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬
〇製作:柳井康治
〇エグゼクティブ・プロデューサー :役所広司
〇プロダクション Wenders Images Wenders Foundation Spoon
編集部・フジイタカシ
渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。