松濤・戸栗美術館で「柿右衛門」の五色 GWに「シェ松尾」とのコラボ企画も
ゴールデンウィークを控え、渋谷・松濤の陶磁器専門美術館「戸栗美術館」で4月8日より、「『柿右衛門』の五色 ―古伊万里からマイセン、近現代までー」が始まる。
「渋谷=若者の街、にぎやかな街」のイメージが強いが、戸栗美術館がある松濤は高級住宅地であり、静かで落ち着いた雰囲気が漂う。さらに「Bunkamuraザ・ミュージアム(6月から長期休館予定)をはじめ、松濤美術館やギャラリーTOMなど、近い距離に美術館やギャラリースペースが集積し「文化度の高い大人のエリア」でもある。
1987年に開館した同館は、実業家・戸栗亨氏が蒐集した伊万里や鍋島などの肥前磁器や中国、朝鮮の陶磁器を中心に約7000点を収蔵し、国内でも数少ない陶磁器専門の美術館として焼き物ファンに根強い人気を誇る。
今回の企画展示のテーマは、絵付けに特徴のある佐賀・有田磁器の中でも一際高い人気を持つ「柿右衛門(かきえもん)」。焼き物ファンでなくてもその名を知る「柿右衛門」の特徴といえば、「濁手(にごしで)」と呼ばれる純白の素地に、赤・青・緑・黄・金の5色の彩色を基本として絵付けを施した「柿右衛門様式」である。1670年代の有田でその様式が完成し、本格化する輸入を背景にドイツの名窯「マイセン」をはじめ、ヨーロッパ各地の窯元でその写しが製作され、人気を博す。その後、中国の磁器輸出が本格化し市場競争が起こったことで、輸入が減少。国内情勢や様式変化などによって、濁手の製作は途絶えていく。濁手の復興が待ち望まれる中、戦後になって12代・13代酒井田柿右衛門父子が試行錯誤を重ねて「濁手」の復元に成功し、それが現代まで受け継がれる。
同展では、世界を魅了した「柿右衛門様式」の素地や絵具の「色」に着目し、色絵作品約80点を展示。江戸時代の伊万里焼とマイセン、近現代の「柿右衛門」作品もそろえる。
各会場の展示は、特別展示室「濁手 ― 成立と模作、復活 ―」、第1・2展示室「彩色 ― 基本の5色とバリエーション ー」、第2展示室「復興と継承 ― 13代から15代まで ー 」で構成。特別展示室では、「濁手素地」の純白を目標とした18世紀前半のドイツ・マイセンと、13、14代酒井田柿右衛門の作品が一緒に展示され、白色素地を見比べることができる。
第1・2展示室では、柿右衛門様式の典型作品の「五色」である赤・青・緑・黄・金のバリエーションを紹介。基本色5色のほか、茶や紫も使用するパターンや、黄や金を除く4色または3色、染付による青の併用パターンなども見られる。
第2展示室ではもう一つ、復興と現代に至るまでの継承に関するコーナーも設置。1971年、「柿右衛門(濁手)」は国の重要無形文化財に総合指定を受け、その技術は現在まで受け継がれている。13代から15代まで、各代で表れている色の個性、色に対する思いを作品と共に紹介する。
併せて同展開催中、4月15日・6月10日(各日14時~、約45分間)に展示解説、5月28日(14時〜、約45分間)に15代酒井田柿右衛門氏の特別講演会などが開催される。
さらにゴールデンウィーク期間中、松濤の人気フレンチレストラン「シェ松尾・松濤レストラン」とコラボレーションを行い、同館での鑑賞後、佐賀県産の食材を使った特別メニューが楽しめる「アート&イ―ト」を実施。もともと松濤は、佐賀鍋島藩主の鍋島家の所有地で、佐賀県との関係が深いエリア。佐賀の焼き物を楽しんだ後、佐賀の食材を、佐賀とゆかりのある地で楽しむ。そんな洒落た連休を過ごしてみてはいかがだろうか。開催日は5月3日〜5日(各日10時半/11時/11時半開始)。参加費2万円(税込)、各日各回先着5名まで(要事前予約)。
展示の会期は6月25日まで。
「柿右衛門」の五色 ―古伊万里からマイセン、近現代まで―
〇会期:2023年4月8日〜6月25日
〇時間:10:00〜17:00(入館受付は16:30まで)
※金曜・土曜は10時〜20時(入館受付は19:30まで)
〇会場:戸栗美術館(渋谷区松濤1丁目11−3)
〇休館:月曜日・火曜日
〇料金:一般1,200円/高大生500円 ※中学生以下は入館料無料
〇公式:http://www.toguri-museum.or.jp/
アート&イ―ト 戸栗美術館×シェ松尾・松濤レストラン
〇開催:5月3日・4日・5日 10時半/11時/11時半開始
〇場所:戸栗美術館、シェ松尾・松濤レストラン(渋谷区松濤1丁目23−15)
〇食事:佐賀県産の食材を使った特別メニュー(ワンドリンク付き)
〇料金:2万円(税込)
〇予約:ウェブサイト(https://airrsv.net/toguri-event/calendar/)
または電話(03-3465-0086)で申し込み
編集部・フジイタカシ
渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。