東急本店閉店企画「昭和青春グラフィティ」展 「昭和」テーマに流行などを振り返る
2023年1月31日(火)に営業終了する「東急百貨店本店」4階特設スペース及び7階MARUZEN&ジュンク堂書店イベントスペースで現在、55年間の感謝を込めた特別企画として展示「渋谷・東急本店 昭和青春グラフィティ」を開催している。
1967(昭和42)年11月1日、渋谷区立大日向小学校跡地に開業した「東急百貨店本店」。2023年1月31日をもって55年間の歴史に幕を下ろすことに伴い、閉店までの期間、様々な特別企画を催している。中でもユニークな企画の一つが、55年の歩みとともに青春を過ごした昭和40年代から60年代の人びとに向けて展開する、「生活」「流行」「文化」の3つのテーマで「昭和」を振り返る同企画だ。若者カルチャーや流行、人気アイドル、ファッション、玩具などを、懐かしい写真や商品展示で紹介している。
展示内容の一部を紹介したい。まず本店1階を入って直ぐのところには、ロボットアニメの金字塔である「マジンガーZ」の等身大フィギュアが出迎える。幼少期にマジンガーZの超合金で遊んだ人もきっと多いだろう。一気にわくわく感が高まる。
4階の特設スペースでは、「生活(ライフ)」「流行(トレンド)」をメインに展示。昭和の子どもたちの生活を垣間見るコンテンツとして、当時の「子ども部屋」を会場内に再現している。まず男の子の部屋から見ていこう。
おそらくは中学、高校生くらいの男の子の部屋だろうか。壁には当時のトップアイドルである南野陽子さん、中森明菜さんのポスターが貼ってあり、昭和レトロを感じさせるガラステーブルの上には、セクシーグラビア誌「写楽」が……。親に見つかりやすいテーブルの上に堂々と置いておくことはないと思うが、当時、思春期の男の子なら何冊も隠し持っていたに違いない。
テレビは当然ブラウン管で、その隣にはファミコン、数字がパタパタ変わる時計、ラムちゃんのフィギュア、貯金箱とどれも見覚えのあるものばかり。ゴミ箱は「LARK」で、ファッションは「スタジャン」、バッグは「マジソンスクエアガーデン」。テレビ下の本棚には「ポプコム」「BASICマガジン」などのバックナンバーが並び、簡単なゲームプログラムを自ら打ち込んで遊んでいた当時の男の子たちの姿を思い出す。
同じコーナーに、同世代の男の子たちが幼少期に目を輝かせて遊んだ玩具も展示。キン消しやチョロQ、野球盤、ファミコンソフトなど懐かしのおもちゃが数多く並ぶ。
一方、女の子の部屋はどうだろうか。男の子に比べて、圧倒的にアイテムが多い。壁には「シブがき隊」のポスター、ベッド周りにはペコちゃん、アラレちゃん、けろけろけろっぴ、あらいぐまラスカルなど、とにかくキャラクターものが多い。半開きの洋服タンス上には、どこの家にも必ず1個はあった「ルービックキューブ」(ほとんどがバッタもんだったが)。テーブルの上には少女漫画「LaLa(ララ)」、ドーナツ盤の「ポータブルレコードプレーヤー」、「アーノルドパーマー」のバッグなどが所狭しと散乱、もし部屋にお母さんが来たら「片づけなさい!」と怒られることは必至。さらに本棚には「生徒諸君」「エイリアン通り」「CIPHER」など、当時の人気少女コミックがずらりと並び、パソコンやグラビア誌の多かった男の子の部屋とは対照的である。
さらに女の子たちが幼少期に遊んだ玩具もショーケースに展示。「ピンクレディーのおしゃれショルダーバッグ」「聖子ちゃんのドレミマイク」「SEIKOちゃん人形」など、当時は人気アイドルを大々的に宣伝イメージに使ったおもちゃが数多くあった。
4階の特設スペースにはもう一角、「流行(トレンド)」のコーナーがある。ファッションや当時の新製品、青春アイドルなどの展示で構成。ネットもSNSもない時代、若者たちの情報収集源は、ハマトラ、ニュートラなどのブームをけん引した「JJ」をはじめ、「an・an」「CanCam」「POPEPYE」「HOT DOG PRESS」などの雑誌だった。当時の若者たちはこぞって、雑誌をファッションのお手本としていた。
ピンクハウスやオリーブ少女、渋カジ、JJファションに身を包むトルソー
70年代アイドルの象徴である山口百恵さんが結婚引退し、松田聖子さんがデビュー。同じ年に田原俊彦さん、近藤真彦さんが歌手デビューし、野村義男さんと3人で「たのきんトリオ」が人気に。その後、日本テレビ「スター誕生!」から小泉今日子さん、中森明菜さんが輩出、さらに早見優さん、堀ちえみさん、石川秀美さんなど「花の82年組」と呼ばれるアイドル当たり年が到来。以後、南野陽子さんや中山美穂さんらが続き、さらに秋元康さんプロデュースの「おニャン子クラブ」が社会現象を巻き起こした。渋谷ではおニャン子たちが着ていた「セーラーズ」の直営ショップに大行列が出来た。
アイドルに関連するパンフや映画チラシ、レコードなどがショーケースに展示。松田聖子さんなど、会場BGMには当時ヒットしたアイドルソングが流れている。
泉麻人さんの寄稿及び、当時、道玄坂恋文横丁にあった「ミウラ&サンズ(現SHIPS)」で泉さんご自身が購入したコンバース チャック・テイラーとミッキーマウスのニットも展示。若者はアメカジに夢中だった。
子どもたちが憧れた「昭和ヒーロー」。ウルトラマンや仮面ライダーをはじめ、キカイダー、怪傑ズバットなどの「特撮変身もの」。マジンガーZやコンバトラーVなどの「ロボットアニメ」など、当時の男の子たちは、ヒーローの超合金やフィギュアを片手に「ウイーン!!」と言いながら自分だけの空想の世界に浸っていた。
そのほか、ウォークマンやディスクマンなど、「音楽を街に持ち出す」という新しいカルチャーを生んだ当時の新製品も展示。今日、スマホで音楽が聴く時代を迎えているが、その原点を垣間見ることができる。
東急本店55年の歴史は、まさに「昭和」世代の青春そのものだったといえるかもしれません。当時をリアルタイムで過ごした世代にとっては、自分の人生や記憶と重ね合わせて楽しめる。一方、当時を知らない20、30代の若い世代にとっても、「昭和レトロ」は「より新鮮に」「より魅力的に」受け止めて楽しむことができるのではないだろうか。
会期は12月25日まで。
渋谷・東急本店 昭和青春グラフィティ
〇日時:〜2022年12月25日(日)
〇会場:
第1会場 4階 特設スペース
第2会場 7階 MARUZEN&ジュンク堂書店イベントスペース
〇入場:無料
※展示のみで物品等の販売はなし。
編集部・フジイタカシ
渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。