アーティスト・角文平さん 個展「宇宙の箱舟」 「宇宙移住計画」テーマにした作品群
「宇宙移住計画」をテーマにしたアーティスト・角文平さんの個展「宇宙(そら)の箱舟(はこぶね)」が2022年5月8日まで、渋谷ヒカリエ8階・CUBE1・2・3で開催されている。
フランスの作家ジュール・ヴェルヌが、小説「月世界旅行」を発表したのは1965年。「巨大な大砲を製造し、人間の乗った砲弾を月に撃ち込もう」という奇想天外なストーリーは、人類に新たなインスピレーションを与えるきっかけとなったが、当時は実現不可能な絵空事として捉えられていた。そんな空想科学が、現実味を持ち始めたのは、米ソ冷戦に突入してから。互いの技術力を競い、宇宙開発に力が注がれる中、ジュール・ヴェルヌの「月世界旅行」から100年余りを経た1961年、ソ連のガガーリンが人類初の宇宙飛行を成功。1969年には、アメリカがアポロ11号の月面着陸を果たすなど、科学技術の発展が人類と宇宙の距離を一気に縮めたと言っても過言ではない。さらに昨今では、前澤友作さんが民間日本人飛行士として初となる12日間の宇宙滞在を果たし、スペースXのCEOイーロン・マスクさんが「火星移住計画」を発表するなど、単なる「宇宙旅行」ではなく、「宇宙移住」も夢物語ではない時代がいよいよ近づいている。
民間人が宇宙に到達できる時代となった中、アーティスト・角文平さんの今回の個展では「そう遠くない将来に、地面を含む住環境の基盤(地盤)が怪しくなる世界が訪れることを仮定」し、空想科学的な解決策として示した「家」に関する作品群を展示公開している。
展示スペースは3つから構成、入口を入った中央スペースには、工事途中のマンションの鉄鋼がむき出したような成人男性の身長くらいの構造物が立つ。格子状の鉄骨の中には、一戸建ての家が無数に連なっている。マンションのような密集構造ながら、隣同士は一定の距離が空けられ、各家のプライベートが保たれている。長く定住することを考えると、宇宙ステーション内では息が詰まるだろう。酸素や水、食料など生きるために必要なライフラインを共有しやすい集合住宅でありながらも、同時に一軒家としての機能も併せ持つハイブリッド型が宇宙空間では求められているのかもしれない。
ちなみにこの集合住宅から漏れてしまった住宅は、太陽エネルギーを効率良く得られる場所を求めてか、まるで遊牧民のように常にソーラ―パネルを広げて移動しながら自給自足の生活を送るしかないようだ。
展示スペースの右奥には、宇宙移住を実際に行ったファミリーとオンラインで中継を繋ぎ、そのファミリーから移住生活について詳しく話がうかがえるボックス が設けられている。現在、宇宙移住を本気で考えている人は、彼らに相談してみるのもいいだろう。
一方、展示スペースの左奥は、「酸素」製造のアイデアが詰まった作品が展示されている。宇宙移住の一番の課題は、継続的な酸素の供給である。その解決策として、会場には「ベンゼン環」のような六角形の地面から生い茂る木が横たわる。その六角形の地面の下には、木々の栄養源となっている灯油缶がつながっている。植物はCO2(二酸化炭素)を吸収し光合成を行い、酸素を産出する。現在、地球上では地球温暖化を防ぐため、カーボンニュートラルが全世界的に叫ばれているが、空想宇宙においては化石燃料から植物を介して酸素を得ることも可能となっている。また、六角形の地面を複数合体していけば、大量に酸素を発生させる「森」を人工的に作ることもできそうだ。
そのほか、会場では空想科学とアートを融合したユニークな作品群が公開されている。決して非現実的と侮るなかれ、100年先の未来には、アーティスト・角さんの発想力が、ジュール・ヴェルヌの「月世界旅行」のように実現化しているかもしれない。
角文平 個展 「宇宙の箱舟」
〇会期:2022年4月22日(金)〜5月 8日(日)
〇時間:11:00 - 20:00※最終日は18:00まで
〇場所:CUBE
是費用:免費入場
〇主催:株式会社アートフロントギャラリー
編輯部 - Fujiitakashi
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