ヒカリエデッキ「壁面アート」第2弾公開 淺井祐介さんの手描きペイント
渋谷ヒカリエ3・4階と接続する歩行者デッキ「ヒカリエデッキ」で4月1日、壁面アートプロジェクト第2弾作品として、アーティスト・淺井祐介さんが手掛けたアート作品の公開が始まった。
昨年7月に供用を開始した「ヒカリエデッキ」は、渋谷ヒカリエ北側3・4階の外壁に沿った、東京メトロ銀座線の直上スペースを活用した新たな歩行者動線。渋谷ヒカリエの地下3階(地下鉄渋谷駅)から、宮益坂上方面へのアクセスを簡便にしている。また、将来的には山手線の頭上を越えて、渋谷ヒカリエと渋谷マークシティを結ぶ空中回廊「スカイウェイ(仮称)」の開通も予定され、壮大な渋谷駅周辺の再開発事業の一環として期待が寄せられている。
「スカイウェイ 」開通までにはしばらく時間がかかるが、渋谷ヒカリエで「生活文化の情報発信・活動拠点」「まちに開かれた憩いの場」となることを目指し、昨年10月から同所で「壁面アートプロジェクト」をスタートしている。
第1弾ではアーティスト・大野智史さんが制作を担当し、「樹海でレイヴ」(上記写真)という作品を仕上げた。
・ヒカリエデッキに高さ6メートルの「壁面ア―ト」登場 歩行者に刺激を(2021年10月19日)
前回から半年を経て、今回の第2弾では、様々な素材を使ったドローイングや巨大壁画、泥絵などの作品を手掛けるアーティスト・淺井裕介さんが制作を担当。高さ約3メートル×横約10メートルの壁面アート作品となる「野生を運び出せ」を完成させた。渋谷ヒカリエの外壁にインクジェットで出力したブラックシートを貼り、その上から少量の土を混ぜたアクリル絵の具で、すべて手描きで作品を仕上げている。
作品づくりに要した時間は、淺井さんとアシスタントを含めて5人で約10日間にも上ったという。マンパワーをフルに活用した非常に贅沢な作品といえるだろう。
淺井さんの作品の多くは、その場所に宿る生命力や、命の輝きを可視化することを試みている。今回の作品では「どこからか流れてきて、どこかへ流れていく渋谷の人の流れの渦」をイメージし、流れのある絵にしたかったという。作品中央には牙や複数の目があるワニのような大きな生き物がいて、その得体の知れない生き物を「ワッショイ、ワッショイ」と運ぶような人びとの姿も見えるが、これは何を意味しているのだろうか。
作品制作について、淺井さんに詳しくうかがった。「(作品の中心に)手足がなく自分の意志では動けない一番大きな生き物がいます。この巨大な生き物は、神輿のように担がれてどこへ連れて行かれるか分からないのですが、別に不安そうでも、先行きを案じる様子もありません。むしろ威張っているような雰囲気で、どこへ連れて行かれても、運ばれた場所で根を張って大きく育っていく……、そんな落ち着きや安定感ある生命力をイメージして描いた」という。
新型コロナやウクライナ情勢など、現在私たちは自分たちでどうすることも出来ない、先行きの見えない事態に直面している。まさに手も足も出ない状況ではあるが、落ち着いて、冷静に物事を捉えて判断して歩みを進めていかなければならない。勝手な解釈かもしれないが、そんなポジティブなメッセージを同作品から感じ取ることもできそうだ。また、大きな生き物が運ばれる、進行方向の先には渋谷駅がある。今後、再開発で大きく変わっていく街に対する、不安と期待が入り混じる思いもきっとそこに込められているのだろう。
最後に淺井さんは「細かい筆で細部も描いているので、大きな絵の中に小さな絵がいっぱいあります。これから季節も良くなり、光の当たり方で見え方も変わってくるので、いろんな時間に来て眺めてもらえると楽しいと思います」とコメントを寄せた。
大きな壁面アート外の場所にも、淺井さんの遊び心に富んだ「隠れキャラ」的なペイントをいくつか見つけることができる。作品の掲出期間は10月末ごろまでの予定なので、それまでに何度か足を運び、隈なく手描きで描いた作品の美しさや面白さを味わってみてほしい。
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