JR渋谷駅・埼京線ホームの移設、人の流れはどう変わる?
埼京線や湘南新宿ラインなどのホームがある「JR渋谷駅新南口」は、渋谷駅とはいえ、駅中心部から約350メートルも離れている。「渋谷駅前=ハチ公前広場、スクランブル交差点」とイメージしている旅行者が誤って新南口改札で降りてしまったら、それこそ悲劇である。実際、新南口改札側にある埼京線ホームは、成田エキスプレスの乗降場にもなっているため、コロナ以前は訪日外国人観光客がハチ公口を見つけられず、右往左往する姿をしばしば目にした。
そんな“陸の孤島”であった埼京線ホーム(3・4番線)に大きな変化が起こった。山手線ホーム(1・2番線)の隣に並列化する形で埼京線ホームが移設され、6月1日より本格的に供用が始まったのだ。
新型コロナに伴う自粛要請が明け、久々に渋谷にやってきたビジネスワーカーの多くが渋谷駅の大変身にきっと驚いたことだろう。もしかすると、いつもとは異なる見慣れない風景に迷った人もいるかもしれない。
渋谷駅の100年に一度の大規模再開発の一環であるが、このタイミングでの移設は、今夏の五輪開催を見込んでのこと。ホームの移設・並列化に伴い、山手線と埼京線、湘南新宿ラインの乗り換えの利便性を高め、国内外からの来街者増加に対応する。コロナ感染拡大で残念ながら五輪開催は延期となったが、今まで不便、分かりにくいと言われてきた渋谷駅が使いやすくなるのは大いに歓迎である。
ホームの併設化はメリットが多い一方、問題点もいくつかある。一つは将来的に新南口改札が廃止されると、渋谷3丁目・東方面へのアクセスが不便なるという点だ。
もちろん渋谷ストリーム、渋谷スクランブルスクエアの開業に伴い、縦動線をつなぐアーバン・コアや東口歩道橋の架け替え、渋谷川沿いの遊歩道も整備され、駅中心部から渋谷3丁目、東方面へのアクセスは、以前よりも景観を含めてだいぶ快適になった。が、新南口エリアにオフィスを構える企業で働く人びとや、学生にとっては、駅からの歩行距離や時間が以前よりも余計にかかることになるだろう。
旧埼京線ホームには線路側に柵が設置され、新ホームから新南口改札口をつなぐ通路として、しばらくはそのまま利用ができるという。ただ、新ホームから新南口改札まで約350メートル、ハチ公口、中央改札口から出て歩くか、新ホームから新南口改札口まで歩くか、いずれにしても歩行距離にあまり違いがないかもしれない。強いていえば、新南改札口は混雑が少ないのが利点。新南口改札の廃止まで、渋谷3丁目、東方面へのアクセスはこのルートがおすすめだ。
さらに一番懸念されるのが、今まで2つのホームで分散化されていた乗降者が集約されることで、通勤ラッシュ時の駅の混雑がより一層高まるのではないかという点である。JR渋谷駅の1日当たりの平均の乗降客数は、370,856人(2018年度)を数えるが、 この数は山手線ホーム(1・2番線)と、新南口側の埼京線ホーム(3・4番線)の利用者を合算した人数。今回の移設に伴い、37万人の乗降客数が駅中心部に集中することになる。今年、銀座線の新ホームの完成以降、井の頭線とJR山手線中央改札間の朝の混雑が問題視されていたが、埼京線の並列化で人の流れがどう変化するのか心配だ。
もちろん乗降客数の増加を見込み、ハチ公改札口および1階の駅構内も大幅なリニューアルを行っている。かつて券売機などが並び、ハチ公前広場と渋谷駅東口を貫通していた通路は閉鎖し、そのスペースには埼京線の3、4番線ホームへ通じる通路を新設。多くの乗降客や乗り換え客の移動に応えられるスペースが確保されている。
一方で交番横にあった改札口は撤去され、ここにハチ公前広場から東口(渋谷ヒカリエ方面)へ抜ける新しい貫通通路を設置。
券売機、ハチ公改札は通路沿いに新設され、動線も広く使い勝手は悪くない。
ハチ公改札から東口方面に抜けると、右手(写真の左上)に地下鉄や、渋谷スクランブルスクエア、渋谷ヒカリエへ通じる地下出入口がすぐに見える。JRからの乗り換えや移動にも便利だ。
ただ非常事態宣言が解除されたばかりで、人出は本来の数ではない。かつての渋谷の賑わいが戻ったときに新しい駅がどう機能するのか、気になるところだ。
編集部・フジイタカシ
渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。