11月から大きく変わった「渋谷駅地下の変化」
11月1日、渋谷駅直上に超高層施設「渋谷スクランブルスクエア(渋スク)」が開業した。と同時、11月から渋谷駅にも大きな変化が起こっていることにお気づきだろうか? 出入口番号の刷新や、新たな動線・広場の供用開始など、渋谷駅地下が大きく生まれ変わっている。今まで「分かりにくい」「複雑」と言われてきた渋谷駅が、どう変わったのか具体的に見ていきたいと思う。
| 1.「渋谷駅東口地下広場」の供用開始 カフェスペースも
渋谷駅地下「宮益坂中央改札」から「渋谷ヒカリエ1・2改札」に向かう途中に新たに右に曲がれる通路が新設された。
右に折れると、天井の高さ約6メートル、延べ床面積約1600平方メートル(B1・2F)の広々とした地下広場に出る。ここが「渋谷駅東口広場」だ。渋谷駅街区土地区画整理事業の一環として「渋谷川の移設」、ゲリラ豪雨・大型台風などに備える「雨水貯留槽の設置」、さらに地下と地上の鉄道をスムーズにつなぐ「歩行者ネットワークの形成」を目指して、2010年から整備が進められてきた。
B2Fの広場中央から目線を上げると、天井部分に大きな出っ張りがあるのが分かる。この出っ張りの中を再開発工事に伴い移設された渋谷川(法律上は河川ではなく下水道の扱い)が流れている。渋谷川の下を歩いていると思うと、何とも不思議な気分だ。その一方、広場下には約4000トン(25メートルプール8個分に相当)の雨水を貯めておける「地下貯留槽」が隠れている。
「スリバチ地形」の渋谷駅は駅周辺が最も低く、度々浸水被害に悩まされてきた歴史がある。来年のオリパラ開催前までには地下貯留槽の使用も始まり、1時間に50ミリ程度までの雨であれば十分にストックができる。都市型水害に備える新たな機能として期待される。
「渋谷ヒカリエ1・2改札」と「宮益坂中央改札」の間に生まれた同広場は、スムーズなアクセスを促す交通結節点としての機能も持つ。たとえば、「ハチ公口」から「渋谷スクランブルスクエア」方面や、「ハチ公口」から「渋谷ヒカリエ」方面への移動は、東口地下広場を経由すれば、だいぶショートカットルートとなる。
さらに東口地下広場から宮下公園方面に出られる「B7出口」、渋谷スクランブルスクエアとつながる「B6出口」も新たに設置され、「分かりにくい」と揶揄される渋谷駅地下の利便性が一気に向上する。
加えて、同広場には「カフェ」もオープン。まちの発展と魅力向上のため、渋谷区より都市再生特別措置法に基づく都市再生推進法人の指定を受けた一般社団法人渋谷駅前エリアマネジメントが、観光案内や情報発信機能を持つカフェ「UPLIGHT CAFE」の運営を行う。
本来は「道路扱い」の場所であるが、街の結節点としての賑わいづくりのため、官民連携で特例の占用許可を得て設置に至った。フードメニューはサンドイッチやヴィーガン対応のサラダ、スープなどのほか、フルーツやハーブ、スパイスをミックスしたミクソロジージュースやコーヒー等。さらに店内にベイクショップ「PUFFZ(パフズ)」を併設し、シュークリームをメインとしたベイク・スイーツも提供する。
考えてみれば、再開発工事以前には渋谷駅東口の地上にシュークリーム専門店「ビアードパパ」があり、東口周辺にシュークリームの甘い香りが漂っていた。シュークリームの販売はそれを意識したか否かは定かではないが、そんな懐かしい記憶も思い起こさせてくれる。また店内には英語など語学に堪能なスタッフも常駐させ、外国人観光客に向けた「観光案内」も積極的に行っていくという。営業時間は7時〜22時まで。
そのほか、B2F広場からエスカレーターで上がったB1Fフロアの左側に「都営バス定期券発売所兼案内所」を設置。販売所入口の壁面にデジタルサイネージを掲出し、バス乗り場や時刻表などを案内する。
来年のオリパラ開催前までには、入口すぐ横に「東口バスターミナル(渋谷ヒカリエと渋谷スクランブルスクエアの道路の間にできる予定)」に上がれる階段もできるという。そうなると渋谷駅地下からバス乗り場にダイレクトにアクセスができるようになり、鉄道からバスへの乗り換えがかなりスムーズになるだろう。
「都営バス定期券発売所兼案内所」の反対側にはB7番出口に隣接し「渋谷区立渋谷駅東口公衆便所」を設置。再開発工事に伴い、東口エリアから無くなっていた公衆便所を、広場の供用開始と同時に復活させた。
さらにトイレに併設し、@cosme(アットコスメ)が運営する「パウダールーム」もオープン。同ルーム内には室内・自然光・夜とライトを調光できるインタラクティブミラー4台を備える。
メイク直し等ができるほか、アットコスメの専用アプリをミラー下部にかざすと、ロックの掛かったガラスショーケースから最新コスト等を取り出し、無料で試すことができるサービスも実施するという。化粧会社とのタイアップで、公衆便所の運営費を賄う狙いもあるのだろう。
様々な機能を集約した東口地下広場の供用開始で、渋谷駅の利便性と快適性が以前より増すのではないかと大いに期待される。
| 2.新地下出入口番号の運用開始 「分かりにくさ」解消へ
もう一つ、渋谷駅地下の変化で見逃せないのが、地下出入口番号の変更だ。今まで「ダンジョン」「ラビリンス」と揶揄されてきた渋谷駅であるが、駅周辺の大規模再開発に伴い、地下出入口の移設や新設を余儀なくされてきたことや、規則性のない「出入口番号」付けも「駅の複雑さ」を助長させる大きな要因となってきた。「渋谷駅が複雑な理由」については、下記の過去記事をチェックしてみて下さい。
●「ダンジョン」と揶揄される渋谷駅地下は、なぜ迷うのか?(2019年5月7日掲載)
こうした不便さを解消させ、駅の利便性、街の回遊性の向上を目指して、11月1日から東横線・田園都市線・半蔵門線・副都心線渋谷駅の地下出入口番号がすべて一新された。
上写真は10月31日までの駅構内の出口番号で、下写真は11月1日に変更となった出口番号。一夜にして、駅構内の案内誘導サインがすべて変わった。
今回の新しい出入口番号は、上の図のように渋谷駅周辺を大きく4つのエリアに分けた点が特徴。まず、ハチ公前広場を中心にした渋谷スクランブル交差点やSHIBUYA109、渋谷マークシティなどのエリアは「A」、JR線を跨ぎ、東口、明治通り沿いの渋谷ヒカリエや宮下公園などのエリアは「B」、渋谷川沿いの渋谷ストリームなどのエリアは「C」、渋谷駅西口の渋谷フクラス、桜丘町などのエリアは「D」と、ハチ公前広場から時計周りにA〜Dとエリア分け。 A=ハチ公、B=ヒカリエ、C=ストリーム、D=フクラスと各エリアのシンボリックな建物さえ覚えておけば、おおまかな行先・方向を見失うことがなくなる。
新しい地下出入口番号は、A〜Dのエリア+各出入口の数字の組み合わせで表記される。たとえば、SHIBUYA109であれば、Aエリアの2番出口で「A2」、渋谷ヒカリエであれば、Bエリアの5番出口で「A5」となる。ちなみにハチ公前広場の出入口番号は「ハチ(8)」に合わせて「A8」となり、非常に分かりやすい。ハチ公前での待ち合わせなら「A8」だけ覚えておけば、まずは安心だ。
先日開業した渋谷スクランブルスクエアに続き、今後、渋谷駅周辺では12月に渋谷フクラスの商業エリア開業、来年1月に銀座線ホームの移設、来春にJR埼京線・新宿湘南ラインのホーム移設も予定され、オリパラを前に駅全体の改良が一気に進む。五輪時には世界から多くの人びとが渋谷の街にやってくるだろう。初めて渋谷に訪れる人にもさらに分かりやすい駅に生まれ変われるか、これからしばらく渋谷駅の変化から目が離せない。
編集部・フジイタカシ
渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。