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安藤忠雄さんは
オモロイ関西のおっちゃん

本日、Bunkamuraにて、建築家・安藤忠雄さんのトークショーが行われました。本企画は、渋谷・東急百貨店開店40周年イベントの一環として催されたもの。安藤さんと言えば、ここ最近では「表参道ヒルズ」、東京ミッドタウンの「21/21 DESIGN SIGHT」の設計が記憶に新しいですが、今後も来年6月に開業を控えた東京メトロ・副都心線「新渋谷駅」のデザイン、さらに石原都知事が先導する東京オリンピック誘致の監督にも就任するなど、これからの東京の都市計画のキーを握っている人物の1人と言えます。

こうした注目も集まってか、整理券配布(朝10:30)の30分以上も前に東急百貨店前には、既に100人近くの行列が出来ていました。私も、ヤバイとやや小走り気味で最後尾に。並んでいる人の層は建築を勉強している学生ぽい人、編集者・ライターぽい人、渋谷の未来を憂うお爺ちゃんや、安藤さんファンのおばちゃんなど、老若男女問わない人気の高さがうかがえます。ちなみに私の整理券番号は「106番」。定員150名ですから、なんとかギリギリセーフ。

午前中の打ち合わせを終えた後、再び13:00にBunkamuraへ。
会場はBunkamura1Fのカフェスペースを大胆に利用して設営され、中央には整理券を持っている人の座席、さらにその周囲には何百人もの立ち見客で溢れかえっていました。「まさか、こんなところで講演会をさせられるとは・・・」という安藤さんの第一声に会場もどっと笑いが起こり、一気に和やかな雰囲気に。

まあ、講演慣れをしているのはもちろん、さすがは関西のおっちゃん。講演内容は前半は「住吉の長屋」「サントリーミュージアム」「表参道ヒルズ」や「21/21 DESIGN SIGHT」など、安藤さんが今まで手掛けた実績をもとにしたもの。中でも、「サントリーミュージアム」の設計をサントリー元会長故・佐治敬三氏から直々に依頼された経緯や、海に臨んで建つミュージアムの建築許可を得るため、道路、護岸や海上の管理下の異なる建設省、運輸省や大阪市などの縦割り行政を上手に利用し、計画を見事に実行した話しなどは大変面白かったです。さすがは、百戦錬磨の強者。さらに大阪に観光客を呼ぶために、大阪湾でシャチを三匹飼うことを大阪市に提案したという型破りのアイデアには大いに関心。建築家の枠を越え、おそらくメディアを動かすPRやパブリシティの視点を持った人なのでしょう。

さて、肝心の「新渋谷駅」については、今までの発表の域を超えない内容にとどまりました。地下30mに三層構造の楕円の駅「地宙船」、最下層のホームから上部に向け大きな吹き抜け空間を造る、また自然換気システムを取り入れるなど・・・。舌が滑らかになり過ぎて、つい新しいことでも飛び出すかと思いきや、残念。 「安藤忠雄さんが『新渋谷駅を語る』」という講演テーマとしては、やや消化不良気味かな。

それから、いま、安藤さんが力を入れていることは「海の森」の実現だそうです。東京湾に埋め立てられたゴミの山、この負の遺産を緑化しようというのが安藤さんの狙い。天空のラピュラの海版とでも言うべきか、いわば、海上に浮かぶ大きな森。とはいえ、この巨額の資金はどこから捻出するのか?この企画の発案者である安藤さんは「海の森募金」を立ち上げ、1人1000円の募金を100万人集めて、市民の力で緑の島を作ろういるそうです。とはいえ、「『海の森』が実現したところで、東京の熱帯夜がせいぜい4日間解消される程度・・・」と安藤さんは言い切ります。要するに、自分のやろうとしていることは、環境に対してたいして影響は与えない。でも、こうした活動を通して、一人一人が何ができるかを考えていくことが重要と考えているようです。建築家とは、一体どんな職業なのでしょうか。人を育てる、そこまでを考えた「デザインの底力」を垣間見た気がします。
講演会はちょうど1時間、14:00に終了。

<現在、渋谷で行われている新渋谷駅関連の展示>
安藤忠雄さんデザインの新渋谷駅模型の展示 
 期間:10月25日〜11月7日 
 場所:東急百貨店本店1Fの特設スペース

SHIBUYA INFOBOX
 期間:10月4日〜11月4日 
 場所:渋谷マークシティ4Fのクリエーションスクエア

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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