【レポート】“渋谷をフィールドに課題解決に挑戦せよ!” 実践女子大・新入生セミナーに潜入してみました。
渋谷にキャンパスを構える「実践女子大学」(渋谷区東1丁目)は4月13日、渋谷の街をフィールドに人間社会学部の新入生セミナーを行った。
同大は実践的な学問として社会科学系の教育研究を重視している。文化・企業活動が盛んである渋谷においては、企業との調査・フィールドワークや産学連携などの活動を行い、学生の学びへの意欲を広げてきた。
「大学での学びの一歩を踏み出し、渋谷を学ぶ、渋谷で学ぶ」をテーマとしたセミナーは、キャンパスの内外で新入生が一緒に語り合い懇親を深めることが目的で、渋谷の街で開催するのは3回目。例年、渋谷を拠点とする企業とタッグを組み、今年は東急電鉄が参加しフィールドワークの課題などを設定した。
| 「来日3回目の外国人」におすすめする通の渋谷とは?
東急電鉄では「自分たちの職場である渋谷を、歩いて楽しい街にしたい」と、まちづくりの活動を行っている。「同じ街に拠点を置く大学生の若い視点で、そして渋谷を“自分ゴト”として感じてほしい」との思いから、今回のセミナーに協力することとなったという。
今回、学生たちに与えられた課題は以下の5つ。「若者の街以外での渋谷の魅力発掘」や「東京パラリンピックの会場でもある渋谷」など、現在の渋谷の現状に着目した課題が目立った。
1. 来日3回目の外国人が歩く「通」の渋谷
2. 若者の街だと思っていたおじいちゃん・おばあちゃんが安心する渋谷
3. 車椅子などの人がバリアフリーで楽しめる渋谷
4. 上を見上げながら楽しむ渋谷
5. 足元に目を落として楽しむ渋谷
具体的にフィールドワークの流れを見ていく。まず、新入生6人ほどを1グループとして、計40チームがこれらの課題に挑戦。各チームは割り当てられた1つの課題について、渋谷の街を歩いて発見したことなどをスライド1枚にまとめ、最後は1分間のプレゼンを経て、審査結果の発表となる。
新入生たちは各々の課題が決まると、チームごとに作戦会議を開始。インターネットで、ある程度のリサーチなどをしてから、渋谷の地図を携えて街へと向かった。目当ての場所に向かう間も、学生たちはビルや通りなど街のいろいろなものに着目してスマホで写真撮影。意見を交わしながら情報収集に努めていた。
「来日3回目の外国人が歩く『通』の渋谷」をテーマにしたチームは、実際に街中で出会った外国人に「今からどこに行くんですか?」と体当たりでインタビューする場面も。各々が与えられた課題に対し、真摯に取り組む姿が目立った。
約2時間半のフィールドワークを終えた後、大学に戻ってスライドの製作を開始。現地で撮影した写真を渋谷の地図上に貼り付けるとともに、キャッチコピーや#(ハッシュタグ)をつけてポイント紹介などを書き添えていた。プレゼンを想定してなるべく分かりやすいスライド作りに取り組む姿は、まだ入学して間もない学生とは思えないほどしっかりしていた。
| 「カワイイ文化」など女子学生ならではの視点も
いよいよ緊張のプレゼンタイム。「来日3回目の外国人が歩く『通』の渋谷」をテーマとしたあるチームは、「歩いて巡ろう!新しい渋谷を大発見!」と題して代官山を探検したという。一汁三菜の和食を堪能できる飲食店や重要文化財の旧朝倉家住宅、手ぬぐい専門店などを挙げ、日本文化に興味がある外国人に向けたルートを作成。学生たちは「渋谷の魅力は駅前だけでなく、少し歩くと日本の良さを感じられます」と、渋谷駅から一駅離れた代官山の魅力を楽しそうにまとめた。
その他、バリアフリーが行き届いている「渋谷マークシティ」や日本の「カワイイ文化」など、若い女子学生の視点で捉えた、いろいろな渋谷の街のポイントがスクリーンに投影された。
| 少し顔を上げて探検すれば、いつもと違う渋谷が見える
プレゼン後に「最優秀賞」「オーディエンス賞」「東急電鉄賞」が発表され、最優秀賞には「上を見上げながら楽しむ渋谷」をテーマとしたD-2(渋谷の左上探検隊)チームが選ばれた。
プレゼンでは「たくさんの人々が行き交う渋谷で新しい発見をしてみませんか? 私達は今回、いつも訪れる渋谷の風景を、少し顔を上げて探検しました」と切り出すと、渋谷駅を起点に公園通り、スペイン坂を巡り、桜丘町の坂上にある「コスモプラネタリウム渋谷」を目指すコースを紹介した。
「内装の天井が星空のようできれい」というカフェ「and people jinnan」や螺旋階段が広がるカフェ「La SOFFITTA」、特徴的な形状のユニクロ(スペイン坂店)のビルを見つけたことを説明しつつ、最終地点となるコスモプラネタリウムについて、都内では味わうことのできない26万5000個の満天の星が見えるとアピールした。
「騒がしいイメージのある渋谷ですが、時の流れをゆっくり感じられるようなコースになっています。最後に下を向きがちなそこのあなた!斜め45度を見てみたらどうですか?いつもとは違う世界が見えるはずです」と、呼びかけて締めくくった。
選考理由について、学部長は「『斜め45度を見上げる』。すごくインパクトのあるキャッチコピーでした。プレゼンで一番説得力が出るのは声のトーンですよね、すごく声にインパクトがあって良かった」と総評を加えた。
高評価を得たD-2のメンバーたちは「他のチームとキーワードなどが被ってしまったのでダメかと思っていた」「発表の仕方が良かったと褒められて嬉しかった」などと感想を漏らした。
| 学生一人ひとりが「渋谷の街の一員」
最後に東急電鉄からも新入生に向けてメッセージが送られた。「これからの4年間は学生一人一人が『渋谷の街の一員』。通学途中や遊ぶときでも独自の視点で渋谷の街の課題をみつけてほしい」と提案。さらに「是非、解決するためのアクションを起こしてみてください」とも呼び掛けた。
入学した10日ほどの若い学生のしっかりした視点やプレゼンのスキルには、さらに伸びていく可能性を感じた。また大学4年間はあっという間であると同時に、かけがえのない経験ができる時期でもある。学生たちの今後の活躍が楽しみだ。
重野マコト
社会部記者として新聞社に入社後、イベントプランナー、コンテンツディレクター、飲食店経営を経て、現在はフリーライター。インタビューやイベントレポートなどの現場取材をメインに活動する。