こだわりの素材と調理法でお腹を満足させる「ごちそうとん汁」/代々木・ごちとん
代々木に本店を構える『野菜を食べるカレーcamp』の開店10周年を記念して、2017年にオープンしたとん汁専門店『ごちとん(野菜を食べる ごちそうとん汁)』。
「もともと僕にとって、カレーととん汁というのは身近なごちそうだったんです」と教えてくれたのは、オーナーの佐藤卓さん。
「お味噌汁って、小さい鍋で作りますけど、我が家ではとん汁やカレーは大きい鍋で豪快に作っていたので、僕にとってごちそう感があったんです。さらに、僕が学生時代にサービスエリアやスキー場で食べるとん汁定食というのも特別感があったんですよね。贅沢という意味のごちそうではなく、気持ちが盛り上がるという意味のごちそう。『ごちとん』は、そういうお店にしたいなと思って作りました」
実は「ごちとん」で出されている「粗挽きキーマカレー豚汁」は「Camp.」で出されていたメニューでもある。
「Camp.でもお客様には人気の高いメニューではあったんですが、この一品のためにとん汁を作るのは、なかなか大変で。人気が出れば出るほど、厨房が大変になっていくということで期間限定の一品になっていたんです。Camp.の10周年でカレーとん汁を復活させるというアイデアが出たときに、それだけではつまらないので、お店ごと作ってしまえ。でも、カレーとん汁専門店というのは、さすがにエッジが立ち過ぎているだろうということで(笑)、とん汁専門店に行きついたんです」
西京味噌で仕上げた白味噌仕立ての「西京味噌のごちそう豚汁」(840円)は、たまねぎ、にんじん、大根、じゃがいも、さつまいも、なす、コンニャクと野菜たっぷり。さらに、炭火で焼いたスペアリブと三つ葉が乗せられている。
オーダーが入ると、この小鍋で1人前ずつ調理が始まる。まずは、蒸した状態のお野菜をごま油で揚げるところから。
「具材のほとんどが根菜類のため火が通りにくいので、柔らかくしつつ野菜の味を凝縮させる蒸しの工程を終えた状態でスタンバイしておきます。それをごま油で素揚げして、野菜の芯温を一気にあげて、カリッとさせながら風味をつけます。油をしっかりと切ったあと、味のベースとなる長野の門前味噌ダレで炒め、最後に出汁でひと煮立ちさせたあと、風味付けのための信州味噌を加える。風味が飛ばないように沸騰する直前で止めるのがポイントです」
蒸す、揚げる、焼く、煮るという調理の工程を使い、一気に野菜の旨みを引き出していく。佐藤さんいわく、和食で凝った料理を作るときの手法なのだそうだ。
「普通のとん汁って細かくカットした野菜やお肉を使ってあらかじめ大量に煮ておくものだと思うんですが、うちは『ごちそうとん汁』なので、ごろごろした野菜を使いたかったんです。それを煮込みにすると最初はちょうど良くても最後には味が染み過ぎていたり煮崩れたりしてしまう。常に美味しい状態でお出しするためには、手間はかかりますが、1人前ずつ作るのがベストなんです」
つるつるとのどごしのいいお豆腐も、お店で日に数回作られている。
そして、このスペアリブが驚くほど柔らかく、味がしっかり染み込んでいるのだ。
「実は、うちのスープは、スペアリブをスパイスで炒めて、根菜の端っこ部分と一緒に煮たものなんです。そのお肉をタレにつけてあります」
注文が入ると炭火で炙る。このひと手間が、スペアリブにほどよい歯ごたえを生んでくれる。ちなみにプラス300円でスペアリブをダブルにすることができる。
こちらは、7月よりメニューに加わった「BLTとん汁」(890円)にごはんとお漬物がついた定食(+100円)。
B=ベーコン、L=レタス、T=プチトマトが入った洋風テイストのとん汁。味のベースは信州味噌なのだが、炒めたレタスとベーコンのうまみが加わることで、とん汁でありながら、洋風スープでもある。さらに、トマトの酸味が口をさっぱりとさせてくれる。
「うちのとん汁の定義は、根菜がいっぱい入っていること。そして、お味噌と豚肉を使っていることなんです。なので、信州味噌+ベーコンで洋風とん汁になるんですね(笑)。ほかにも、キーマカレーで使っているひき肉も豚のみ。「唐辛子味噌のごちそう豚汁」ではコチュジャンを使っているんですが、これも韓国のお味噌だよねというところからスタートしています」
最後は、佐藤さんご自慢の「江戸甘味噌のごちそう豚汁」(840円)。江戸味噌は、八丁味噌のこくと西京味噌の上品な甘さのいいとこ取りをしたような伝統的な味噌で、デパートなどで買うと高級品の類に入る一品。「ごちとん」では、中野の『あぶまた味噌』から仕入れているそう。
しっかりとしたコクの中にお野菜の味が染みだしていて、ごはんと合わせて食べたくなる一品。まさに「ごちそう感のある」とん汁だ。たっぷりのお野菜と食べごたえのあるスペアリブ。しっかりお腹いっぱいになった。
代々木という土地は、学生さん、サラリーマン、アーティストと様々な方々が行き交う街。男性のお客さんも次々入って来るが、おひとりの女性、男女混合のグループなど、客層は、まさに様々。そんな中でも、女性が気軽に入ることができる1000円以内で気軽に食べられる“和食のお店”が少ないということで、とても人気が高いのだそう。しかも、「野外ロックフェスの屋台」というお店のコンセプトにぴったりのウッディーで可愛いインテリアも、女性が入りやすくさせている。これからの季節、温かくてお野菜たっぷり。「ごちとん」でしか食べることができないとん汁を味わってほしい。
ごちとん(野菜を食べる ごちそうとん汁)
〇住所:渋谷区代々木1-33-2
〇電話:03-6883-9181
〇営業:11:30〜24:00(ランチタイムあり)
〇定休:無休
オオバリエ
楽しく美味しく食べることが好きで、魅力的なお店の情報を聞きつければ都内を中心に車を飛ばして行きまくり。憧れは海外旅行に行って美味しいものを食べまくることです。