ハチ公も選挙活動をお手伝い
いよいよ東京都知事選まで、残り4日間。現職の石原都知事に立ち向かうは、前宮城県知事の浅野氏、建築家の黒川氏をはじめとする13人の対抗馬たち。都民ならずとも、その成り行きに目が離せません。と、盛り上がりを見せる選挙に渋谷を代表する人物?、いや犬物である「忠犬ハチ公」も応援を自ら買って出たのかは定かではありませんが、写真のようにタスキを掛けて都知事選の宣伝に駆り出されていました。選挙管理委員会としては、おそらく猫の手、いやハチの手も借りたい心境なのでしょう。
ここで1つの疑問が沸いてきます。ハチ公を宣伝や広告媒体として、民間企業が使用することは果たして可能なのでしょうか?以前、東京国際映画祭が開催された際にも、今回と同様にハチ公がタスキ掛け姿で宣伝に協力していたこともありました。ハチ公といえば、渋谷。渋谷といえば、ハチ公と言っても過言ではなく、東京の観光名所の代名詞と言えます。先日、ハチ公の前を通りかかった際に、どの位の人がハチ公を写真撮影しているかを簡単に調査してみたところ、30分間でおおよそ20名近くの皆さんがシャッターを切っていました。その中には修学旅行生らしい中高生もいれば、観光ガイドにも掲載があるのか、案外、外国の観光客の姿も目立ちました。30分で20名、1時間で40名、1日の中で人通りの多い時間を12時間とすると、1日480人、年間365日で17万5200人。当然、写真をとらず、見て通り過ぎる人も相当いますから、言うまでもなく、広告媒体としての価値は十分ではないでしょうか。そこで、くだらない思いつきではありますが、渋谷区役所へこの疑問をぶつけてみることにしました。
編集部F「お忙しい中、申し訳ありません。ハチ公について、いくつか質問をさせていただきたいのですが・・・、まず、ハチ公は誰の持ち物なのでしょうか?」 区役所受付「えー・・・、うん・・・、少々お待ちください・・・」 それはそうだ、昼間の忙しい時に厄介な人から電話がかかってきたゾ!と思われても仕方がない。しばらくして担当者に取り次がれ、「ハチ公の件ですね」 編集部F「はい、いくつか質問をしたいのですか良いでしょうか。まずハチ公は誰のものなのでしょうか?」 区役所担当者「ハチ公は渋谷区のものです」 編集部F「では管理も、区がなされているのですか?」 担当者「いえ、JR渋谷駅で忠犬ハチ公銅像維持会というものを組織しており、その維持会が管理を行っています」。つまり、ハチ公は渋谷区のものであり、その管理はJR渋谷駅が行っているというわけ。
では話を本題に移し、「今、ハチ公に都知事選宣伝のタスキ掛けをしていますが、同様の形で一般企業の広告宣伝にハチ公を利用することはできるのでしょうか?」 担当者「えー、広告宣伝は官公庁のみに限っており、民間企業からの申し出は一切受け付けていません」 なるほど区の持ち物であるので、それも当たり前か。さらに突っ込んで、「では『忠犬・ハチ公銅像』のイメージや写真を広告に使用したり、商品に使用する場合はどうでしょうか?使用料やロイヤリティが掛かるのでしょうか?」 担当者「うーん・・・、調べてお答えします」−−この質問には、さすがに困った様子(忙しい中、お付き合いいただきまして、ありがとうございます)。その後、間もなくして担当者からご丁寧に電話にて次の返事をもらいました。「ハチ公の銅像の写真、ハチ公の銅像に関わることに対しては、ハチ公の銅像を作った彫刻家・安藤士さんに確認をとってもらいたい。安藤さんの了解を得られれば、問題はない」とのこと。つまり、忠犬ハチ公銅像のイメージや写真であれば、民間企業でも広告や商品に十分使用できる可能性があるようです。また「ハチ公ソース」「ハチ公サブレ」・・・など、ハチ公の付くネーミングを商標登録している企業も既に多数存在することから、今後、渋谷で何か商売を始めたいという方は「ハチ公○○」を早めに押さえたそうが良いかもしれませんね(笑)。
それから豆知識ですが、現在の忠犬ハチ公銅像が二代目だって、ご存知でしたか?一代目ハチ公銅像は、安藤士氏のお父様である安藤照氏によって生み出されたものの、太平洋戦争中の金属回収令により供出され、惜しまれながらその姿を消したそうです。戦後になって、ハチ公銅像の再建を願う声が高まり、昭和23年に安藤照氏のご子息である安藤士氏によって、二代目ハチ公が復活したというのが経緯のようです。ちなみにハチ公銅像の生みの親・安藤照氏は、一代目ハチ公のほか、西郷隆盛銅像(鹿児島市)を制作、また安藤士氏は、二代目ハチ公のほか、南極物語で有名になった15頭の南極カラフト犬像(東京タワー下)の制作など−−記録に残る作品を残す、実に凄い親子。 またハチ公銅像台座の「忠犬ハチ公」の文字は、全国の小学生243名の応募の中から選ばれたもので、当時、渋谷区の小学校3年生であった佐々木敦子さんの文字だそうです。
さて長々と書いてしまいましたが、今週4月8日(日)は何の日か、皆さんご存知ですか?文頭に書いたように都知事選挙はもちろんですが、実は「忠犬ハチ公の日」でもあるんです。1935年3月8日に亡くなってからこの春で72回目の命日を迎え、今年も4月8日に渋谷駅前のハチ公広場にて慰霊祭が行われる予定だそうです。選挙の帰りに、久しぶりにハチ公に会いに出掛けてみてはいかがでしょうか。
編集部・フジイタカシ
渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。