1974年といえば、その前年に渋谷パルコがオープンしたものの、まだ渋谷の街には何もなかった時代。そこで誌面では、渋谷の街を一つの“メディア”と捉えるコンセプトを打ち出しました。何故メディアなのかというと、大資本が開発するのではなく、生活する人や働く人、遊びに来る人などが関わり合い、ミックスされるなかで発展するのが渋谷の特性だと捉えたからです。 この地域が面白いのは当時からで、周辺の地域がこぞって「渋谷」と表現しがちです。今でも、原宿や恵比寿、中目黒なんかも、一緒くたになって「シブヤ」が形成されているイメージがありますよね。昔から渋谷には、周りを惹きつける“魔力”のようなものがあったのだと思います。
--WEBアクロスの定番企画「定点観測」は、どのような経緯で始まったのでしょうか。 渋谷・原宿・新宿の三カ所で月一回、若者ファッションのトレンドを観察・分析する「定点観測」は、もともとパルコが持っている“街はメディアである”というコンセプトを反映させた調査企画のひとつとして1980年にスタートしました。
当時は価値観の多様化が進み、トレンドの方向性がつかみづらくなっており、それならば街に出て若者の服装やヘアスタイル、メイク、持ち物などを観察し、それを考現学的な手法で分析することで、次の時代を予測しようということになったのです。以来、雑誌休刊中も含めて25年以上にわたって継続し、刻々と変化するリアルな街の様子を記録・分析し続けてきましたが、その間、携わったスタッフの数は約100名、さらに、撮影やインタビューにご協力頂いた方は20万人以上にも及びます。つまり、「定点観測」は、ストリートファッション(東京の若者とファッション)の主役たちの記録でもあるのです。
--渋谷を訪れる人の年齢層は変化していますか。
--渋谷の街におけるショップの変遷を、どのようにご覧になっていますか。
--渋谷の魅力は、どのような点にあると思いますか。 多様な人たちを受け入れるキャパシティがあり、誰もが等身大で過ごせる居心地の良さが魅力だと思います。それは街が大資本に染まらずに多面性を保っていることや、クリエイティブな仕事に就く人が多い環境が影響しているのでしょう。昼間からネクタイをしていない大人がたくさん歩いていますしね。丸の内あたりから渋谷に帰ってくると、本当にホッとした気分になります(笑)。また周辺の地域との行き来が容易なところも、渋谷の面白いところです。三カ所の定点観測は同日に実施しており、渋谷で若者にインタビューしようとすると、「さっきも原宿で声をかけられた」と言われることが少なくありません。最初に原宿駅で下車して周辺をぶらつき、公園通りやキャットストリートを経由して渋谷まで歩く。渋谷の街はすり鉢状だからかでしょうか。原宿だけでなく、青山や恵比寿など、隣接する街を起点に、渋谷の街へと吸い込まれていく流れがあるのは事実です。
--最後に、渋谷へのメッセージをお願いします。
■プロフィール
高野公三子さん
1992年、株式会社パルコ「アクロス」編集室に入社。「定点観測」を15年以上にわたって担当する他、雑誌・メディアの分析、若者・世代論などを通して消費者ベースのマーケティング分析に携わる。2000年秋、「WEBアクロス」開設と同時に編集長に就任。現在は、同サイトを運営するほか、外部企業からのリサーチや商品開発、トレンド分析、コンサルティング、大学や教育機関等での講師なども行っている。
WEBアクロス「ストリート・マーケティング」をコンセプトに、渋谷・原宿・新宿を中心とした東京の街と、そこに集う若者をリアルにレポートするWEBサイト。前身は1974年に創刊された「パルコレポート」で、1977年に「月刊アクロス」として創刊。1980年から月一回、渋谷・原宿・新宿の三地点で若者のストリートファッションを観察・分析する「定点観測」が開始された。2000年10月に「WEBアクロス」が創刊。以来、渋谷を中心に移りゆく東京のファッション動向を発信し続けている。 |