



―KOMPOTISIONを設立した経緯は

―活動拠点に渋谷を選んだのは、どういう理由ですか。 それまでは六本木に事務所を間借りしていましたが、そこは僕らの遊び場所じゃなかったんですよ。もっといっぱい、若者が集まる街が良かったんですね。僕らは理想だけは大きくて、日本がどうだ、世界がどうだ、とか話していたので、その場所で何かをすれば、全国に広がっていく情報発信基地のような渋谷の街が理想だったこともあります。僕は、渋谷は戦国時代の京都みたいな場所だと思っていましたから。この街に旗を立てて、ここにいるぞと叫べば、あそこに誰かがいるらしい、じゃ一緒にやろうか、なんて声が掛かりそうじゃないですか。これが他の街だったら、何だか変なヤツがいるぞで、終わってしまいそうです。そんな直感からの判断でしたが、今になって間違っていなかったと確信しています。
―渋谷に事務所を移してからは、どんな活動を展開していますか。

―渋谷に集まる若者を、どのように受け止めていますか。 渋谷は若者であふれていますが、彼らの多くは渋谷に住んでいるわけではない。何らかの目的を持って来ているのです。彼らが求める「何か」があるのか、あるいは「何か」があると思って来るのか。その「何か」は、決して洋服とかレコードだけではないと思います。表層的には、メディアによって渋谷は華やかに見えるので、それを求めているのかもしれない。でも実際は、渋谷には若者が「夢」や「希望」が持てるような「もの」が存在するから集まるのだと思います。それは、恐らくデザインやアート、音楽やスポーツといった文化寄りのものです。若者は、何かしらクリエイティブなことをしたいわけで、その拠点になるような施設や機能が渋谷に実在しており、その結果としてこの街のブランドイメージができあがっていると思います。例えば、裏原や109が文化的な情報を発信したり、宇田川町が世界一のレコード集積地と言われるなど、クリエイティブが詰まっている。本質的にはそういう理由で、若者が集まるんじゃないのかな。

KOMPOSITIONがリーガルウォールを手がけたジュネスビル(宇田川町)


―今後、渋谷で、どのような活動を考えていますか。 もっと渋谷の街に特化した活動を展開するつもりです。街と若者が繋がっている、街が若者を応援してくれている、という感覚を引き出していきたいですね。例えば、渋谷には音楽で言うと「タワレコ」などの魅力的な要素が沢山あると思うんです。そうした魅力的な点と点を繋いでいきながら、つまり渋谷の街に眠るリソースを活用しながら、若者を応援していきたい。自由に何かをやらせてもらえるのなら、たとえば「シブヤ美術館」と名付けて街全体をギャラリーにしたり、あるいは街を体育館や陸上競技場にしたり―街が生き物か装置みたいに見えたら面白いでしょうね。現在は、壁を絵のキャンバスにする「リーガルウォール」やバスケのトーナメント「ALLDAY」、ランニングスペースを確保する「RUN CARAVAN」など、3つのカテゴリーを軸に活動しています。今後、そのカテゴリーを30くらいまで増やしたいですね。そのためにも、今まで関わりが薄かった渋谷の商店街、町内会、企業の方などとも、徹底的にローカルな付き合いを深め、そして今後の全国的な広がりにつなげていきたい、というのが今年の目標です。
―最後に渋谷の街にメッセージをお願いします。

■KOMPOSITION 若い世代がアート・スポーツ・ビジネスなど、様々な分野で自らの夢を具現化し、責任を負いながらチャレンジを続けるための支援を行うことを目的に設立されたNPO法人。リーガルウォールやストリートボール、ランキャラバンなど、複数の活動を通じて若者支援を行っている。事務局を道玄坂に置く。以下は、同法人が手掛ける主な活動。
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リーガルウォール 宮下公園の一部やセンター街のビルなどの壁面を、若手アーティストのキャンバスとして開放することで、落書き防止に貢献しながらアーティストを支援。 |
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美竹公園 ナイキジャパンが寄贈し、マイケル・ジョーダンの名に由来する「ジョーダンコート」(美竹公園)の管理運営を渋谷区から受託し、「バスケットボール」をフックにしたコミュニティづくりを推進。 |
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ランキャラバン 代々木公園陸上競技場を開放することで、気持ちよく走れるスペースを市民ランナーに提供。ランニング関係の講習会や、飲料・食料の提供も行う。 |
■プロフィール
寺井元一さん
兵庫県生まれ。灘高卒業後、早稲田大学政経学部に入学。政治家のボランティアスタッフを経験したのち、同大大学院で「計量政治」を専門に研究する。価値観の変化が、投票行動にどのような影響を及ぼすかという研究の一方で、人間の価値観の変化そのものに興味が移っていく。「やりたいことをやろう」というテーマのもと、2001年に前身である学生サークルkompositionを設立した。翌2002年にはNPO法人化して活動を本格化させ、2003年に事務局を六本木から渋谷に移す。28歳。
撮影協力:オリエンタルダイニング「LOHB(ローブ)」(「Liles.」4階・5階、TEL 03-3464-3355)