レコメンド 今週、編集室が推薦するカルチャー

4月12日(土)より、シネマ・アンジェリカでは、フランスのドキュメンタリー作家ニコラ・フィリベール特集が行われる。最新作『かつて、ノルマンディーで』と合わせて公開予定の『動物、動物たち』では、パリ国立自然史博物館の改修工事の舞台裏が、きめ細やかな眼差しで捉えられている。
筆でキリンの鼻の頭をなでる様子や、アライグマのおなかに綿を詰める様子など、手作業で軽快に修復を行う作業員たちの丁寧で温かい仕事っぷりが堪能できる。

また、ユーロスペースでは、レイトショーにて『船、山にのぼる』が上映中だ。こちらは、美術家と写真家と建築家とで構成されたPHスタジオの『船をつくる話』プロジェクトの一部を、ドキュメンタリー作家の本田孝義氏が記録したもの。『船をつくる話』プロジェクトとは、ダム建設の決まった広島県の灰塚地域で、伐採予定だった木材を集め、船を作り、ダム完成時に行なわれる湛水実験時(ダムのもっとも高いレベルまで水をためる)に、水位とともに船を浮上させる計画で、現在は水没を免れた60メートルの巨大な船がダムの隣に横たわっているのを見ることが出来る。

動物たちの修復作業の手つきから、60メートルの船を山から切り出す建築現場まで、体を動かして何かが出来上がって行く様子を、ただじっと眺める。ドキュメンタリーが僕たちにもたらしてくれるものは、犯罪の原因を探ったり、社会の闇を捉えたりすることだけではないようだ。『船、山にのぼる』は、土日限定でモーニングショーも開催中。休日の朝、ちょっと早めに起きて『船、山にのぼる』を観てランチをとり、シネマ・アンジェリカに立ち寄って『動物、動物たち』を鑑賞する、そんな週末も楽しい。後は、おいしい夕食を探そう。

©Les Films d'Ici-MaÎa Films-ARTE France Cinéma-France 2006

タイトル:
ニコラ・フィリベール特集『かつて、ノルマンディーで』/ 『動物、動物たち』他
上映場所:
シネマ・アンジェリカ
上映期間:
●『かつて、ノルマンディーで』
4/12(土)〜4/25(金) 11:00/13:20/19:50
4/26(土)〜5/2(金) 11:00/13:20/20:10
●『動物、動物たち』【同時上映】 「行け、ラペビー!」
4/12(土)〜4/18(金) 15:40
監  督:
ニコラ・フィリベール

『パリ・ルーヴル美術館の秘密』、『ぼくの好きな先生』の世界的ヒットで知られ、現代ドキュメンタリー作家の最高峰の一人と称されるニコラ・フィリベール。その愛と驚きに満ちたドキュメンタリー世界を2作連続ロードショーとレトロスペクティヴによりご紹介。(全7プログラム/一部DLP上映あり)

世の中には、特別注目を浴びる機会はなくても、輝きあふれる魅力を放ちながら生きている人がたくさんいます。ニコラが描くドキュメンタリーの卓越している点は、そうした人々の存在を教えてくれるだけでなく、私たちも彼らと共に悲しみや喜びを感じ、達成感さえも一緒に味わうことができるところです。
ニコラ・フィリベールのまなざしを通して、未知の感動と生きることの素晴らしさをぜひ体験してみて下さい。
<配給担当より>

「動物、動物たち」より
©1994 Les Films d'Ici, France 2, Muséum National d'Histoire Naturelle Paris, Mission Interministérielle des Grands Travaux pour les films

 

タイトル:
船、山にのぼる
上映場所:
ユーロスペース
上映期間:
4/5(土)〜4/25(金)
9:45(期間中の土日のみ、予告篇なし)/21:00
監  督:
本田孝義
撮  影 :
本田孝義、林 憲志 濱子 正

アートプロジェクト「船をつくる話」  主催:PHスタジオ 船をつくる話を応援する会
森が引越します――
建築家と美術家と写真家からなるユニット・PHスタジオ。彼らと、ダムに沈む村に住んでいた人たちが紡ぎだす「船をつくる話」。たくさんの木が、船になって森に帰っていく。
映画はこのアートプロジェクトを静かに見守ります。

ダムに沈む村で、伐採される木で船を作り、山にのぜるという、世界的に見ても例のないアート・プロジェクトを成し遂げたのはPHスタジオ。同時に、この映画は水没してしまう村の記憶と再生を描いたドキュメンタリーです。
<監督 本田孝義より>

「船、山にのぼる」より


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