8月15日の終戦記念日に前後して、第二次大戦をテーマにした映画が相次いで公開されている。日系アメリカ人監督による『TOKKO -特攻-』は、自身の叔父が特攻隊員の生き残りであったことから撮影され、ありのままの特攻隊員の姿を映し出した。『陸に上がった軍艦』は日本映画界最高齢の現役監督が証言者として出演し、自身の戦争体験を語ったドキュメンタリー・ドラマ。一兵士の目線で戦争の不条理さを描き、辛らつでありながら滑稽さを強調するような内容になっている。戦時中、日系人強制収容所に送られたことに反発し、自ら市民権を捨てた画家の数奇な人生を描いた『ミリキタニの猫』も、当事者が語るドキュメンタリータッチの作品だ。また、戦争関連映画として、平成16年度文化庁メディア芸術賞漫画部門大賞受賞作品を映画化した『夕凪の街 桜の国』では、広島を舞台に戦争の爪痕を描き、映画美術の巨匠・木村威夫による『馬頭琴夜想曲』では、長崎での原爆投下を物語の背景に組み込んでいる。
昨年のこの時期には、シアター・イメージフォーラムで『蟻の兵隊』が公開され、11週を越えるロングランとなったほか、クリント・イーストウッド監督が日米双方からの視点で「硫黄島の戦い」を描いた二部作『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』も大きな話題を集めた。どれも戦争を過去の出来事として風化させまいという、製作者=戦争当事者の熱く切実なメッセージが感じられる作品ばかり。終戦から62年、反戦と平和を願う日が迫ってきた。
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自身の叔父が特攻隊員の生き残りであったことをその死後に知った日系アメリカ人の監督リサ・モリモトが、自爆テロを「カミカゼ攻撃」と呼び狂信的な自殺攻撃を日本の「TOKKO」とイメージを重ねる米国の風潮に違和感を持ち、その生存者たちへの取材を重ねた。特攻隊による攻撃を受け沈没した米軍艦乗組員の証言や日米双方の貴重な資料映像も交えながら、狂信的でもなければ軍神でもなかった彼らの姿が浮き彫りにされる。 |
1944年春、召集令状を受けて、32歳で広島県の呉海兵団に二等水平として入隊した新藤兼人。同年6月に宝塚海軍航空隊に配属され、翌年上等水兵で敗戦を迎えた。95歳にして現役、日本映画界最高齢の監督が、証言者として出演し自身の戦争体験を語ったドキュメンタリー・ドラマ。弱兵目線で戦争の不条理さを描き、辛らつでありながら滑稽さあふれる作品に仕上げたのは、“新藤組”の助監督を長く務めた山本保博。恩師の記憶を映像で再現した入魂の一作。 「新藤兼人95歳、日本最高齢映画監督が自らの戦争体験を語る! 当時二等兵だった新藤兼人が“弱兵目線”で見つめた戦争とは…。まるで『ドリフのコント?』かと思うような、バカバカしくも不条理な軍事教練の数々に『戦争って、実はこんなものだったのか!』と目からウロコが落ちるはず。戦争を知らない世代に伝えるため、95歳で初めてカメラの前に立った巨匠・新藤監督の『遺言』。ぜひお見逃しなく!」(『陸に上った軍艦』宣伝担当) |
2001年9月11日、世界貿易センターが瓦解する緊張状態のニューヨークの路上。騒然として周囲をよそに、いつもと同じように平然と絵筆を動かしている男がいた。彼の名はジミー・ミリキタニ、80歳。カリフォルニアで生まれたが、第二次世界大戦中、日系人強制収容所に送られ、アメリカに抵抗して自ら市民権を捨てた。その時から彼の反骨の人生が始まった。彼の80年間には何があったのか…、そして彼の描く猫の絵に込められているものとは…。 「国境を越えて数奇な運命を生きた日系人路上画家、ジミー・ミリキタニ。本作は、ジミーと彼の描く絵に魅せられたフィルムメーカー・リンダとの偶然の出会いから生まれた、奇跡のようなドキュメンタリーです。リンダ監督の尽力により、戦争への怒りに満ちたジミーさんのこころは解きほぐされていきます。フィルムに綴られたたくさんの奇跡、その目撃者になるべくぜひ劇場へいらして下さい。」(アステア/天野さん) |
過去と現在の時代を背景に、二人の女性にスポットを当てたふたつの物語が描かれる。 ひとつは原爆投下から10数年後の広島を舞台に、幸せの一方で被爆した心の傷が再び痛み出していく『タ凪の街』。 もうひとつは現代にあって自分の家族のルーツを見つめなおしていく『桜の国』。二人の女性を通して映し出される家族愛、兄弟愛、男女の恋愛など様々な形の愛。そこから実感として浮かび上がるのは、平和の尊さと、生きることの喜び。彼女たちの目線から、感動の人間ドラマが静かに紡ぎだされる。 |
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鈴木清順、黒木和雄、熊井啓など数多くの監督の美術監督として活躍している巨匠・木村威夫。80歳代後半から映画監督に挑戦し、その第3作目となる『馬頭琴夜想曲』。馬頭琴を側に置かれて教会に捨てられた赤子、世羽(ヨハネ)の祖父は、かつて馬頭琴奏者であり、長崎の原爆で亡くなった。華麗な極彩色の映像は、戦争に対する悲しみを内に秘めながら、アヴァンギャルドな魅力で、見る者の心を掴んで離さない。 |