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消えゆく渋谷の記憶をミュージックビデオでアーカイブする

再開発が進む渋谷の街は、あと数年で大きく様変わりする。たとえば、2013年3月まで、東横線渋谷駅は地上駅舎であったことを覚えているだろうか。あれから3年を経て、東横線渋谷駅は地下の駅として定着しつつある。よく道を歩いていて、ある建物を発見してときに「あっ、ここは以前来たことがある場所だ」「子どものころ、お父さんとよく遊びにきた」など、建物と記憶が結びついていることに気が付くことがある。ところが、あるべき場所にポカンと空き地が広がっていると、ここに以前までどんな建が建っていたのか、とたんに分からなくなる。と同時にその場所に紐付く自分の記憶も徐々に薄れていき、いつしか忘却してしまう。「都市と記憶」の間には、そんな密接な関係があるように思える。

そんな再開発に伴い、渋谷の記憶が徐々に消え去る中で、アーティストたちがリリースするミュージックビデオに「今の渋谷」の姿を留める作品が増えている。その作品が持つ時代背景と共に都市の記憶が映像の中にしっかりとインデックスされ、未来の向けての貴重なデジタルアーカイブとしての役割も担っていることに気が付かされる。そこで、ここ最近発表されたMVから「今の渋谷」を舞台にした作品をいくつか紹介したいと思う。

■「渋谷からPARCOが消えた日」/平手友梨奈(欅坂46)
2016年8月10日(水)にリリースする欅坂46待望の2ndシングル「世界には愛しかない」。そのシングルに一緒に収録される欅坂46センターの平手友梨奈さんのソロ楽曲「渋谷からPARCOが消えた日」のMVが7月23日(土)、YouTubeで期間限定公開された。こちらのMVは今夏8月7日(日)、建て替えに伴い一時休業する「渋谷パルコ」をロケ場所としている。真っ赤なスーツに身を包む平手さんは、鋭い眼光とメリハリのあるステージングを繰り広げる。さらにサビ部分では、「PARCO」のロゴが鮮明に輝くパルコ屋上で「パルコ、パルコ…」と何度も繰り返し、一度聞くと忘れられない楽曲となっている。

■「サイレントマジョリティー」/欅坂46
秋元康さん総合プロデュースの乃木坂46に続く「坂道シリーズ」第2弾として結成された欅坂46は、2016年4月6日に「サイレントマジョリティー」で鮮烈なデビュー。MVのロケ場所は、なんと東急東横線の旧渋谷駅跡地だ。巨大な重機が所々に立ち並ぶ、まさに工事現場の真ん中で、彼女たちはキレのあるダンスパフォーマンスを繰り広げている。2020年には高さ230メートル、地上47階建ての超高層ビルが誕生する同エリアであるが、開発が進む工事中の現場も「今の渋谷」を捉えた貴重な映像記録と言えるだろう。

■「メデューサ」/水曜日のカンパネラ
奇抜な音楽性とパフォーマンスで人気急増中の音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」。彼らが昨年2015年10月にリリースした「メデューサ」のMVでは、渋谷の街中を縦横無尽に駆け巡る。のんべい横丁から公園通りに抜ける高架下からスタートし、シャンデリアを持った女性が渋谷の街を巡り、後半には深夜の渋谷パルコに忍び込み、館内や屋上で愉快なダンスを行う。彼女が電源を差すと同時に輝くパルコの鮮やかなサインが印象的だ。映像を手掛けたのは若手映像作家・山田智和監督で、街の風景と共に芸術性の高い映像美にも注目してもらいたい。

■「years」/サカナクション
2011年にリリースされたサカナクション楽曲「years」が、2015年8月にMVとして映像化されている。同映像ディレクターも「水曜日のカンパネラ」と同じく山田智和監督。MVの前半は、渋谷駅の真下に暗渠化される渋谷川で撮影され、白い布を持つ女性が外光に向かって川の中を駆け抜ける。国道246号、山手線と東横線旧高架下を抜け、女性は渋谷から再開発が進む東京の各箇所へと移動していく。東京全体の今の姿を捉えた作品となっている。

<番外編:懐かしい東横線・旧渋谷駅のプラットホーム>
■アイ(弾き語りVersion)/秦基博

2010年3月にリリースされた「アイ(弾き語りVersion」 。終電車後、車両が停車する2番線、3番線を挟む中央のプラットホーム上で撮影。秦基博さんは深夜のホームでギター1本で弾き語る。天井高のかまぼこ屋根で親しまれた旧渋谷駅の姿は、秦さんの曲と共に街のアーカイブとして後世に残っていくだろう。

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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