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森羅万象を描き尽くせ、北斎スケッチ画集「北斎漫画」特別展

世界一有名な日本の画家・葛飾北斎が、この世の森羅万象を描き尽くそうとした絵本「北斎漫画」を紹介する企画展が現在、「太田記念美術館」で開催されている。

北斎は1760年、江戸本所(現在の東京墨田区)で百姓の子として生まれた。貸本屋の丁稚となったことなどをきっかけに絵に関心を持ち、18歳で浮世絵師・勝川春章に師事。狩野派や唐絵、西洋画などの技法も学び、風景版画に新ジャンルを開拓。その画法はモネやゴッホやゴーギャンなどヨーロッパの印象派の画家たちにも大きな影響を与えたとされる。
葛飾北斎『北斎漫画』十二編

代表作の一つ「北斎漫画」は、ヨーロッパへの輸送品の緩衝材に使われたのがきっかけで、ヨーロッパにおけるジャポニズム文化のきっかけとなったともいわれる。もとは絵手本として発行したスケッチ画集で、北斎が55歳のときに初編が発行。その後64年をかけて、全15編が発行された。人物、風俗、動植物、建築画、歴史、妖怪まで、森羅万象のあらゆる物事が意の向くままに描がかれ、北斎の達者な描写力、速筆を感じ取ることができる。
葛飾北斎『北斎漫画』三編

会場では「北斎漫画」に描かれた様々な題材を、躍動、滑稽、生活、自然、動物、妖怪、建築という7つのキーワードでレイアウトする。
葛飾北斎『北斎漫画』十編

会場には居眠りしたり眼鏡を買ったりしている妖怪たちの何気ない日常を伝える作品や、すずめ躍りをする男性の動作を一つ一つ丁寧に順を追って並べた作品、お寺の鐘楼の屋根の構造を丁寧に観察し描き記した作品などが並び、北斎らしさ満点のユーモアあふれるものから、知られざる科学者のような視線まで、幅広い才能が見て取れる。また、風景、人物、物語など、北斎によるその他の絵本も紹介し、北斎の絵本をまとめて鑑賞できる貴重な機会となっている。

会場である太田記念美術館は、1980年に渋谷区神宮前にオープン。五代太田清蔵が蒐集した約12,000点を含めた約14,000点をコレクションし、喜多川歌麿や葛飾北斎、歌川広重といった浮世絵師の代表作のほか、浮世絵の始まりから終焉まで、その歴史を網羅的に辿れる広い範囲の蒐集が特徴。月ごとにテーマを設けて企画展を実施しており、数少ない浮世絵専門の都心の美術館の一つとして、国内の愛好者、日本文化に興味を持つ外国人も足を運ぶという。
太田美術館の外観と内観。

原宿というとファッションのイメージが強く、買い物や髪を切りにいく場所という人も多いかもしれない。しかし30年以上の歴史を持つ同館が位置するのは、「ラフォーレ原宿」と道を挟んだ向かい側という原宿のど真ん中。特徴的な茶色いれんが造りの建物は、通り過ぎたことのある人も多いのではないだろうか。ショッピングを楽しんだ後や髪を切った後のウキウキした時間に、江戸の町民たちが愛した大衆文化「浮世絵」を気軽に楽しんでみてはいかがだろうか。

「北斎漫画〜森羅万象のスケッチ」
〇開催:2016年7月1日(金)〜7月28日(木)
〇営業:10:30〜17:30 (入館は閉館30分前まで)
〇会場:太田記念美術館/渋谷区神宮前1-10-10
〇料金:一般700円 他
〇休館:7月11日(月)19日(火)25日(月)
〇公式:http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/

編集部・横田

1980年生まれ、神奈川県在住。大学進学を期に上京して以来渋谷はカルチャーの聖地です。現在は渋谷文化プロジェクト編集部に所属しながら、介護士として働くニ足のわらじ生活です。

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