★『ヘルプ 心がつなぐストーリー』
公式サイトにコメント寄せました!!!★
アカデミー賞助演女優賞(オクタヴィア・スペンサー)を受賞した『ヘルプ 心をつなぐストーリー』が先週末からいよいよ公開されました。公式サイトにコメント寄せました!!!ただいま渋谷ヒューマントラストシネマにて絶賛上映中!!!!!!
http://www.ttcg.jp/human_shibuya/
アメリカ南部の壮大な物語の古典と言えばフォークナー「アブサロム、アブサロム!」やヘイリーの「ルーツ」など、アメリカ文学の根幹である主題のひとつ。しかしそれらはあまりにも重く暗い。。。そして男性的。
しかし、『ヘルプ』は完全に女性たちの物語で、その白人と黒人たちの重さや暗さは全く感じさせません。(むしろサトペンやクンタキンテを思い出す人間はいないでしょう。。。笑)
むしろ画面から流れる雰囲気はポップで楽しくて、じつにお洒落。
こんな南部の白人と黒人を描いた、物語がいままであったでしょうか。。。
ありましたね。笑
たとえばJ.ウォータズ『ヘアースプレー』(笑)。それくらいでしょうか。。。
さて。
60年代アメリカ南部を舞台にされたこの物語は、エマ・ストーン演じるスキーターが大学から故郷の南部へ戻って来るところから始まる。彼女は元々白人上流 社会の家庭に育った作家志望の女の子。大学に入学する前は、黒人メイドが実家はおろか街中の家々で使用されていたことに対して、当たり前の様に考えてい た。しかし現在は違和感を感じずにいられなくなってきた。。。
そしてスキーターは黒人メイドたちにインタビューを試みようとするが、彼女たちは協力的ではなかった。なぜなら真実を語ることは彼女たちにとって、仕事どころかその地域で生きる場所を失うことだったから。。。
黒人メイドが誤って白人用のトイレを使ってしまい解雇される様な社会。彼女は黒人メイドたちのインタビューをまとめて一冊の本を執筆することを決める。。。しかしその過程は困難を極めた。。。
上流階級の白人女性や黒人メイドたちは差別/被差別の暗さよりも、時にはユーモラスで、時にはその生活スタイルはまばやくほどお洒落。そして色彩豊かに輝いている。。。
どちらが悪くてどちらが良いか。どちらが真実でどちらが間違っているか。そんなことよりもその時代、アメリカが最も活気に溢れていて、人類史上最も豊かなパックスアメリカと言われていた時代。
たくさんのお洒落な洋服やドレス、ヘアースタイル。たくさんの南部の美味しそうな料理やケーキ、可愛らしいテーブルコーデュネイト。美しい当時の家具やインテリアたちが登場。
白人と黒人の間に横たわる差別/被差別などの重い話や普遍的な支配/非支配の話ではなく、とても目が喜ぶ映画であることはまちがいありません。。。鑑賞中、黒人メイドの解放の物語だということも忘れてしまいます。
実際白人同士の中にあっても、差別/被差別は存在し描かれます。
私たち日本の中でも差別/被差別、いじめなどはどこの社会でも存在することは誰でも知っていることなのです。。。
また白人も黒人も女優たちはなんと輝いていることか!!!
二人のメインの黒人メイド。V.デイヴィスの控えめな渋く前へ前へ出ない演技。アカデミー賞を取ったオクタヴィア・スペンサーの相手の白人女性を立てつつもプライドのあるユーモラスな演技。
刺があるが決して憎めない悪役(?)のB.D.ハワード。主役なのにあっさりとしたE.ストーン。典型的な50-60年代のアメリカ女性像を楽天的にまた 時には暗く楽しんでいるJ.チェスティン(彼女は最近では「ツリー・オヴ・ライフ」や「ER」のプロデューサーもこなす!)。
女優たちの決して重くはない、肩に力が入っていない本人たちが楽しんでいる演技合戦もまた魅ものです。
●コメント
いつの時代でも、どんな社会にも差別や偏見は存在する。何気ない行動や発言が人を傷付けてしまうことも。でも最も大切なことは間違いを犯した人間を許す寛容な心を持つことじゃないかしら。
勇気ある行動は時には危険な目に遭うことも。。。でもその大事な一歩は社会や人々の心を変えることに繋がるわ。この映画は人々の心模様がつぎつぎと変化していく様を決して暗くではなく、時にはユーモラスに描いてみせた。
ヴィヴィアン佐藤(美術家/ドラァククイーン)
http://disney-studio.jp/movies/help/comment.jsp
ヴィヴィアン佐藤(非建築家)
非建築家、アーティスト、ドラァククイーン、イラストレーター、文筆家、パーティイスト、、、と様々な顔を持つ。独自の哲学と美意識で東京を乗りこなす。その分裂的・断片的言動は東京では整合性を獲得している。。。なんちゃって。