「渋谷サクラステージ」竣工へ 鉄道や幹線道路の分断を解消し、まちの回遊性を高める
渋谷・桜丘エリアの街を一体的に整備する大規模再開発事業のシンボルとなる大型複合施設「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」が、11月30日に竣工する。その後、オフィスや商業、サービスアパートメントや国際医療施設などが順次開業し、おおむね出そろう来年7月26日に「まちびらきイベント」が実施される予定だという。
桜丘エリアの再開発は、駅周辺の大規模再開発の5番目「最後のラストピース」と言われる。2012年4月、東急文化会館跡地に「渋谷ヒカリエ」が開業したのを皮切りに、2018年9月に東急東横線の線路跡地に「渋谷ストリーム」、2019年10月に「渋谷フクラス」、同年11月に「渋谷スクランブルスクエア東棟」がそれぞれ開業し、今回の「Shibuya Sakura Stage」に至る。渋谷駅南西部に広がる約2.6ヘクタールの広大な敷地を一体的に整備する同再開発は、単なるビルの建て替えではない。もともと同エリアには多くビルや店舗、住宅などが密集し、地権者や関係者の数は約120にも達する。1998年に準備組合が立ち上がってから、関係者との間で様々な議論を重ねながら、実に25年の歳月を経てようやく構想が現実する。
今回供用を開始するエリアは、渋谷駅線路沿いに位置する「SHIBUYA(渋谷)サイド」(A街区)と、新たに整備された都市計画道路(補助線街路第18号線)を挟んだ反対側のヤマハビル跡地に位置する「SAKURA(桜)サイド」(B街区)の2エリア。SHIBUYAサイドには、高さ約179m、地上39階建てのSHIBUYAタワーと高さ約90mのセントラルビル。SAKURAサイドには、高さ約127m、地上30階建てのSAKURAタワーが、今回それぞれ竣工する。施設内の新店舗やオフィスなどの情報は今後、随時発表されていく予定だ。
同レポートでは「渋谷サクラステージ」の竣工に伴い、他街区との回遊性強化、地形の高低差などを解消する渋谷駅周辺の回遊性や、歩行者動線の新しい整備に関して紹介していきたいと思う。
まず、桜丘エリアの特徴を俯瞰して見てみると、「JR線の線路」と「国道246号線」に分断されたエリアであることが分かる。こうした特殊なエリア特性から、歩行者動線の分断とともに渋谷駅周辺の発展の波からも取り残され、街の「孤立化」「ガラパゴス化」を招いてきた。
今回の渋谷サクラステージの誕生で、まず「補助線街路第18号線」横断のための歩行者デッキが整備される。さらに渋谷ヒカリエや渋谷ストリームでも導入されている地下から地上をつなぐ縦動線「アーバン・コア」の設置や、JR線の頭上を越えて渋谷ストリームと渋谷サクラステージをつなぐ「北自由通路」、JR渋谷駅新南口と渋谷サクラステージをつなぐ跨線橋「南通路」の供用開始なども同時に行われ、駅周辺全体の回遊性を一気に向上させる。代官山・恵比寿方面への接続がスム―ズとなり、桜丘エリアを起点に多層の歩行者ネットワークが生まれる。また「補助線街路第18号線」沿いには、桜丘エリアの象徴であるソメイヨシノを植栽し、さくら坂と同じく、桜が咲く「SAKURAストリート」として印象を定着させていくという。
具体的な歩行者動線の変化を見ていこう。
補助線街路第18号線の上空に「歩行者デッキ」(2階と3階レベル)を2本設け、道路を気にせずSHIBUYAサイドとSAKURAサイド間の移動を促す。
渋谷駅西口歩道橋デッキと2階レベルで直結する縦動線「アーバン・コア」。地下2階から地上3階までの縦移動を階段・エスカレーター・エレベーターでスムーズにつなぎ、谷地形の桜丘エリアの高低差を解消し、街の回遊性を高める。
また、アーバン・コアの地下2階には来年夏頃、「渋谷フクラス」へつながる地下通路が開通する。さらに2027年までには、新たに駅前に開業を予定する「渋谷スクランブルスクエア西棟」の地下ともつながる予定だという。上空の歩行者デッキだけではなく、国道246号線の地下でも駅と桜丘エリアをつなぐ歩行者ネットワークが形成される。
幹線道路のみならず、JR線との分断も解消される。JR線の頭上を東西方向に横断し、渋谷ストリーム3階と渋谷サクラステージ3階を結ぶ「北自由通路」の利用は12月1日から、また自由通路上から直結するJR線の「南口改札」の利用は、2024年秋頃から暫定的に可能となる。なお、北自由通路の利用時間は、5時30分から23時30分(12月1日のみ朝10時頃より通行を始める)。
暫定的というのは、同通路上で2026年度の竣工を目指し「渋谷駅南口橋上駅舎(仮称)」の建設工事が進んでいるためで、駅舎の完成は3年後になる見込みだ。上記写真では屋根が低いが、最終的にはもっと天井高の開放的な自由通路になるという。
また北自由通路と同時に、渋谷サクラステージの南端とホテルメッツ側(JR新南口改札口)をつなぐ跨線橋「南通路」の供用も12月1日から始まる(通行時間は5時30分〜24時30分)。2024年秋頃、北自由通路上に「南口改札」が新たに開設されると、現在使われている「JR渋谷駅新南口改札」は閉鎖される。改札閉鎖後も「南通路」はそのまま利用が可能である。
歩行者デッキ、地下通路、アーバン・コア、跨線橋などの歩行者通路の整備で、鉄道や幹線道路による地域分断を一気に解消する。
昨今の再開発事業では、容積率等を緩和するため、建築物の敷地に一般の人々が自由に出入りできる「公開空地」を設けるケースが増えている。渋谷サクラステージの場合も、「にぎわいSTAGE」「はぐくみSTAGE」「ときめきSTAGE」の大きな3つの広場が設けられる。
まず、同施設の3階レベルに位置する「にぎわいSTAGE」は、にぎわいあふれるまちの中心となる広場。広場内にいくつか立つ白い木のようなモニュメントの枝先には、LEDが組み込まれており、人流や気象データなどの情報をもとに日没後、 音響や照明、ミストを連動させて365日異なるイルミネーション演出を自動で創出していく。広場の中央には、円形の「水盤(すいばん)」も設置され、様々な水の表情が楽しめる憩いのスぺースとなるという。
また同広場には、ユニークな形状の縦動線「しぶS(エス)」(1〜4階)も設置。3階レベルの「にぎわいSTAGE」中央から眺めると、「渋谷桜丘(SHIBUYA SAKURAGAOKA)」のイニシャルである「S」に見え、機能性とデザインを兼ね備える「広場のシンボル」となる。
「にぎわいSTAGE」の3階レベルのまま「補助線街路第18号線」上空の歩行者デッキを渡り、SAKURAタワーの貫通通路を抜けた先には、土の広場「はぐくみSTAGE」がある。
大きな山桜を中心に生い茂る緑や菜園が広がり、気持ちの良いリラクゼーションスぺスとなる。丘陵地に位置する同公園は、施設内から3階レベルで移動してきたにも関わらず、「渋谷インフォスタワー」にほど近い中央通りの坂上の1階レベルに接続する。
谷地形ならではの高低差をうまく活用した設計で、坂上から同広場を抜ければ、そのままJR渋谷駅まで向かうことができる。駅アクセスの利便性が一気に高まる。
3つ目の広場「ときめきSTAGE」は、「北自由通路」に直結するセントラルビル3階から1階路面までをつなぐ大階段スペースである。
JR側からの来街者を最初に迎えるゲートとして、キューブ型のデジタルサイネージをモザイク状に配置し、LED照明や映像表現で華やかさを演出する。
同広場の3階には大型デジタルサイネージを持つイベントスペース「BLOOM GATE」(計3スペース)を設け、来街者の目に触れやすい玄関口という特徴を生かし、様々な企業プロモーションやイベントなどに対応していくという。
ここで紹介した歩行者デッキや通路、広場は誰でも自由(北自由通路や南通路など一部利用時間に制限がある)に利用ができ、桜丘エリアの移動をより快適に簡便にする。竣工は11月30日。自由通路などの利用は12月1日から可能となる。
Editorial department · Fuji Itakashi
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